駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

我が愛しの間黒男さま@れいこちゃん~月全ツ『ブラック・ジャック 危険な賭け』初日エモエモ日記

2022年11月19日 | 日記
 何度か語っていますが私にはみっつ違いの弟がいるので、「りぼん」「なかよし」を読む一方で(「ちゃお」はまだなかったのでは…)弟と一緒に週刊少年漫画誌4誌をずっと読んで育ちました。小学生時代は「ジャンプ」はまだまだ後発で、「サンデー」「マガジン」はもちろんそれぞれおもしろかったものの、なんと言っても夢中だったのが「チャンピオン」です。『ドカベン』『がきデカ』『マカロニほうれん荘』『エコエコアザラク』『750ライダー』『すくらっぷ・ブック』…好きだったなあぁ。そこに『ブラック・ジャック』はあったんだったか、それともこれは時期違いで、コミックスで読んでいたんだったかな…? 実家にはまだ「恐怖コミックス」とか謳われちゃっているボロボロの秋田書店少年チャンピオンコミックス版全巻と、のちに復刊ドットコムから出たB5版の雑誌連載順に収録された豪華版を愛蔵しています。どのひとコマを挙げられてもそのエピソードのあらすじが解説できるくらい、読み込んでいると思います。とはいえ私は世代としては手塚ファンの中では遅く若く、他に『火の鳥』くらいしか実は読んでいないのですが…大人になって『MW』とか。アトムとかジャングル大帝とかアドルフとかを履修していないのです、漫画ファンとして恥ずかしく思っています。長い休みを取って漫喫にこもって全集を端から読みたい…
 それはともかく、花組初演版は、『メラジゴ/ラ・ノーバ!』から宝塚歌劇を観始めた私にとってはまだまだファン黎明期の、しかしやはり思い出深い作品です。演目としては『ベイ・シティ・ブルース』のあと? まだ全組観られていない頃だったかも…当時のプログラムを見ると半券が挟んで残してあるので大劇場には遠征していておらず、東京公演はロンドン公演でいなかったヤンさんの代わりにミキちゃんが主演したのですがこれを観ていて、最後の3日だけヤンさんが戻ってきて演じたのでこのチケット取りに奔走した記憶もあります(前楽の半券アリ)。スカステの録画はどこかにしまってある気がしますがあまり見返したことはなく、実況CDも当時はよく聞きましたがここ最近は全然聞いていませんでした。
 雪組版が上演されたときも、作品違いだし特に復習しなかったのではないかな…ただ、ヤンさんが乗ったセリが上がると影役のチャーリーが出てきて無言で踊り出す様子を、すごく鮮明に覚えています。主題歌「かわらぬ思い」はイベントなんかでもよく歌われる名曲ですが、トップトリオの「それぞれの思い」もものすごく素敵な歌ですよね。大好き!
 今回の全ツの初日3日ほど前に、在宅勤務のお供に実況CDを再生してみましたが、うわあぁあ懐か死ぬ…!と仕事になりませんでした(笑)。ヤンさんミハルミキちゃんタモの声はもちろん、ああミユさん! ユカシさん! さっちん!(確か初めてお茶会に行ったのが彼女だったはず…)ミサノエ~ル…!!ともうエモエモのエモだったのでした。
 そしてホント正調正塚台詞、正塚会話、正塚芝居だな、としみじみ…ハリーは復権してきているのか最近再演が続きますが、今回はこれが今の月組の全ツのメンバーでどう再演されるのか、本当に楽しみになりました。れいこちゃんの先行画像やポスター画像がまた素敵でしたしね。プログラム表紙はちょっと髪を盛りすぎている印象で、頭身が低くなって原作漫画に近いのはいいんだけどスタイル的にちょっともったいないような…?と案じていたら、舞台ではちゃんと控えめに直っていましたさすがです。
 というか1階センターけっこう後列だったので、振り返ると2列後ろにハリーとミキティが並んで座って観ていたりして、これまたエモエモのエモな初日観劇となりました。

 開演アナウンスに被るヘリコプターかプロペラ機?のSEにもうたぎる私…そうそうそうだった! シルエットでわかるブラック・ジャックの姿、ライト、拍手、正しい! ニヒルな苦笑いみたいなのを浮かべているれいこちゃん…キャー!! そして軍事政権を打ち立てた将軍の記者会見、モノクロのお衣装の記者たち、「♪クーデタークーデター、エンリケ将軍が、軍事クーデター」…覚えてる! まんまやんけ!!
