宝塚大劇場、2023年2月11日11時、21日13時、18時(新公)。
東京宝塚劇場、3月30日18時半、4月6日18時半(新公)、25日18時半。
時は平安の初め、藤原北家の筆頭である良房(光月るう)とその養嗣子・基経(風間柚乃)が朝廷の権力を掌握しつつあった頃。京の都では、月の子の日の夜に鬼たちが大路を闊歩し、その姿を見たものを憑り殺すという「百鬼夜行」の噂に人々が怯えていた。京の治安を守る検非違使の長・在原業平(鳳月杏)は、帝の御前でこの怪事件の早急な解決を約束する。というのも、彼には頼もしい助っ人の心当たりがあったのだ。それは先ごろ偶然に知り合った風変わりな青年で、学者を多く輩出してきた菅家の三男、幼きころより秀才の誉れ高き菅原道真(月城かなと)であったが…
原作/灰原薬、脚本・演出/田渕大輔、作曲・編曲/青木朝子、植田浩徳。編曲/多田里紗。「月刊コミックバンチ」で連載中の漫画をミュージカル化した平安朝クライム。
原作漫画は電子無料キャンペーンをやっていた分だけ読みました。けっこう量があった気がしたけど、三巻分かな五巻分かな? 絵は味があっていい感じ、漫画はめっちゃ上手いというタイプではないですが、そこそこ人気があるようで長期連載になっていますよね。史実をもとにした平安朝を舞台に、歳の差バディ探偵ミステリー、というアイディアは目新しい。基本的にはひとつずつ事件を解決していくスタイルですが、グルグルものではなく時間はちゃんと流れていて、史実はこの先いろいろあるのでどこをどう描いていくのかは見ものでしょう。ただ、紙のコミックスはもう重くなっていく巻数だと思うので、上手くまとめていかないとね、と老婆心ながら思います。
さて、そんなわけで毎度真面目で芝居に真剣な月組さんは、原作漫画の雰囲気を生かしてそりゃ手堅く上手く仕上げてくるのでした。田渕先生もオリジナルだとややアレレですが元があるとまだ違うのか、流れるようなステージングでたいしたものです。「食えない坊ちゃん」という言葉の使い方が、二度目のは正しいけど最初のは違うんでないかい?ってのと(そして三度目は…同じ言葉をそんなに何度も使うなよ、と言いたい)、開演アナウンスに被さる音楽がうるさくて、トップスターのアナウンスをナメてんじゃねぇぞ?ってのが気になったくらいかな。平安貴族や武人たちとか、どうしても男役ばかりで娘役に役がないのを、ヒロインの店で働く女性たちや祭り見物に出る町人たち、神楽舞の伎女たちなどに上手く起用して、ちゃんと銀橋にも出す親切設計は褒めたいです。あと、そもそもこんなにちゃんとしたセットを作るのは演劇としてはややダサくて、今はもっと抽象的な空間をそれなりに見せるのが主流では?と思いつつも、セリや盆やカーテンや銀橋や、セットを吊るバトンもガンガン使って素晴らしいスピードの場面転換を見せるのも、たいしたものだと褒めておきたいです。ホント毎度エラそうですみません。
さてしかし、原作が連載中でもあり、ひとつの事件の真相は解明したものの犯人を糾弾するには相手が権力者すぎて、罪を問いきれないだろうし今はネグっておくしかない…というオチなので、ややスッキリしない、という残念さはあります。「本当の戦いはこれからだ!」という「週刊少年ジャンプ作品かな?」なオチは、個人的には嫌いじゃないですけどね。ただ、主人公が歌い終わったら本舞台にはもう照明を入れて、敵の顔を観客にきっちり見せて、そのあとは照明を主人公に絞って終えるのではなく全部バン!と落として終わった方がカッコよかったのでは、とは思っています。
あとは、ここではないどこか、たとえば唐はすべてが理想的で極楽パラダイス…とか夢見ていたお坊ちゃまの主人公が、いろいろな大人と関わってひとつの事件を解決する中で、書物だけでは知ることができなかった世の中を多少とも知り現実をかいま見、ここもそんなに悪くないしまずはここをもっと良くしてからでないと旅立つ資格はないな、とひとつステップを踏み成長し思い直す…のはもちろんひとつのドラマなんだけれど、まあでもちょっと弱いよね、という問題はあったかな。宝塚歌劇が何故ラブストーリーばかりを上演するかといえばそれはてっとり早くわかりやすくドラマチックだからで(脚本家の技量のせいで全然ドラマチックにならないこともままあるにせよ)、恋愛とか革命とか(同列なのか)以上にドラマチックな素材をなかなか用意できないからでしょう。でも今回はトップコンビが恋愛関係にないのでした。
別にキャラみんながみんな恋愛していなくてもそれは全然かまわないんだけれど、でも今回、感情的な屈託があるのって高子(天紫珠李)との昔の恋を未だ引きずっている業平とか、幼き日に出会ったもうひとりの自分のような、親しくなりきれなかった片想いの友のような吉祥丸(瑠皇りあ)を引きずっている基経とかであって、主人公でもヒロインでもないんですよね。道真ももちろん兄への想いはあるし語るんだけれど、子供だし性格的にドライなのもあって「そういうもの」としてもう納得しちゃっているようなところがある。まあ実質的な跡取り息子として自分ががんばるしかない、というんで割り切らざるをえなかったのでしょうが、そんなわけで未だうだうだしている業平とか基経の回想シーンなんかの方がドラマチックだし、萌えがあるんですよね。
そしてヒロインは最初っから最後までキッパリスッキリなデキるキャリアウーマンなワケで、ここも感情に特に変化がない。この変化のなさ、ドラマのなさ、感情の動かなさが、作品としては弱いんだと思います。萌えがない、ワクテカしない。今ひとつ淡泊なまま、「続きはまたの機会に!」って感じで終わってしまう…よくできているんだけど、そもそもの構造がこうなのであり、そこが弱点の作品だったかな、と思います。イヤ組ファンは楽しく通ったんでしょうけれどね、でも私はそう感じて、そんなに何度も観に行くものじゃないなと思ってしまったのでした。でも、平均点以上の出来の作品だったとは評価しています。毎度エラそうな物言いでホントすんません…
さて、れいこちゃん道真は、そりゃ漫画よりは青年に片脚つっこむ少年像でしたが、三白眼で膨れっ面で、毎度「…嫌です」や「…ちょっとぉ」でちゃんと笑いを取れる達者さもあり、さすがでした。業平に高子の話を振るくだりは、素で天然なのか意地悪な皮肉なのか、なかなかひやりとしそうなものなのですが…そんな、聡明なんだろうけれど世間知らずすぎる、人の感情や心の機微に疎い子供で、まだまだ危ういところもある様子をすごく上手く演じていたと思いました。
くらげ昭姫(海乃美月)もニンにぴったり。もうちょっと婀娜っぽくても楽しいだろうけど、なんせその色気を受け取る人がいないので無駄なものは出さないんですよね、という感じかな。くらげちゃんの役どころとしては目新しいところはないような気もしますが、ヒロイン像としては意外に他にないものかもしれず、そういう幅が増すのはいいことだと思いました。
ちなつ業平もそりゃもう上手い。藤原家の勢力争いからは外れたところにいて、飄々と風流人を気取り、町行くおなごたちに気軽に手を振りもするけれど、かつての恋を未だ思いきれないでいる…まあ、いい男のお役です。そりゃ上手いです。
おださん基経も赤い唇が禍々しく、白皙の美青年で実は恐ろしいやり手、でも今はまだ義父の陰で…というのとその義父とも実は屈託があり…というのとさらには妹・高子、そして吉祥丸への想い…となかなかにてんこ盛りな、おいしいキャラを素敵に演じていて、月組ってホント盤石!って感じでした。
はっきり四番手格に据えられた感のあるぱるは藤原常行(礼華はる)。歳の設定はわかりませんが位や立場が業平より上らしく、ちなつにまあまあ横柄っぽい態度のぱるなんて新鮮、トキメキ…と私はワクテカでした(笑)。まあもともと好きなスターさんなんだけどさ。顎髭もお似合いで、ちょっと男臭いところもある、でも妹ラブの生真面目で心配性な青年、という感じでしょうか。まあ並ぶとどうしても演技はまだまだなんだけど(声がまだ軽く聞こえるんですよね。なんせ周りが上手すぎる、怖いよ月組…)、まだまだがんばっていけることでしょう。このスタイルはなんせ武器です、信じてるぞがんばれ!
