駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『レザネ・フォール』

2010年05月06日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 東京厚生年金会館、2009年11月21日マチネ。

 1928年、パリの石畳を、ふたりの若き日本人が踏みしめていた。ひとりはレヴュー研究のためにパリ留学に赴いた白井鐵造(宝塚歌劇団演出家)。もうひとりは元憲兵大尉の甘粕正彦(福井貴一)。後に満州帝国の影の支配者として、また満州映画協会理事として歴史にその名を刻む人物であった。甘粕はパリで諜報員まがいの仕事をしていたが、失敗から追われる身となり、あるレヴュー小屋に迷い込み、白井と誤解される…作・演出/大野拓史、音楽/長谷川雄大、振付/平澤智、御織ゆみ乃。宝塚歌劇団OG公演。

 レヴューシーンのミュージカルナンバーがもう、すんばらしい宝塚伝統メドレーで、久々に現役の組の公演でもこういうレトロなのが観たい!と心震えました。

 幕開けのソロ歌はマリコさん(麻路さき)の悶絶のあの歌声だったので、彼女を観るのは卒業以来でしたが、一気に17年の年月が吹き飛びましたよ…
 ファントムという役名でもいいのでは、と思ったワタル(湖月わたる)のダンスがまた反則で、びしっと燕尾を着込んでいるのに脱いだらビスチェで胸アリなんてもう…素敵でした。
 ユリちゃん(星奈優里)は逆に、もっともっと踊りたかったろうなーと思ってしまった。
 そしてなぜか、現役時代はぴんとこなかったのに、女優さんになってから妙に好きなサエちゃん(彩輝なお)はまた細くて色っぽくていい感じで…ヨダレもの。

 ほか6人も、知ってるよ、好きだったよ!ってメンバーで、楽しかったです。

 何よりショースター・ツレちゃん(鳳蘭)の健在っぷりは尋常ではない。「セ・マニフィーク」を生で聴けて、私は本当に感涙です! いくら星組っ子が多いとはいえ時代の差は大きいと思いますが、マリコさん以下子供扱いのトークのおもしろいこと。宝塚の生徒さんはみんな先輩の前では礼儀正しくかつ可愛い後輩になってしまうところが本当にほほえましいです。

 というわけで「地味な芝居」に存分なショーがついた楽しいミュージカル・レヴューでしたが…

 芝居小屋のダンサーたちが「男装の麗人」である必要は、はたしてあったのでしょうか…こんなOG公演、宝塚ファン以外は見に来ないと思うからさ、そういう観客に、彼女たちがレズビアンの役なんかやるところを見せちゃっていいの? もう、大野先生ってば大胆ね…とヒヤヒヤしてしまいまして。
 エトワールとトラバーユはレズビアンのカップルで、だから同姓愛者を弾圧しようとしている時の政府に対し反対的で、だから甘粕を助けようとするのだ…というのは、わかりやすいっちゃわかりやすいけど、でも彼女たちが単に愛と平和を愛する理想主義者だから…というんでもいいと思うんですよねー。
 本物の男優を登場させているので、ややこしいのかもしれませんが、それでもエトワールもゴロワットも男性キャラってことでもよかったと思うんですよね。
 ゴロワットなんざ、エトワールの妹ですが一人称は「僕」で、だけどエトワールとトラバーユの関係を嫌っていて、同性愛なんて胸くそ悪いとか公言している。それって何? まさかトランスセクシャルでヘテロセクシャルで、男として女の姉を愛してるってこと? そらタイヘンすぎるだろ…
 そこらへんがちょっと中途半端で、据わりが悪いかなーと思いました。でも大野作品っぽいと言えば言える。

 あと、そうなると女性だけで男女ともに演じる劇団が、宝塚歌劇団よりほかにパリにあったということになるので、そこもどうなのよ、と思ったというのもあります。なんてったって今年95周年の、世界唯一の、恐るべき劇団ですからねー…

 ま、でもまだまだいろいろ展開できる余地はあるのだということはわかりました。100周年、無問題だと思いますよ!
 
 ちなみにタイトルは、フランスの1920年代を指す「狂乱の時代」という意味だそうです。
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