 全ツ仕様にセットその他はだいぶ簡略化されていますが、その分スタイリッシュで、それこそ省略が上手く効いた漫画のよう。ところどころ「こんな台詞あったっけ?」とか「あれ、なんか飛ばされた?」と思う箇所はあったので、脚本はちょいちょい加筆・修正されていたようでしたが、基本的にはやっていることはまったくおんなじです。配役発表時に清華ちゃんと空城くんの役名が初演にはないものだったので、何かエピソードが増えるのかなとか思っていたのですが、リポーターなんかが名乗っているというだけで大筋にはまったく影響なし。というか時代設定も初演と同じ1980年代中頃ということで、パソコンのモニターがブラウン管みたいなのも変わらず、用語もそのままでしたが、これはリアリティとしてむしろアリかな。今はこんな退職者がいつまでもアクセスできるシステムにしている政府機関とか、駄目でしょう(笑)。
 でも、アップデートしている部分もちゃんとあって、くらげちゃんが二役で演じる如月恵の病気の詳細が伏せられたまま話が進み、「子宮を取って私が女でなくなる前にあなたの私への本当の気持ちを聞かせてほしい」という意味の台詞がなくなっていて、私は本当に泣きそうになりました。ありがとうハリー! 彼女の手術が子宮を摘出するものだったことが伏せられたことで、手術が成功したのに何故別れるんだ、と思う観客は出てしまったかもしれません。実際に原作では如月先生はその後やや中性的になって船医として働いている…というエピソードもあるのだけれど、このあたりは扱いが非常にデリケートな問題です。それこそ今、子宮があれば/卵巣があれば/生理があれば/女性ホルモン量が一定値あれば女性なのか、そうでないなら女性ではないのか、というのが医学的なことよりジェンダー的な意味で議論されたりしているし、性別とか性自認の問題は日進月歩で変化しています。私は実況CDを聞き直したときに「私がまだ女でいる内に」という台詞に非常にざらりとしたものを感じたので、今回カットされていて本当に安心しました。改めてありがとうハリー、信じてた!
 あとは基本的に本当にまんまで、伝わってくるメッセージは今、現代に上演されることでより強く立ち上がってくるな、と感動しました。それはつまりこの30年で残念ながら世界があまり進歩していない、ということなのかもしれませんが…でもハリーは今回のプログラムで、初演時は「原作の根底に流れるものに対して感じた事に少し力が入り硬い事を言い過ぎている感があった」と語り、「今の感覚でウェルメイドなものに仕上げたいという思いがあ」ると語っているのですが、どうしてどうして、むしろメッセージはより強くまっすぐ伝わって、作品としてさらに良くなったのではないかと思います。その上で、原作漫画の持ち味でもあるのですがユーモラスなところ、おかしみなんかも上手くちょいちょい表現されていて、本当にハートフルでウェルメイドな、ヒューマニズムあふれる佳作に仕上がっていると思いました。
 それはとにもかくにもれいこちゃんのお芝居によるものだと思うのです。彼女は本当にお芝居の人ですね。そしてどんな役柄でも素晴らしい演技をしそのキャラクターに見せその心情を上手く伝えてくれますが、今回のブラック・ジャックがこんなにハマるとは正直私は思っていませんでした。それはやっぱり初演のヤンさんの、クールそうな風貌と、でも照れ屋なだけでけっこうあったかくて実はおもしろいみたいなところもある人柄に当て書きされたようなハマり具合の印象が強かったからです。もちろんミキちゃんのブラック・ジャックはもうちょっと熱いタイプだったと思うけれど、ミキちゃんってわりとなんでもミキちゃんなところがあるから…(まあホント言うとヤンさんもそういうところはあるかも、ですが…)