白梅(彩みちる)のみちると長谷雄(彩海せら)のあみちゃんはほぼニコイチでキャッキャしていて良きでしたが、まあ役不足ではあったことでしょう。辛抱時期もあるということです。
今回は退団者が多くて、るうさんは基経の養父・藤原良房。渋く悪く重々しく、さすがでした。からんちゃんはなんとラストも子役の清和帝(千海華蘭)、これがまた上手くていとけなくて、下がり眉で「なんとかしてたも」と言われた日にはみんな身を粉にして働いちゃいますよ帝のために…!ってな出来でした。ぎりぎりは基経の手下で鬼に化ける黒炎(朝霧真)、これまたこういうお役をたくさん観てきましたがその集大成というクールさ、シャープさ、ワルさで良きでした。ゆーゆは化粧がショーと同じかなみたいな目尻キラキラで素敵で、らんぜたんは若き日の高子(蘭世惠翔)他いろいろやっていましたが、どこも美人でホント目立っていました。さびしい…
印象的だったのは若き日の道真・阿呼(一乃凛)ののりんちゃん、あの「すごい? あこすごい?」の愛らしさは、袖でどんなにるうさんがお稽古しても及ばないでしょう(笑)。それと若き日の基経・手古(白河りり)のりりちゃんのキツさ、研いだ刃のような美しさ、わずかに滲み出る愛情や寂しさ…あとは高子に仕える山路(白雪さち花)の、ラストの手紙を差し出すくだりのさりげない素晴らしさね…! あと、静音ほたるちゃんの顔が好きです!!(宣言)あとあと、いつでもどこでもホント上手いれんこんの声、至宝です。
最後に俺のまのんの多美子(花妃舞音)の幼女芸、これまた至宝です! 新公の方がお姉さんに見えたもんなー…毒酒をあおって倒れた兄が連れられて去るのを子供みたいな泣きじゃくり顔で見送っていて、ホントもーヨシヨシしてあげたかったです!! きゃわわわわ!!!
新公もご縁あって東西ともに観られたので、以下簡単に覚え書き。
主演は七城雅くん。私は『ギャツビー』新公を観られていないので、なんかカワイイ新公大蛇丸だなー…くらいで印象が止まっていたのですが、なんとこんなに歌える芝居もできる少年に見えるおちつきはらっている、たいしたものでした!
ヒロインはみかこ、羽音みかちゃん。劇団使う気あったんかーい!な今さらな配役だとは思いました。『ブエノス~』ではちょっと足りていないなと感じましたが、その経験をものにしたか、同系統と言ってもいいかもしれないこのお役をスッキリしっかりこなしていて、感心しました。ただ超絶スタイルとキレキレのダンスが売りのショースターかなとも思うし、今後も芝居で娘役芸が要るような役は回ってこないタイプな気がするので、ホント路線系娘役がいないな月組…とはなりました。
業平は一輝くん、まああっぷあっぷしていましたね。劇団が育てる気満々なのはわかるし、こういうお役もホント経験だとは思うけれど、歌は弱いしそもそも苦手意識がある気がするし、お化粧も私はあまりいいとは思いませんでした。まあこういう背伸び経験も財産だ、がんばっていけー!
逆に基経るおりあきキタコレ案件でしたでしょう! 彩音くん同様、美貌のわりにこれまで役付きが悪い印象でしたが、これは次の新公主演があるのでは!? てか使わないともったいないのでは劇団!? おださんとはまた違う印象の、悪い炎が静かに燃えている感じのお役で、もちろん本公演が吉祥丸というエモさもありますが、本当に目を惹いたと思いました。
俺のまのんは白梅、可愛かったけどまあしどころがない役なんだな、と改めて思いましたね。コンビの長谷雄は和真あさ乃くん、これまた可愛くて手堅かったです。
りりたんの桂木がさすがだったなー。是善の澪あゆとくんもよかった。
清和帝は天つ風朱李くん、幼げで良きでした。良房の彩路ゆりかがまた上手くて、今まで絶品の三下芸、子分芸をたくさん観てきたけどおっさん芸も出来るんかワレ!と刮目しました。常行は遥稀れおくん、やはりのっぽさんで実直そうでよかったです。
おはねちゃん高子はなんかフツーだった気がしました。真弘くんの國道がまた上手いんだ…! その真弘くんが本役の是則の凉宮蘭奈くんは、ちょっと上がってたかなー…? この子は男役だけどゆーゆの大姉さまもやっていたのですね。
あとはうーちゃんがやってた若き日の業平、月乃だい亜キレーイ! ヤバーイ! のりんちゃんの若き日の高子も素敵でした。あとみうみんの手古、良きでしたー!
