駒子の備忘録

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『ドン・ジョヴァンニ』

2022年12月11日 | 観劇記/タイトルた行
 新国立劇場オペラパレス、2022年12月10日14時。

 明け方、騎士長(河野鉄平)の娘アンナ(ミルト・パパタナシュ)の部屋に忍び込んだドン・ジョヴァンニ(シモーネ・アルベルギーニ)だが、当の騎士長と決闘になり、彼を殺して逃走。アンナは悲嘆し、婚約者のオッターヴィオ(レオナルド・コルテッラッツィ)に復讐を果たしてほしいと求める。ジョヴァンニは従者のレポレッロ(レナート・ドルチーニ)と落ち合うが、昔棄てた女のひとりエルヴィーラ(セレーナ・マルフィ)に見つかってしまい…
 指揮/パオロ・オルミ、演出/グリシャ・アサガロフ、美術・衣裳/ルイジ・ペーレゴ、照明/マーティン・ゲプハルト、再演演出/澤田康子、管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団。モーツァルトのオペラの代表作のひとつ、全2幕。

 ムーティ指揮のミラノ・スカラ座のDVDは持っていて、フレンチ・ミュージカルの『ドン・ジュアン』はこちらこちらなどで観ていますが、生のオペラの舞台は初めてでした。改めて観ると、このオペラがあのミュージカルに化けるのはすごいな!?という感想でした(笑)。ともあれセットや照明がずいぶんとスタイリッシュでモダンで美しく、聴いて楽しい観て楽しいで贅沢な舞台でした。だってあんなお洒落なメリーゴーランド、あります!? でも馬の像がちゃんと使い回されているのにもニヤリ、でした。
 三階B席からオペラグラスも使わず全体を眺めていただけなのでアレなんですが、主人公の魅力ってのは結局は口の上手さと歌声の甘さ、多少の金払いの良さや権力…ってことなんでしょうかね? だって所詮ただのおっさんで単なるクズの色魔なんですよマジで。冷静に考えていいところは全然ないし、口説いた女性を単なる頭数でしか考えていない、セックスした数だけを記録し何かと競い勝った気でいる救いようのない愚か者なわけです。犯罪に対する刑罰を受けるべきなのはもちろんですが、神の罰が…とか地獄に堕ちて報いを…なんと高尚なレベルでは考える必要がない俗物、獣同然と言ったら獣に失礼なくらいの男なのです。雄がハーレムを作る動物はいろいろあるけれど、それはみんなこんな理由じゃないでしょう。相手への愛も尊重もない、ただ見下しやり込めてものにした気になっているしょうもない男で、なんでみんながヨロメロしちゃうのかぶっちゃけ全然わからないわけです。
 でも、女性陣はみんなけなげでまっとうで、踏み留まるのがいいですよね。特にエルヴィーラは、ドンナ・アンナにはオッターヴィオがいるしツェルリーナ(石橋栄実)にもマゼット(近藤圭)がいるけれど、彼女には守ってくれたり頼れたりする男性キャラクターがいなくて、でも単身なんとか踏ん張り通すじゃないですか。偉い!と思いました。
 当時の人が観るときとは、シメの説教パートなんかも含めて今の受け取られ方は違ってきている作品なのかもしれませんが、ちょいちょいユーモラスなところもあり、複雑なストーリーやドラマ展開みたいなものを楽しむのではなく、ごく簡単なあらすじと設定だけ押さえてあとは音楽を楽しむような作品なのかもしれません。観ていて理解不能とか気に障って不愉快で仕方がない、とかいう感じはなく、おもしろかったです。キャストも私にはみな過不足なく歌えているように聞こえて、満足でした。





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