 でもれいこちゃんのブラック・ジャックは、とてもとてもよかった。なんならホントに原作漫画から立ち上がってきたみたいでした。無免許のもぐりの天才外科医、高額な報酬を請求する冷酷非情で傲岸不遜な男、世間から鼻つまみ者とされるアウトロー…なんだけど、彼は実はけっこう青いし熱いし、正義感で熱血漢なのです。金なら払う、みたいな上からなヤツを嫌うし、おためごかしや綺麗事を言うだけの人のことも嫌います。今回のスノードン卿相手の会話がいい例で、国のためとか平和のためとか正義のためとか言うスノードン卿(と英国情報部、英国政府。まあ女王の名が違うのでこれは別の世界の日本や英国のことなのですが)の実は単なる利己主義、みたいなものをちゃんと見破っていて、いけすかないと感じている。そしてそのことを黙っていられない、必ず一言言ってやらないと気がすまないタイプなのです。大人げないとも言える。でもそういう、彼なりの誠意、まっすぐさがあるキャラクターなんですね。
 それをれいこちゃんは、皮肉げに唇を歪めて薄笑いしてみたり、さもへえとかほおとか言いたげなあきれ顔をしてみたり、不満を隠そうともせず唇をとんがらせてみたりといった、その至宝の美貌を多彩な顔芸で崩して表現してみせ、一見クールだけれど実は中身はかなり暑苦しい人間像を、きっちりかつ親しみやすく、魅力的に作り上げてくれているのでした。
 彼は一度死んだ人間で、だからこそ生きることに真剣で、だから命を粗末にするような真似をする人間のことが見過ごせません。痴話喧嘩に混ざれずとも、足を踏まれて虐げられてそれでもかまってもらえなくても(笑)話に割って入ろうとする、人と関わろうとする。絶対に投げない、見捨てない、あきらめない。それってものすごい情熱、いやものすごい愛ですよね。そのハートの熱さ、あたたかさをれいこちゃんは存分に演じてくれて、その上でちゃんと見た目がクールでリボンタイがキュートな(笑)漫画どおりのブラック・ジャック先生で、もうホントーに最高なのでした。
 歌がいいのもあるけれど(影役の一輝くんがさすがに全然出ない、なんならヤンさんだってかなり怪しかったとっぱしの「♪遙か群衆を…」のあの低音が出るんだからたいしたものです!)、踊りはなんかちょっとおもしろいので(笑。失礼! ブラック・ジャック本体が踊る時は影は直立不動、ってのがまたいいんだけれど、それはそれとしてやっぱり歌いながら踊るれいこちゃんブラック・ジャックはやっぱりちょっとおもしろいと思うのです。「踊るんだ…!」みたいな(笑))、そこはいいぞ、芝居だけでいいぞーと思いつつ、最後に万感の主題歌リブライズで締めて万感の幕…いやぁなかなかできませんよね! 本当にカッコよかったです。感動的でした…!!
 もちろんコロスもいいんだけれど(コロス男のツートンデザインはママとして、初演は横顔シルエットじゃなかったよね!? オペラで覗いて吹き出しかけましたよ…)、ほぼ佇んでいるだけのコロス女がことによかったなー。あれも初演にいましたっけ? なんとなくいるだけで主人公の心情を表す…すごいよなーと思いました。演劇的だし、ホント演出として、作品として好きです、この演目。
 そうそう、みうみんピノコとの電話のくだりでけっこうやに下がる感じなのもよかったなー! バレンタインの話とか、ホントこの先生とこのピノコで観たいよ…!!(笑)運転するハンドルの前に潜り込むにはちょっとでっかいかもしれないけどな(^^;)。

 なので、くらげちゃんアイリスの固さはブラック・ジャックとの対比としても二役の恵との差異としてもまあいいのかな、と思えました。ただ、アイリス自体があまりにも愛嬌がないキャラクターに見えちゃうのは、ちょっと残念でアイリスに気の毒かも。物語のヒロイン、という立場ではあまりないキャラクターですが(ヒロイン・ポジなのはむしろケインなんですよね、この話)、トップ娘役としてあまりにも地味でとっつきにくくかたくなすぎるのでは…とは思った、かな。作中ではロマンティックな場面は全然ないわけですが、過去にケインとの間にあったラブラブの恋人時代や同僚として冷戦下をともに熱く激しく戦い生き延びたドラマチックな日々…なんかをもっと想像させる余地がある、あと少しだけのウェットさがあってもいいのかなと思いました。その点ミハルは声そのものが艶やかなのでクールすぎる芝居をしてちょうどいいくらいだったし、でもそのけっこう女っぽい女性が無理して情報将校なんかやってる感じもよかったんだけどなー、とも思うので、これは解釈違いなのかもしれません。ミハルはミキちゃんともショーなんかでよく組んでいて映りもよかったから、ちゃんとカップルに見えた、というのも強かったと思います。でもくらげアイリスだとおださんケインの姉に見える…色恋で心配しているんじゃないみたいで、そこは本当に残念でした。