新公担当は中村真央先生。A先生のお嬢さんで元CAでドーターの中村Dとか呼ばれ始めているとかなんとか…大きな変更はなかったと思いました。
ラテングルーヴの作・演出は稲葉太地、サブタイトルは「海神たちのカルナバル」。
生徒たちをもうちょっと小分けに出してくれるとゆっくり観られて嬉しい…とは思いましたが、まあ華やかでわさわさにぎやかなショーで、楽しくてよかったです。黒塗りではなく、日焼けの範疇と言えなくもないブラウンフェイスくらい。ただし娘役は身体をけっこう濃く塗っている人が多かった気がしました。
プロローグ、れいこちゃんの「ダイブ…」からのるうさんのアナウンスや映像、というのは素敵でしたが、ここで踊る海神の遣いたちがまあまあいいメンツなので、だったらもっと照明入れんかい、と思いました。コロスに徹するならもっと下級生を起用すべきでしょう。スターの顔を見せないなんて宝塚歌劇では無意味です。
そしてチョンパ。デーハーな色目のわさわさしたお衣装で勢揃い、良きでした。デコレーションズのモジモジくんみたいな水色タイツの下級生たちも良き。彼女たちは続くちなつ吟遊詩人のバックにもいて、一輝くんフィーチャーでした。わかります、わかりますよ。
そしてくらげマーメイドセンターのマンボ場面。マンボの女がみんな髪型も濃くてパンチあってよかったなー。マイ初日はまだおはねちゃんがショーを休演していて、代役でまのんが入っていたのでウハウハでした。しかしここのくらげちゃんのお衣装はミュージカル『SIX』にあるものの完全なパクリだそうですね。バレないと思っているのか劇団…こんな組織にセクハラパワハラ対策だのコンプラ遵守だの働き方改革だの、ホントできるワケないよなーと死んだ目になりますね……
みちるゆーゆらんぜみかこと揃い踏みの真珠がまたたまらん。ここの「(プレイボーイ)」と役名につく海神役のれいこちゃんがスッキリと素敵。じゃんけんはまあよくわからんが…平和で良き。
そこからフェニタカの赤いスーツやドレスで中詰め。からのぱるあみセンターの恒例若手爆踊り場面。あみちゃんはホント上手いんだけどホントちっさいんだ、そこだけだよ…
そして花園へ。もう何度も見た気がする女装ちなつですが、れいこちゃんが色っぽく絡み、おださんが色っぽく歌う…おださんの歌がとてもよかったです。
エルメスとビットが出そうな(笑)くらげちゃんの歌から、暖色サルエルでマントルを表現する土俗的なダンス場面へ。退団者ピックアップもあり。そしてロケット、もうまのんたんガン見でした。
フィナーレは両脇の娘役さんの尻を撫でるれいこちゃんが好きです(笑)。デュエダンは笑顔なしのタンゴ。タンゴでは相手の脚の間で脚を跳ね上げる振りがよくあるものですが、れいこちゃんって脚は長くないからまあまあくらげの脚に当たっていて、アザになっていそう…とか思っていましたすみません。
パレードのエトワールはなんと五人の役替わり。私はりりちゃんと桃歌雪ちゃん、咲彩いちごちゃんを観たのかな? オーディションで全員が良くて、というのはわかるけど、それでもひとりに絞ってこそのエトワールの座ではないんかいな…とは思ったかな。じゃあ次回は誰にやらせるの?ってのもある…
ダブルトリオはのりんちゃんとほたるちゃんガン見でした。
退団者は多いけれど、それでも層の厚さと充実を感じさせる、良きショーだったと思います。
次の別箱のポスターが素敵で、さらにその次の本公演の先行画像はなかなかにナゾで(笑)、ますます楽しみではありますね。『月の燈影』も私は生では未見で、映像でも観たことがない気がするので、楽しみにしています!
***
以下、最近の宝塚雑談日記を少しばかり。
せおっち専科異動、SNSファンアート禁止令、主演役替わり『ミーマイ』とこっちゃんの休養、の三連続コンボ発表について、ごく個人的な所感です。
せおっちについては、マイティの先例があったのでそこまで騒ぎにならなかった印象ですが、それはあくまで二度目だからであってそもそもホントどうなんだこの措置、という問題は引き続きあるワケです。しかもせおっちには今のところDSの発表もない…その後、なかなか破格の博多座主演(役替わりで半分だけど)が発表されたマイティと比べると、だいぶ扱い悪くない?とファンならずとも気分は良くないです。まあずっとかたくなに大羽根を背負わせてもらえず、と思ったら全ツでひょいっと背負わせて、でもコレですからね…『1789』は一本ものだし、トップコンビ以外の大羽根はなさそうですよね。本公演での大羽根がないまま組を去るのか、つらいなー…でもフィナーレの歌唱指導はあるかな、アレはれっきとした二番手スターのお仕事ですよねえ(『蒼穹』でそらがやったのはラストシーンにあーさが出ていたという出番の関係によるイレギュラーなので)。つまり要するに、せおっちは組の二番手スターの仕事はちゃんとしてるしグッズなんかも出してて劇団はそれでちゃんと商売してるんだから、待遇もちゃんとしてくださいよよその二番手と同格じゃないとおかしいじゃん、と激しくつっこみたい、のです。
マイティのときにも言ったけれど、ここまで来るまでになとんでもできたろう、たとえばありちゃんを組替えさせたときにひょいっと逆転させたってよかったのに、どうしてこう下手なんだ劇団…とはホント何度でも言いたいです。ただ、当人とどういう相談がなされたにせよ、専科に異動してでも劇団には残りたい、タカラジェンヌとしてまだやりたいことがある、と生徒さん本人が判断、決断してくれたのだろうから、それは尊重したいし、実際に他組にどんな形で出演してどんな化学反応が生まれるのか、は純粋に楽しみではあります。ただ、ファンは予定が立たないつらさとかを抱えることになるから、タイヘンだろうなとは思います…でもせおさんってホント愛されキャラだから、今後も良きようになるといいなとホント祈っています。
SNSファンアート禁止令については、そもそもけっこう以前から公式サイトの奥にひっそり告知されていたそうで、それを最近になってたまたま誰かが見つけて「えっ、ダメだったの!?」って騒ぎ出した、ということなんじゃないかな、とは考えています。FAQの形になっていますが、それは文面のことだけで、実際にこういう問い合わせの凸があったわけではないと思っています。
で、法律的なことから言えば、そりゃこういう線引きになる、というのはわかるのです。著作権とか、肖像権とかね。でも実際、中の人たちは、特に電車のおじさまたちは、ツイッタランドの楽しげなタイムラインをおそらく全然見ていないんですよね。インスタの不法動画投稿無法地帯とかメルカリの会グッズ転売みたいなのはつぶしていってほしいけれど、ファンアートはそういう類のものではないし、絶対に宣伝効果があるので、ちょっとでも賢ければスルー推奨なんですけれど、なんでこう極端っつーかよく考えてないっつーか下手を打つのが得意なんでしょうかねえ劇団…
既存の漫画を原作に舞台化しておいて、その漫画家が感想レポイラストみたいなのを描いて自身のSNSに上げるのを規制する権利が本当に劇団にあるのか、とか、そもそも広報誌みたいなところに今まで仕事を依頼してきたプロのイラストレーターさんたちとかもいただろう、彼女たちがお仕事レポとして多少の似顔絵まで描くことを規制できるのか、とか、ホント問題アリアリです。ならもう全オリジナルでやれ、ってなっちゃうじゃん。
あと、そんなこと規制している暇があるなら使えないチケトレやめてもっときちんとしたリセールシステム整えろよ、高額転売対策にもっと本腰入れろよ、とかいろいろやってほしいことは他に多々あるワケですよ。てか文春にすっぱ抜かれた件は結局どういうことだったんだよ、とかね。アレだってフェーズは違っても地続きの問題なんじゃないの…?