 なので同様におださんケインが私にはもの足りなくて、珍しくおださんにちょっと不満でした。そういう意味ではケインはそりゃミハルのアイリス以上にミキちゃん完全当て書きの役だろうから、仕方ないのかもしれませんが、それこそ解釈違いな気がしました。
 任務中に、恋人のアイリスをかばって頭に銃弾を受けて、破片が残って、神経を圧迫していて、絶えず頭痛や目眩や痺れがあって、仕事も辞めざるをえず、無許可のブックメイカーとして酒場で小銭を稼いでいる、その日暮らしの自堕落な男。元の職場からズルして引っ張った情報を賭けのネタにしていて、密かな復讐をしているようなところもあるんでしょうが、他にやりたいこともやれることもなくてただ自暴自棄になっている、というのが近いでしょう。不慮の事故とその後遺症に、なんで俺がこんな目に…と、運命を呪い人生を呪い、スネてグレている、甘えた男なわけです要するに。自分は退職したのに恋人だった女は未だバリバリ働いていて、心配してくれはするけれど辛気くさくてかえって気が滅入るし、手術したり治療したりといった快癒の目はなく、絶望にうんざりしている。せめて目先の日々は楽しくのんきに暮らそうぜ、と嘯いて、相棒のジョイとはしゃいで馬鹿騒ぎしてワルぶって生きている…そんな男なんじゃないかと思うんですよね、ケインって。でもおだちんはもっと静かでスマートで真面目そうで、そんな自暴自棄の甘えた男に見えません。もっとガチャガチャうるさい芝居をしてもいいんじゃないかなー、身振り手振りとか、と思うのですよ。そうしないとホントれいこBJのひとり勝ち存在感になっちゃわないかなー、でもケインってこのお話のヒロイン・ポジキャラじゃないと駄目なんじゃないかと思うんですよねー。でもおだちんは根が真面目なんだろうからな…冒頭のジョイとのドライブのくだりとか、ああいうのミキちゃんってホント意味なく(笑)上手かったからさー、ああいうご陽気さや空元気感、そして洒脱さが出るともっといいと思うんですよね…おだちんにはつい望みすぎてしまう。
 ケインが実はけっこう綱渡りのギリギリのところをフラフラしているような男だから、その相棒のジョイがまだ学生の卵の殻をお尻につけたようなのほほんとした好青年でちょうどいいんじゃないか、と思うんですよね。タモのジョイとグンちゃんローラのヤング・カップルには、そんなのほほんさがあったように思います。ぱるはもうちょっとだけなんか色をつけてもいいのかも。まのんたんのローラもいじらしくていいんですけどね、でもパブのウェイトレスというには未成年感があるかもしれない(^^;)。あと、ジョイと全然ベタベタしないんだけどそれはいいんでしょうか…まあ設定が「ガールフレンド」なのでまだアレなのかもしれませんが(まだ? どれ?)。またおだケインがローラの腰をがっと抱いて歩くシーンがあるもんだからさあ…ヤダわおださんったら!(トキメキ)
 まあ比べ出すとろくなことがないし、そんな初演厨みたいなことはあまり言いたくはないのですが…でもミユさんとかやっぱ印象的だったからなー。さっちんとはわりとキャラを変えたあましーのジョアンとか、ゆーゆベリンダとかはよかったかな。特にゆーゆはこういうお役もホント上手いんだよねえ…! てかベリンダヨランダ・ギャグが残ってて嬉しいよハリー!(笑)てかヨランダのりりたんもとてもよかった! 毎回ちゃんと笑いを取るんだぞー!! あとせんりちゃんのヴィクトリア女王もとてもよかった。月組も上級生娘役さんがいなくなってきたから、こういう位の高い妙齢女性役者がいなくて困るぞこれから…(><)
 あ、みうみんピノコも可愛かったけれど、受話器の小道具はあってもよかったのでは(笑)。あと原作厨としては口調がややおかしかった、「その音はピノコはそう発音しない!」みたいなのがあって。あれはわりとちゃんと法則性があゆわよのさ。
 りんきらのおぼうぼつきパジャマ姿はごちそうさまでした、良きおじさん芸で満足です。ふたり分の手術代、ちゃんと払ってあげてください。多分女王の認可は下ります(笑)。
 あとぎりぎりの三下用心棒芸ね、素晴らしいですね!
 ところで一星くんは私にはタニか麻央くんにしか見えないのですがどうしたら…あと彩路ゆりかが最近気になりますどうしよう…
 それはそうとれいこちゃんのいびきは本当に素敵でした音源ください(笑)。


 …と、楽しい遠征でした。私は次は市川でもうマイ楽ですが、どうぞ全国で毎度楽しいカテコご挨拶芸を発揮してきていただきたいです、おもしろかなとさん! ホントこんなに美人なのになんでそんなにおもしろいの…好き……
 無事の完走と、次回の本公演のさらなる充実を、熱くお祈りしています!!!











コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『天使にラブ・ソングを』

2022年11月19日 | 観劇記/タイトルた行
 東急シアターオーブ、2022年11月17日18時。

 2014年にアサコのデロリスで観たときの感想はこちら。このときのカーティスは大澄賢也だったので、今回はまぁ様デロリス(朝夏まなと)に吉野圭吾カーティス回を選んでみました。もちろんきぃちゃんシスター・メアリー・ロバート(真彩希帆)も楽しみにして行きました! 思えば前回のロバートで初・宮澤エマだったんだなあ…! エディは変わらず石井一孝、オハラ神父は太川陽介になり、修道院長(鳳蘭)ツレちゃんのラスボスぶりは健在です。
 前回観たときは芝居パートがゆるいなあ、とか感じた記憶がありますが、今回はそういうタイプの作品なのである、という心構えで行ったので、不満に感じることはなく、ハッピー・ミュージカルを楽しみました。お友達のおかげでダンシング・シオタクターの後頭部がよく見える素晴らしいお席だったから、というのもあります。ただ、前すぎてオケの音はよく聞こえるんだけど歌は声量がなく感じました。音響のせいかな…
 というかさすがアラン・メンケンであの時代(1978年って言いました? SWが当たった年ってことだよね? 出てきたチューイーやR2のぬいぐるみ、欲しい!)のソウル・ミュージックだけでなく楽曲が多彩で楽しく、正直もっと歌がガチ上手いちゃんとしたメンツで観たい作品だ…とか思っちゃったんですよねすみません。個人的には満足できたのはエディのナンバーだけで、あとはきぃちゃんですらパンチに欠けると思ってしまった…てか話がたいしたことなくて楽曲がいいミュージカルなら、というかミュージカルなら!歌えるメンツで観たい!ってあたりまえの話ですよね。でもそれじゃ客が呼べないのかな、ホントかな?
 まあでももちろんまぁ様は太陽色のダイヤモンドなわけで、そういや黒人設定なんだっけ?ってのは伝わらなかったけど(あのヘアスタイルはお洒落でやっているものだ、という先入観はよくないですねすみません)、スターになりたい!歌手になりたい!輝いて、その輝きで周りも輝かせてみんなでハッピーになりたい!みたいなオーラがハンパないので、そりゃ愛嬌あふれるチャーミングなデロリスになっていて、主役として素晴らしかったです。
 でもやっぱり、既婚者でモラハラでDVで、というかぶっちゃけ犯罪者で、みたいな男に引っかかっている愚かな女感は少ないわけで、ホントはそこがあった方が後半が効いてくるのでは、とは今回も思いました。そういう男を吹っ切って、クラスメイト時代は地味で冴えなくていじめられっ子に見えた男子が誠実で正直で頼れる素敵な男性になっていて、恋が始まっちゃう、かも…?みたいなところで終わる話なんだと思うので。エディはすごく素敵な仕上がりだし(私がわりと石井一孝が好きだからというのもある)、なのでホントはカーティスがもっといい色悪になるといいんじゃないかなと思うんだけど、ちょっとおもしろ寄りすぎる気がするんですよね。
 これって男性演出家視点だからじゃないかなあ、イケメンにホント冷たいというか、その価値をわかっていないんですよね…手下の3バカがコミカルなのはいいとして、やはりむしろヒヤリとするくらいに格好良くて怖くい、イケメンの悪人にした方がいいと思うんですよ。ちょっとおバカで笑える方向に作ろうとするのは、男の甘えだと思うんですよね。男ってみんなこういうもの、とかこんな可愛いところがあるんだぜ?みたいな…馬鹿言うな犯罪は犯罪だよ、と言いたいし、女もイケメン無罪と考えているわけじゃないんです。その匙加減に男女差があるんだと思うんだよなー…
 一方で、要するにこれは駆け込み寺に行って救われるヒロインの物語であり、ヒロインを救う女たちとのシスターフッドの物語なんですね。そして教会を舞台にした欧米の作品にもかかわらず、決して宗教を押しつけない。ヒロインが回心し改宗して終わる、とかじゃない。神の愛や御手の奇跡と隣人愛、人と人との助け合いはつまり同じことだ、というのが結論なのです。素晴らしい! ホント押しつけないのが本当の信仰というものですよ、聞いてるか壺!