しかも、それで問い合わせが来てある程度の回答は個別にしてるようでも、結局は引っ込めないんですよ。そういう組織だって知ってた、思ってたよマジで…改めないんだよね、誤ったことよりその方がホント良くないことなのにね…
そこからの雪組大劇場レポの盛り上がらなさと言ったらあなた(byセレスティーナ@『バレンシアの熱い花』)、作品が駄作だっつーのもあるけど(オイ)写真もイラストもないタイムラインの寒々しさ、惨憺たるありさまは、このままならすぐ集客に直結しますからね…思い知って思い直してほしいけど、でもそういう組織じゃないんだよなー劇団…はー、絶望しかない。つらいです。
そしてそこへ星組の別箱発表が。
まずは天飛くんのバウ主演は、そりゃめでたいよ? ただなんか題材が…この間のかりんさんバウは画家で今度は小説家なんだ?という、ね…なんか、史実とか実在の人物とかからしかお話って作れないものなの?とちょっと最近の若手演出家の作家性に疑問を感じなくもないのですが、まあまずは楽しみに待ちたいと思っています。下級生座組になるだろうけどしっかりした芝居はしてくれそうですよね、つーか天飛くんが抜けた残りのチームは誰が芝居をするんだろうね、という(オイ)心配をしていたら…え? え??
まず、久々の博多座公演、これはめでたいです。かつては年イチでフツーにやっていたのにいろいろあって不規則になっていたので、御園座と博多座は定期的に公演する、となるとホントいいと思います。いいハコだしいい街です、遠征はいつも楽しいです、大歓迎。
『ミーマイ』は…まあもう一生分観たけど…まあでも別箱なら役がないのもまだ軽減して見えるし…あとこの作品の本当の意味がきちんと伝えられているバージョンを私は観たことがないと思っているので、もう一度信じてみてもいいかも…直近はみりかの? でももうだいぶ経っていますしね。そして月組と花組でしかやってこなかった演目なので星組でやる、というのはいいですよね。別にどこかの組が独占することはないと思うので。生徒はみんな好きで出たいんだろうしね。
そしてマイティ特出、ありちゃんと役替わりでビルとジョン卿をやる、というなかなかランボーなダブル主演です。ありちゃんは『1789』は三番手スターなワケで、その千秋楽翌日にせおっちが専科異動することで二番手に昇格するのでしょうが、二番手として何もしてないうちにもう博多座主演なワケです。イヤ別箱主演で東上もしているスターなのはわかっていますよ、でも博多座って他の別箱と違うでしょう。これまで主演は必ずトップスターだったハコでしょう。そんなに安い扱いでいいの?という…
マイティも、そりゃこれまでトップスターか次期トップスターが主演していた全国ツアーを専科のカチャが主演した例ができたとはいえ、専科初仕事が博多座主演なんだ、すっごーい呆然…って、ちょっとなりません? なんか、トップとか主演とかの格って、なんなんだろうね…みたいな。というかこれで今後は他組に特出するときは二番手格で出るってことですよね? なんなら1.5、が言い過ぎなら1.8番手くらいで? 2.5番手ではない、ってことでは? つまり別格スター枠ではなく、脇役でもないってことですね? 本公演でそれをやられると組ファンはとてもフクザツに感じることになると思われるのですが…イシちゃんが主演したのとはワケが違うし…あのときだって貴重な一公演がつぶれた、と思ったトップファンは多かったワケですし…
あとねえ、まさみりちゃぴ体制での『ロミジュリ』もそうだったけど、運命的なカップルの話なのにジュリエットひとりに対してロミオがふたりって、純粋におかしいやろって話で、今回も「僕と僕の女の子」の話なのにサリーひとりにビルふたりですよ、ナメてんのか?ってなりません? そしてひっとんに対する負担も大きいと思うのです。花組出身でそりゃマイティとも面識はあるし、上手く合わせるんだろうけど、でもふたりのビルを相手にするって、単純に心理的にしんどそうじゃないですか。それに唯一無二のカップル感が全然ないじゃないですか。
それでいうと、トップコンビこそ唯一無二の、至高のカップルなんであって、そういうファンタジーをふたりで作り上げて夢を売っているのが宝塚歌劇なんじゃないの? 前回は『赤と黒』がダブルヒロインものだったから、とか全ツなのでイレギュラーで、とか言い訳できたけど、本当は常にこっちゃんの相手はひっとんでひっとんの相手はこっちゃんであるべきでしょう。そこんとこ、劇団はどう考えてるんでしょう?
さらに、じゃあここでビルをやらないこっちゃんが何をするかと言えば「休養」なんですよ…いやー、なんなの? 働き方改革なのかもしれないけど、大変な思いをしているトップスターはこっちゃんだけじゃないでしょう。てかトップ娘役はトップじゃないのか? 何故ひっとんは休ませなくていい、という判断になるんだ?
激務の軽減なら、休演日を二週に三日にするとか、週十回公演を八回にするとか、一か月公演は一か月半公演にしてお稽古期間もその分長く取るようにするとか、五組でグルグル回しているだけじゃ休養が取れないならどの組も公演していない時期ができてもいいからもっと公演と公演の間隔を開けて間遠にするとか、お稽古は一日八時間までにきっちり規制するとか、心身ともにプロのメンテナンスを劇団のかかりで入れるとか、研修サバティカル休暇みたいなのを各組順に取れるようにするとか、なんかそういうことなんじゃないですか?
イヤ実際は、こっちゃんがさっさと卒業したがっていて、劇団が慰留して、でもカラダしんどいんですよと言われてじゃあ休んでもいいから、ってなった、とかなんじゃないの?と勝手に邪推しているのですが…でもそんなんでいいのか?という…そもそもこっちゃんはせおっちに譲る気だったからこそ、あまり長くやる気がハナからなかったのかもしれませんしね。そういうのが前後、いろいろあって少しずつ狂ってきて、ギクシャクしているんじゃないのか? 本当に大丈夫なのか? とか、ホントもうなんかいろいろぐちゃぐちゃ心配です。
でもなー、ホントなんだかなー、なんですよね…
これは後輩が言っていたのですが、こっちゃんが休んでひっとんが稼働するなら、たとえばほのか、るりはな、うたちとバウで『若草物語』とかをやってほしかった、というのはマジでアリだな、と。つまり娘役だって主演ができる、客が入る、という先例を作るチャレンジをするとか、そういうトライの方がまだ未来や可能性が感じられますよね。それを、トップが休みでいないから二番手の相手役ね、専科特出の相手役ね、って今の感じがなんかもう、トップ娘役を、ひいては娘役全体を軽く扱うのヤメロ、と言いたくなってしまうのですよ…
はー、なんかもう疲れたよパトラッシュ…イヤ生徒さんはみんながんばっているんだ、スタッフさんたちだってきっとみんなそうだと思うんだ。でも首脳陣を信じられないんだ、何度も何度もナゾの措置を見てきたから…
それでも、今日観てきた花組梅芸『二人だけの戦場』初日が素晴らしく、29年ぶりの再演でもちゃんとしているってこともちゃんとあるんだな、単なる過去の栄光の焼き直しでもないしな、ああブリリア増やしたいなーなんでこんな公演期間短いの? …とか考え出しているんだから、やはり私はチョロいファンなのでしょう。
でも、怒るべきときは怒るしギャアギャア声は上げるから。なんでもいいと思われたくないから。大事にしてほしい、尊重してほしいから。そしていいものを作り見せてもらって幸せになり世の中を良くしていきたいから…
ホント、頼みますよ劇団……
東京宝塚劇場、3月30日18時半、4月6日18時半(新公)、25日18時半。
時は平安の初め、藤原北家の筆頭である良房(光月るう)とその養嗣子・基経(風間柚乃)が朝廷の権力を掌握しつつあった頃。京の都では、月の子の日の夜に鬼たちが大路を闊歩し、その姿を見たものを憑り殺すという「百鬼夜行」の噂に人々が怯えていた。京の治安を守る検非違使の長・在原業平(鳳月杏)は、帝の御前でこの怪事件の早急な解決を約束する。というのも、彼には頼もしい助っ人の心当たりがあったのだ。それは先ごろ偶然に知り合った風変わりな青年で、学者を多く輩出してきた菅家の三男、幼きころより秀才の誉れ高き菅原道真(月城かなと)であったが…
原作/灰原薬、脚本・演出/田渕大輔、作曲・編曲/青木朝子、植田浩徳。編曲/多田里紗。「月刊コミックバンチ」で連載中の漫画をミュージカル化した平安朝クライム。
原作漫画は電子無料キャンペーンをやっていた分だけ読みました。けっこう量があった気がしたけど、三巻分かな五巻分かな? 絵は味があっていい感じ、漫画はめっちゃ上手いというタイプではないですが、そこそこ人気があるようで長期連載になっていますよね。史実をもとにした平安朝を舞台に、歳の差バディ探偵ミステリー、というアイディアは目新しい。基本的にはひとつずつ事件を解決していくスタイルですが、グルグルものではなく時間はちゃんと流れていて、史実はこの先いろいろあるのでどこをどう描いていくのかは見ものでしょう。ただ、紙のコミックスはもう重くなっていく巻数だと思うので、上手くまとめていかないとね、と老婆心ながら思います。
さて、そんなわけで毎度真面目で芝居に真剣な月組さんは、原作漫画の雰囲気を生かしてそりゃ手堅く上手く仕上げてくるのでした。田渕先生もオリジナルだとややアレレですが元があるとまだ違うのか、流れるようなステージングでたいしたものです。「食えない坊ちゃん」という言葉の使い方が、二度目のは正しいけど最初のは違うんでないかい?ってのと(そして三度目は…同じ言葉をそんなに何度も使うなよ、と言いたい)、開演アナウンスに被さる音楽がうるさくて、トップスターのアナウンスをナメてんじゃねぇぞ?ってのが気になったくらいかな。平安貴族や武人たちとか、どうしても男役ばかりで娘役に役がないのを、ヒロインの店で働く女性たちや祭り見物に出る町人たち、神楽舞の伎女たちなどに上手く起用して、ちゃんと銀橋にも出す親切設計は褒めたいです。あと、そもそもこんなにちゃんとしたセットを作るのは演劇としてはややダサくて、今はもっと抽象的な空間をそれなりに見せるのが主流では?と思いつつも、セリや盆やカーテンや銀橋や、セットを吊るバトンもガンガン使って素晴らしいスピードの場面転換を見せるのも、たいしたものだと褒めておきたいです。ホント毎度エラそうですみません。
さてしかし、原作が連載中でもあり、ひとつの事件の真相は解明したものの犯人を糾弾するには相手が権力者すぎて、罪を問いきれないだろうし今はネグっておくしかない…というオチなので、ややスッキリしない、という残念さはあります。「本当の戦いはこれからだ!」という「週刊少年ジャンプ作品かな?」なオチは、個人的には嫌いじゃないですけどね。ただ、主人公が歌い終わったら本舞台にはもう照明を入れて、敵の顔を観客にきっちり見せて、そのあとは照明を主人公に絞って終えるのではなく全部バン!と落として終わった方がカッコよかったのでは、とは思っています。
あとは、ここではないどこか、たとえば唐はすべてが理想的で極楽パラダイス…とか夢見ていたお坊ちゃまの主人公が、いろいろな大人と関わってひとつの事件を解決する中で、書物だけでは知ることができなかった世の中を多少とも知り現実をかいま見、ここもそんなに悪くないしまずはここをもっと良くしてからでないと旅立つ資格はないな、とひとつステップを踏み成長し思い直す…のはもちろんひとつのドラマなんだけれど、まあでもちょっと弱いよね、という問題はあったかな。宝塚歌劇が何故ラブストーリーばかりを上演するかといえばそれはてっとり早くわかりやすくドラマチックだからで(脚本家の技量のせいで全然ドラマチックにならないこともままあるにせよ)、恋愛とか革命とか(同列なのか)以上にドラマチックな素材をなかなか用意できないからでしょう。でも今回はトップコンビが恋愛関係にないのでした。
別にキャラみんながみんな恋愛していなくてもそれは全然かまわないんだけれど、でも今回、感情的な屈託があるのって高子(天紫珠李)との昔の恋を未だ引きずっている業平とか、幼き日に出会ったもうひとりの自分のような、親しくなりきれなかった片想いの友のような吉祥丸(瑠皇りあ)を引きずっている基経とかであって、主人公でもヒロインでもないんですよね。道真ももちろん兄への想いはあるし語るんだけれど、子供だし性格的にドライなのもあって「そういうもの」としてもう納得しちゃっているようなところがある。まあ実質的な跡取り息子として自分ががんばるしかない、というんで割り切らざるをえなかったのでしょうが、そんなわけで未だうだうだしている業平とか基経の回想シーンなんかの方がドラマチックだし、萌えがあるんですよね。
そしてヒロインは最初っから最後までキッパリスッキリなデキるキャリアウーマンなワケで、ここも感情に特に変化がない。この変化のなさ、ドラマのなさ、感情の動かなさが、作品としては弱いんだと思います。萌えがない、ワクテカしない。今ひとつ淡泊なまま、「続きはまたの機会に!」って感じで終わってしまう…よくできているんだけど、そもそもの構造がこうなのであり、そこが弱点の作品だったかな、と思います。イヤ組ファンは楽しく通ったんでしょうけれどね、でも私はそう感じて、そんなに何度も観に行くものじゃないなと思ってしまったのでした。でも、平均点以上の出来の作品だったとは評価しています。毎度エラそうな物言いでホントすんません…
さて、れいこちゃん道真は、そりゃ漫画よりは青年に片脚つっこむ少年像でしたが、三白眼で膨れっ面で、毎度「…嫌です」や「…ちょっとぉ」でちゃんと笑いを取れる達者さもあり、さすがでした。業平に高子の話を振るくだりは、素で天然なのか意地悪な皮肉なのか、なかなかひやりとしそうなものなのですが…そんな、聡明なんだろうけれど世間知らずすぎる、人の感情や心の機微に疎い子供で、まだまだ危ういところもある様子をすごく上手く演じていたと思いました。
くらげ昭姫(海乃美月)もニンにぴったり。もうちょっと婀娜っぽくても楽しいだろうけど、なんせその色気を受け取る人がいないので無駄なものは出さないんですよね、という感じかな。くらげちゃんの役どころとしては目新しいところはないような気もしますが、ヒロイン像としては意外に他にないものかもしれず、そういう幅が増すのはいいことだと思いました。
ちなつ業平もそりゃもう上手い。藤原家の勢力争いからは外れたところにいて、飄々と風流人を気取り、町行くおなごたちに気軽に手を振りもするけれど、かつての恋を未だ思いきれないでいる…まあ、いい男のお役です。そりゃ上手いです。
おださん基経も赤い唇が禍々しく、白皙の美青年で実は恐ろしいやり手、でも今はまだ義父の陰で…というのとその義父とも実は屈託があり…というのとさらには妹・高子、そして吉祥丸への想い…となかなかにてんこ盛りな、おいしいキャラを素敵に演じていて、月組ってホント盤石!って感じでした。
はっきり四番手格に据えられた感のあるぱるは藤原常行(礼華はる)。歳の設定はわかりませんが位や立場が業平より上らしく、ちなつにまあまあ横柄っぽい態度のぱるなんて新鮮、トキメキ…と私はワクテカでした(笑)。まあもともと好きなスターさんなんだけどさ。顎髭もお似合いで、ちょっと男臭いところもある、でも妹ラブの生真面目で心配性な青年、という感じでしょうか。まあ並ぶとどうしても演技はまだまだなんだけど(声がまだ軽く聞こえるんですよね。なんせ周りが上手すぎる、怖いよ月組…)、まだまだがんばっていけることでしょう。このスタイルはなんせ武器です、信じてるぞがんばれ!
白梅(彩みちる)のみちると長谷雄(彩海せら)のあみちゃんはほぼニコイチでキャッキャしていて良きでしたが、まあ役不足ではあったことでしょう。辛抱時期もあるということです。
今回は退団者が多くて、るうさんは基経の養父・藤原良房。渋く悪く重々しく、さすがでした。からんちゃんはなんとラストも子役の清和帝(千海華蘭)、これがまた上手くていとけなくて、下がり眉で「なんとかしてたも」と言われた日にはみんな身を粉にして働いちゃいますよ帝のために…!ってな出来でした。ぎりぎりは基経の手下で鬼に化ける黒炎(朝霧真)、これまたこういうお役をたくさん観てきましたがその集大成というクールさ、シャープさ、ワルさで良きでした。ゆーゆは化粧がショーと同じかなみたいな目尻キラキラで素敵で、らんぜたんは若き日の高子(蘭世惠翔)他いろいろやっていましたが、どこも美人でホント目立っていました。さびしい…
印象的だったのは若き日の道真・阿呼(一乃凛)ののりんちゃん、あの「すごい? あこすごい?」の愛らしさは、袖でどんなにるうさんがお稽古しても及ばないでしょう(笑)。それと若き日の基経・手古(白河りり)のりりちゃんのキツさ、研いだ刃のような美しさ、わずかに滲み出る愛情や寂しさ…あとは高子に仕える山路(白雪さち花)の、ラストの手紙を差し出すくだりのさりげない素晴らしさね…! あと、静音ほたるちゃんの顔が好きです!!(宣言)あとあと、いつでもどこでもホント上手いれんこんの声、至宝です。
最後に俺のまのんの多美子(花妃舞音)の幼女芸、これまた至宝です! 新公の方がお姉さんに見えたもんなー…毒酒をあおって倒れた兄が連れられて去るのを子供みたいな泣きじゃくり顔で見送っていて、ホントもーヨシヨシしてあげたかったです!! きゃわわわわ!!!
新公もご縁あって東西ともに観られたので、以下簡単に覚え書き。
主演は七城雅くん。私は『ギャツビー』新公を観られていないので、なんかカワイイ新公大蛇丸だなー…くらいで印象が止まっていたのですが、なんとこんなに歌える芝居もできる少年に見えるおちつきはらっている、たいしたものでした!
ヒロインはみかこ、羽音みかちゃん。劇団使う気あったんかーい!な今さらな配役だとは思いました。『ブエノス~』ではちょっと足りていないなと感じましたが、その経験をものにしたか、同系統と言ってもいいかもしれないこのお役をスッキリしっかりこなしていて、感心しました。ただ超絶スタイルとキレキレのダンスが売りのショースターかなとも思うし、今後も芝居で娘役芸が要るような役は回ってこないタイプな気がするので、ホント路線系娘役がいないな月組…とはなりました。
業平は一輝くん、まああっぷあっぷしていましたね。劇団が育てる気満々なのはわかるし、こういうお役もホント経験だとは思うけれど、歌は弱いしそもそも苦手意識がある気がするし、お化粧も私はあまりいいとは思いませんでした。まあこういう背伸び経験も財産だ、がんばっていけー!
逆に基経るおりあきキタコレ案件でしたでしょう! 彩音くん同様、美貌のわりにこれまで役付きが悪い印象でしたが、これは次の新公主演があるのでは!? てか使わないともったいないのでは劇団!? おださんとはまた違う印象の、悪い炎が静かに燃えている感じのお役で、もちろん本公演が吉祥丸というエモさもありますが、本当に目を惹いたと思いました。
俺のまのんは白梅、可愛かったけどまあしどころがない役なんだな、と改めて思いましたね。コンビの長谷雄は和真あさ乃くん、これまた可愛くて手堅かったです。
りりたんの桂木がさすがだったなー。是善の澪あゆとくんもよかった。
清和帝は天つ風朱李くん、幼げで良きでした。良房の彩路ゆりかがまた上手くて、今まで絶品の三下芸、子分芸をたくさん観てきたけどおっさん芸も出来るんかワレ!と刮目しました。常行は遥稀れおくん、やはりのっぽさんで実直そうでよかったです。
おはねちゃん高子はなんかフツーだった気がしました。真弘くんの國道がまた上手いんだ…! その真弘くんが本役の是則の凉宮蘭奈くんは、ちょっと上がってたかなー…? この子は男役だけどゆーゆの大姉さまもやっていたのですね。
あとはうーちゃんがやってた若き日の業平、月乃だい亜キレーイ! ヤバーイ! のりんちゃんの若き日の高子も素敵でした。あとみうみんの手古、良きでしたー!
新公担当は中村真央先生。A先生のお嬢さんで元CAでドーターの中村Dとか呼ばれ始めているとかなんとか…大きな変更はなかったと思いました。
ラテングルーヴの作・演出は稲葉太地、サブタイトルは「海神たちのカルナバル」。
生徒たちをもうちょっと小分けに出してくれるとゆっくり観られて嬉しい…とは思いましたが、まあ華やかでわさわさにぎやかなショーで、楽しくてよかったです。黒塗りではなく、日焼けの範疇と言えなくもないブラウンフェイスくらい。ただし娘役は身体をけっこう濃く塗っている人が多かった気がしました。
プロローグ、れいこちゃんの「ダイブ…」からのるうさんのアナウンスや映像、というのは素敵でしたが、ここで踊る海神の遣いたちがまあまあいいメンツなので、だったらもっと照明入れんかい、と思いました。コロスに徹するならもっと下級生を起用すべきでしょう。スターの顔を見せないなんて宝塚歌劇では無意味です。
そしてチョンパ。デーハーな色目のわさわさしたお衣装で勢揃い、良きでした。デコレーションズのモジモジくんみたいな水色タイツの下級生たちも良き。彼女たちは続くちなつ吟遊詩人のバックにもいて、一輝くんフィーチャーでした。わかります、わかりますよ。
そしてくらげマーメイドセンターのマンボ場面。マンボの女がみんな髪型も濃くてパンチあってよかったなー。マイ初日はまだおはねちゃんがショーを休演していて、代役でまのんが入っていたのでウハウハでした。しかしここのくらげちゃんのお衣装はミュージカル『SIX』にあるものの完全なパクリだそうですね。バレないと思っているのか劇団…こんな組織にセクハラパワハラ対策だのコンプラ遵守だの働き方改革だの、ホントできるワケないよなーと死んだ目になりますね……
みちるゆーゆらんぜみかこと揃い踏みの真珠がまたたまらん。ここの「(プレイボーイ)」と役名につく海神役のれいこちゃんがスッキリと素敵。じゃんけんはまあよくわからんが…平和で良き。
そこからフェニタカの赤いスーツやドレスで中詰め。からのぱるあみセンターの恒例若手爆踊り場面。あみちゃんはホント上手いんだけどホントちっさいんだ、そこだけだよ…
そして花園へ。もう何度も見た気がする女装ちなつですが、れいこちゃんが色っぽく絡み、おださんが色っぽく歌う…おださんの歌がとてもよかったです。
エルメスとビットが出そうな(笑)くらげちゃんの歌から、暖色サルエルでマントルを表現する土俗的なダンス場面へ。退団者ピックアップもあり。そしてロケット、もうまのんたんガン見でした。
フィナーレは両脇の娘役さんの尻を撫でるれいこちゃんが好きです(笑)。デュエダンは笑顔なしのタンゴ。タンゴでは相手の脚の間で脚を跳ね上げる振りがよくあるものですが、れいこちゃんって脚は長くないからまあまあくらげの脚に当たっていて、アザになっていそう…とか思っていましたすみません。
パレードのエトワールはなんと五人の役替わり。私はりりちゃんと桃歌雪ちゃん、咲彩いちごちゃんを観たのかな? オーディションで全員が良くて、というのはわかるけど、それでもひとりに絞ってこそのエトワールの座ではないんかいな…とは思ったかな。じゃあ次回は誰にやらせるの?ってのもある…
ダブルトリオはのりんちゃんとほたるちゃんガン見でした。
退団者は多いけれど、それでも層の厚さと充実を感じさせる、良きショーだったと思います。
次の別箱のポスターが素敵で、さらにその次の本公演の先行画像はなかなかにナゾで(笑)、ますます楽しみではありますね。『月の燈影』も私は生では未見で、映像でも観たことがない気がするので、楽しみにしています!
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以下、最近の宝塚雑談日記を少しばかり。
せおっち専科異動、SNSファンアート禁止令、主演役替わり『ミーマイ』とこっちゃんの休養、の三連続コンボ発表について、ごく個人的な所感です。
せおっちについては、マイティの先例があったのでそこまで騒ぎにならなかった印象ですが、それはあくまで二度目だからであってそもそもホントどうなんだこの措置、という問題は引き続きあるワケです。しかもせおっちには今のところDSの発表もない…その後、なかなか破格の博多座主演(役替わりで半分だけど)が発表されたマイティと比べると、だいぶ扱い悪くない?とファンならずとも気分は良くないです。まあずっとかたくなに大羽根を背負わせてもらえず、と思ったら全ツでひょいっと背負わせて、でもコレですからね…『1789』は一本ものだし、トップコンビ以外の大羽根はなさそうですよね。本公演での大羽根がないまま組を去るのか、つらいなー…でもフィナーレの歌唱指導はあるかな、アレはれっきとした二番手スターのお仕事ですよねえ(『蒼穹』でそらがやったのはラストシーンにあーさが出ていたという出番の関係によるイレギュラーなので)。つまり要するに、せおっちは組の二番手スターの仕事はちゃんとしてるしグッズなんかも出してて劇団はそれでちゃんと商売してるんだから、待遇もちゃんとしてくださいよよその二番手と同格じゃないとおかしいじゃん、と激しくつっこみたい、のです。
マイティのときにも言ったけれど、ここまで来るまでになとんでもできたろう、たとえばありちゃんを組替えさせたときにひょいっと逆転させたってよかったのに、どうしてこう下手なんだ劇団…とはホント何度でも言いたいです。ただ、当人とどういう相談がなされたにせよ、専科に異動してでも劇団には残りたい、タカラジェンヌとしてまだやりたいことがある、と生徒さん本人が判断、決断してくれたのだろうから、それは尊重したいし、実際に他組にどんな形で出演してどんな化学反応が生まれるのか、は純粋に楽しみではあります。ただ、ファンは予定が立たないつらさとかを抱えることになるから、タイヘンだろうなとは思います…でもせおさんってホント愛されキャラだから、今後も良きようになるといいなとホント祈っています。
SNSファンアート禁止令については、そもそもけっこう以前から公式サイトの奥にひっそり告知されていたそうで、それを最近になってたまたま誰かが見つけて「えっ、ダメだったの!?」って騒ぎ出した、ということなんじゃないかな、とは考えています。FAQの形になっていますが、それは文面のことだけで、実際にこういう問い合わせの凸があったわけではないと思っています。
で、法律的なことから言えば、そりゃこういう線引きになる、というのはわかるのです。著作権とか、肖像権とかね。でも実際、中の人たちは、特に電車のおじさまたちは、ツイッタランドの楽しげなタイムラインをおそらく全然見ていないんですよね。インスタの不法動画投稿無法地帯とかメルカリの会グッズ転売みたいなのはつぶしていってほしいけれど、ファンアートはそういう類のものではないし、絶対に宣伝効果があるので、ちょっとでも賢ければスルー推奨なんですけれど、なんでこう極端っつーかよく考えてないっつーか下手を打つのが得意なんでしょうかねえ劇団…
既存の漫画を原作に舞台化しておいて、その漫画家が感想レポイラストみたいなのを描いて自身のSNSに上げるのを規制する権利が本当に劇団にあるのか、とか、そもそも広報誌みたいなところに今まで仕事を依頼してきたプロのイラストレーターさんたちとかもいただろう、彼女たちがお仕事レポとして多少の似顔絵まで描くことを規制できるのか、とか、ホント問題アリアリです。ならもう全オリジナルでやれ、ってなっちゃうじゃん。
あと、そんなこと規制している暇があるなら使えないチケトレやめてもっときちんとしたリセールシステム整えろよ、高額転売対策にもっと本腰入れろよ、とかいろいろやってほしいことは他に多々あるワケですよ。てか文春にすっぱ抜かれた件は結局どういうことだったんだよ、とかね。アレだってフェーズは違っても地続きの問題なんじゃないの…?
しかも、それで問い合わせが来てある程度の回答は個別にしてるようでも、結局は引っ込めないんですよ。そういう組織だって知ってた、思ってたよマジで…改めないんだよね、誤ったことよりその方がホント良くないことなのにね…
そこからの雪組大劇場レポの盛り上がらなさと言ったらあなた(byセレスティーナ@『バレンシアの熱い花』)、作品が駄作だっつーのもあるけど(オイ)写真もイラストもないタイムラインの寒々しさ、惨憺たるありさまは、このままならすぐ集客に直結しますからね…思い知って思い直してほしいけど、でもそういう組織じゃないんだよなー劇団…はー、絶望しかない。つらいです。
そしてそこへ星組の別箱発表が。
まずは天飛くんのバウ主演は、そりゃめでたいよ? ただなんか題材が…この間のかりんさんバウは画家で今度は小説家なんだ?という、ね…なんか、史実とか実在の人物とかからしかお話って作れないものなの?とちょっと最近の若手演出家の作家性に疑問を感じなくもないのですが、まあまずは楽しみに待ちたいと思っています。下級生座組になるだろうけどしっかりした芝居はしてくれそうですよね、つーか天飛くんが抜けた残りのチームは誰が芝居をするんだろうね、という(オイ)心配をしていたら…え? え??
まず、久々の博多座公演、これはめでたいです。かつては年イチでフツーにやっていたのにいろいろあって不規則になっていたので、御園座と博多座は定期的に公演する、となるとホントいいと思います。いいハコだしいい街です、遠征はいつも楽しいです、大歓迎。
『ミーマイ』は…まあもう一生分観たけど…まあでも別箱なら役がないのもまだ軽減して見えるし…あとこの作品の本当の意味がきちんと伝えられているバージョンを私は観たことがないと思っているので、もう一度信じてみてもいいかも…直近はみりかの? でももうだいぶ経っていますしね。そして月組と花組でしかやってこなかった演目なので星組でやる、というのはいいですよね。別にどこかの組が独占することはないと思うので。生徒はみんな好きで出たいんだろうしね。
そしてマイティ特出、ありちゃんと役替わりでビルとジョン卿をやる、というなかなかランボーなダブル主演です。ありちゃんは『1789』は三番手スターなワケで、その千秋楽翌日にせおっちが専科異動することで二番手に昇格するのでしょうが、二番手として何もしてないうちにもう博多座主演なワケです。イヤ別箱主演で東上もしているスターなのはわかっていますよ、でも博多座って他の別箱と違うでしょう。これまで主演は必ずトップスターだったハコでしょう。そんなに安い扱いでいいの?という…
マイティも、そりゃこれまでトップスターか次期トップスターが主演していた全国ツアーを専科のカチャが主演した例ができたとはいえ、専科初仕事が博多座主演なんだ、すっごーい呆然…って、ちょっとなりません? なんか、トップとか主演とかの格って、なんなんだろうね…みたいな。というかこれで今後は他組に特出するときは二番手格で出るってことですよね? なんなら1.5、が言い過ぎなら1.8番手くらいで? 2.5番手ではない、ってことでは? つまり別格スター枠ではなく、脇役でもないってことですね? 本公演でそれをやられると組ファンはとてもフクザツに感じることになると思われるのですが…イシちゃんが主演したのとはワケが違うし…あのときだって貴重な一公演がつぶれた、と思ったトップファンは多かったワケですし…
あとねえ、まさみりちゃぴ体制での『ロミジュリ』もそうだったけど、運命的なカップルの話なのにジュリエットひとりに対してロミオがふたりって、純粋におかしいやろって話で、今回も「僕と僕の女の子」の話なのにサリーひとりにビルふたりですよ、ナメてんのか?ってなりません? そしてひっとんに対する負担も大きいと思うのです。花組出身でそりゃマイティとも面識はあるし、上手く合わせるんだろうけど、でもふたりのビルを相手にするって、単純に心理的にしんどそうじゃないですか。それに唯一無二のカップル感が全然ないじゃないですか。
それでいうと、トップコンビこそ唯一無二の、至高のカップルなんであって、そういうファンタジーをふたりで作り上げて夢を売っているのが宝塚歌劇なんじゃないの? 前回は『赤と黒』がダブルヒロインものだったから、とか全ツなのでイレギュラーで、とか言い訳できたけど、本当は常にこっちゃんの相手はひっとんでひっとんの相手はこっちゃんであるべきでしょう。そこんとこ、劇団はどう考えてるんでしょう?
さらに、じゃあここでビルをやらないこっちゃんが何をするかと言えば「休養」なんですよ…いやー、なんなの? 働き方改革なのかもしれないけど、大変な思いをしているトップスターはこっちゃんだけじゃないでしょう。てかトップ娘役はトップじゃないのか? 何故ひっとんは休ませなくていい、という判断になるんだ?
激務の軽減なら、休演日を二週に三日にするとか、週十回公演を八回にするとか、一か月公演は一か月半公演にしてお稽古期間もその分長く取るようにするとか、五組でグルグル回しているだけじゃ休養が取れないならどの組も公演していない時期ができてもいいからもっと公演と公演の間隔を開けて間遠にするとか、お稽古は一日八時間までにきっちり規制するとか、心身ともにプロのメンテナンスを劇団のかかりで入れるとか、研修サバティカル休暇みたいなのを各組順に取れるようにするとか、なんかそういうことなんじゃないですか?
イヤ実際は、こっちゃんがさっさと卒業したがっていて、劇団が慰留して、でもカラダしんどいんですよと言われてじゃあ休んでもいいから、ってなった、とかなんじゃないの?と勝手に邪推しているのですが…でもそんなんでいいのか?という…そもそもこっちゃんはせおっちに譲る気だったからこそ、あまり長くやる気がハナからなかったのかもしれませんしね。そういうのが前後、いろいろあって少しずつ狂ってきて、ギクシャクしているんじゃないのか? 本当に大丈夫なのか? とか、ホントもうなんかいろいろぐちゃぐちゃ心配です。
でもなー、ホントなんだかなー、なんですよね…
これは後輩が言っていたのですが、こっちゃんが休んでひっとんが稼働するなら、たとえばほのか、るりはな、うたちとバウで『若草物語』とかをやってほしかった、というのはマジでアリだな、と。つまり娘役だって主演ができる、客が入る、という先例を作るチャレンジをするとか、そういうトライの方がまだ未来や可能性が感じられますよね。それを、トップが休みでいないから二番手の相手役ね、専科特出の相手役ね、って今の感じがなんかもう、トップ娘役を、ひいては娘役全体を軽く扱うのヤメロ、と言いたくなってしまうのですよ…
はー、なんかもう疲れたよパトラッシュ…イヤ生徒さんはみんながんばっているんだ、スタッフさんたちだってきっとみんなそうだと思うんだ。でも首脳陣を信じられないんだ、何度も何度もナゾの措置を見てきたから…
それでも、今日観てきた花組梅芸『二人だけの戦場』初日が素晴らしく、29年ぶりの再演でもちゃんとしているってこともちゃんとあるんだな、単なる過去の栄光の焼き直しでもないしな、ああブリリア増やしたいなーなんでこんな公演期間短いの? …とか考え出しているんだから、やはり私はチョロいファンなのでしょう。
でも、怒るべきときは怒るしギャアギャア声は上げるから。なんでもいいと思われたくないから。大事にしてほしい、尊重してほしいから。そしていいものを作り見せてもらって幸せになり世の中を良くしていきたいから…
ホント、頼みますよ劇団……