 デロリスがシスターにならなくても、シスターたちはただの女友達として今後もつきあってくれるでしょう。暴力彼氏から匿ってくれる友達を誰ひとり持たなかったデロリスが、やっと友達というものを得る、これはそんな物語でもあるのでした。そしてその友達たちはマジで天国に召されそうな老女から、ティーンかな?みたいな見習い修道女まで年齢も幅広い。おそらく出自も境遇も個性もみんな違う、でも愛があるところはみんな同じ。なんて素敵なお話なのでしょう!
 その奇跡に感謝し、寿ぎ、歌い踊る。正しい。テレやでつい「言わなくてもわかってるでしょ」とか考えがちな日本人にも、感謝を示しともに楽しく歌い踊る方法を教えてくれる。そんな素晴らしい作品で、だからこそ何度でも上演されるに足る、良きハッピー・ミュージカルになりえているのだな、と改めて思いました。楽しかったです!
 まあでもホントは、もう何度かリプライズされて終演の頃にはサビを覚えちゃう元気でリズミカルな曲がひとつあって、ラインナップのあとアンコールとしてそれが始まったら客席が自然とスタオベになって、ペンラを販売しているなら座長が「ペンラOKです!」とだけ宣言して、あとは客席全員手拍子足拍子ペンラ振り振り拳突き上げノリノリ合唱…は今はまだ駄目だけど、とにかくフィーバーしておしまい、となるのが美しいですよね。今、そんな歌がない(一応あるんだろうけど私には覚えられなかった)のと、振り指導タイムとかホント要らないと思いました。たいした振りじゃないし振る部分もそんなにないし、かえって振りを気にしてノレないし、何よりここで一端集中力が切れる。それに、作中のパブロ(木内健人)の片言台詞が、言語はおそらくスペイン語訛りとかかなんだろうけど外国人差別表現として今どきどうなんだ、と引っかかったのに、その役を引きずってのことなのかはたまた中の人が本当に日本語ネイティブじゃないのか、ここでも片言のまま振りを説明して笑いを取ろうとするのが本当に気になって全然笑えず、私は楽しくなかったのです。この、片言は嘲笑っていい、笑われることなんだ、恥ずかしい、不完全な外国語は話したくない…みたいになっていくザッツ日本人メンタリティを増長させるの、ホント良くない。こんなんで今後の国際社会を生き抜いていけるわけないです。
 そこが瑕瑾だったのと、混雑緩和のためにも規制退場はまだ続けるべきでは…ってのだけが気になりましたかねー。あ、まぁ様のスターブーツをそのまんま履くきぃちゃんも観たかったけど(笑)さすがにチョッキンした設定なんですねわかります。キンキーだぜ!ってなりました(笑)。ともあれ楽しかったです。いつかかつてのデロリス役者が修道院長をやるのも観たいし、本当に上手い人というならトウコとかきりやんとかだいもんとか、今でもいいけど十年後のきぃちゃんとかのデロリスもまた観たいです。卒業後のまこっちゃんとかね。契約のこととかはよくわかりませんが、それこそ演出家が変わることもあってもいいと思うし、そうやって大事に育てていく作品になるといいのでは、とか思いました。
 クリスマスまでやればいいのに、少し前に終わっちゃうんですね。でも代役スタートだった春風さんも復帰したことですし、引き続きどうかご安全な上演をお祈りしています!!




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする