駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組『今夜、ロマンス劇場で/FULL SWING!!』

2022年02月28日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚大劇場、2022年1月1日13時(初日)、2日11時、25日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、2月26日11時。

 映画監督を夢見る青年・牧野健司(月城かなと)は、古いモノクロ映画『お転婆姫と三獣士』のヒロイン・美雪(海乃美月)に恋をしていた。だがある日、映画館「ロマンス劇場」の館主・本多(光月るう)からフィルムを売ることになったと聞かされる。健司は映画の神様に「ずっと彼女と…」と祈るが…
 脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/手島恭子。2018年の同名邦画を原作にしたミュージカル。キネマ。

 初日雑感はこちら
 というわけで大劇場初日を観たときはややたわいがない話かなと感じ、2回目に観たときはイヤこれもアリかなと思い、3回目に観たときはやや退屈し、東京で4回目を観たときには間が開いたせいもあったか、しみじみしっとり味わいました。
 東京宝塚劇場は客席がリニューアルされて椅子がよりフカフカになり、床の傾斜もさらについたのかな? より観やすくなり、座席数も少しだけ増えたそうですね。また、音がクリアになって、小さい音でも良く聴き分けられるようになり、むやみな大音量が必要なくなって耳に優しくなった気がしました。友会が当ててくれたのは後方でしたがどセンター席で、ショーでは勘違い視線もたくさん来る楽しいお席で堪能しました。ありがたや。
 原作映画はその後も見られていなくて、比較、復習などはできていません。少なくとも予習として直近に見るのはあまりオススメしない、みたいな人が多いようでしたね。そのまんまだからかな? それとも承服しかねる改変があったということかしらん…
 個人的には、じゅりちゃん演じる看護師の(当時はまだ看護婦さん呼びかな)天音(天紫珠李)が、仕事をサボるわ「かわいそうな老人ってほっとけないんだよね」とか言ってのけるわ、なキャラなことにややザラつきを感じました。わりと人としてちょっとアレだと思いません? それこそ原作映画ではどんなニュアンスでしたかねえ…? あと、じゅりちゃんは雨霧と二役をやっているので、ラストシーンにいないのがちょっと残念でした。新公は配役が違って、ちゃんと狭霧とふたりでいたんですよね。その方が正しい気がしたのですが…
 まあでもウェルメイドな宝塚歌劇らしいファンタジー、人情もののラブコメ、みたいに仕上がっていた、良き佳作かと思いました。私は1969年生まれで、東映ではなく(笑)松竹の撮影所がある街に生まれ育ちましたが、私がものごころついたころにはもう街は別に「映画の街」でもなんでもありませんでした。今はむしろ「映画の街」とか施設とか言ったらUSJとかを連想するんでしょうかね…そういうノスタルジーも含めて、ある種の宝塚歌劇らしさを感じる作品でもあったかと思います。「もはや戦後ではない」の高度成長期の物語、というのも今のご時世に観るには心癒やされるものがありますしね…
 大劇場公演は無事に完走し、東京公演も初日が延期されることなく無事に開幕しました。大楽までどうぞご安全に…れんこんは復帰おめでとう! おはねちゃんはまだ戻ってきていないので娘役陣の代役はちょいちょいあって、東京の写真の女はゆーゆでしたね。そら本田さんも触れたくなるでしょうとも、という色香があってよかったです。警官も朝陽くんに戻っておちついて、毎回いいアドリブをしているようで何よりです。

 大劇場新公も観られたので、当時つぶやきまくりましたがここでも一応覚え書き。
 健司はぱる。健司ってフツーのキャラなので意外に難しいのでは、と心配していましたが、ホントいい意味で気負いなくただフツーに立っているようなぱるにある種の座長感を初めて感じて、頼もしかったです。すごく濃く深く凝った芝居をするとか、スターとしての押し出しを強めるとかじゃなくて、また包容力でみんなをくるみまとめるとかでもなくて、でもただ中心に静かにドスンとおちついて立っていて、みんながそれを拠り所にして周りで個々にがんばるような、そんな空気感を作れている気がして、成長したねえ上級生になってきたんだねえともう親戚のおばちゃん状態でうるうるでした。タッパがあるのでお衣装がよりつんつるてんに見えて、清貧の夢だけ食べてる青年、みたいな感じがよく出ていたのもよかったです。
 ヒロインは花妃舞音ちゃん。またベタな漢字を並べただけの芸名みたいだしぶっちゃけ組ファンでも誰?今まで何やってた子??状態だったかと思いますが、これがまあ素晴らしいヒロインっぷりでキタコレスター誕生!感が素晴らしかったです。もちろんお化粧とかまだまだで、ただ素の可愛らしさを出してきているだけだなとか、個性が出ていないなとかは感じましたし、まだ怖いもの知らずなだけの舞台度胸、ただまっすぐやっているだけの技巧のなさも感じました。でもとにかくカワイイ、歌える、台詞が明晰で芝居がちゃんとしている!ということはきちんと認め褒め評価していいと思いました。ヘアスタイルもくらげちゃんまんまでなく変えたところがあったのが研究心を感じさせましたし、足のサイズが違うのか靴がちょいちょい本役と違うのも可愛かったです。というかとにかく正統派の可愛らしさがある娘役なのが素晴らしい! ぶっちゃけ月娘に今いないじゃないですか、じゅりちゃんもゆーゆもおはねも蘭世も白河りりちゃん(お化粧変わりましたかね? ぐっと可愛くなりましたけれども!)も羽音みかちゃんも私は好きですがでもそういうタイプじゃちょっとないじゃん。美海そらちゃんはまだそこまで使われていない印象だし、一乃凛ちゃんも。そしてうたちがいなくなってしまったので…みちるが来たとはいえ…目に寂しい、と思っていたところだったんですよ…! 本公演でももうちょっと使ってやれや、とは思いますが、まあこれからに期待! かわい子ちゃんは大事です!! ぱるがデカいので実寸がよくわかりませんでしたが、小柄っぽくて誰とでも合いそうなところもポイント高し!と思いました。娘役芸をガンガン磨いていってほしいです。
 俊藤さんはぺるしゃでしたが、意外なことに私には精彩を欠いて見えました。そもそもは主演させたれや、と思っていたくらいなのですが、メインどころを張るには意外と台詞が弱いのかな?と感じてしまったんですよね。顔はなんせ美形で強いと思うのですが…東京新公ではっちゃけていることに期待したいと思います。
 その相手役?(笑)萩京子はおはねの代役でりりちゃん。強くてさすがで歌手も兼ねていて、とてもよかったです。
 山中は真弘蓮くんで、上手いんだけどそれだけだとやはり地味なキャラになるんだな、と感じてしまいました。おださんの貫禄と華はやはり異常…
 大蛇丸の七城雅くんも同様だったかなー、あとなんかお化粧が今ひとつな気がしました。お付きは蘭世と『デリシュー』ロケットセンターも鮮やかだった一輝くん、健闘していたと思いましたがタンゴは明らかに蘭世がリードしていてちょっと笑っちゃいました。
 印象的だったのは本多さんの柊木くん、じいやの彩路くんの老け芝居の上手さで、どうして月組ってこう…!と震撼させられました。ばあやの天愛ちゃんもパワフルでよかったです。ディアナさまはじゅりちゃんでさすが綺麗でした。
 成瀬社長が一星くんでなんかイケイケ感が増していたのがおもろかったですし、その娘の塔子のゆーゆが芝居がまた上手くて、本当に舌を巻きました。本役と同じノリでやるとぶりっこになりそうなところを、上手くけなげに見せていて感心しましたねー。あとはるねっこの清水さんのところをやったるおりあが美形でチャラそうでよかったです。全体に大丈夫かなこの映画会社、と思わせられる新公なのがよかった(笑)。
 助監督チームやセブンカラーズはまだまだ個性を発揮するには至らず、仕方ないけどがんばれー!という印象でした。


 ジャズ・オマージュは作・演出/三木章雄。
 全体的にはおちついた、渋めのショーで、それはよかったんですけれど、なんかナゾ場面も多かった印象です。
 まずプロローグあとのありちゃんセンター場面、ありちゃんの役は「虹」だったの…? なんか、雨が降らなくて龍神に触っちゃって怒らせて…みたいなことが「歌劇」では語られていませんでしたっけ…? なんかじゅりちゃんもわざわざ出といてあんだけかーい!って気がしたし、最後はありちゃん以下みんなして龍になったことを表現していたそうですが「…へー……」って感じでした(笑)。あとコレ、ジャズか?
 ありちゃん、星組もお似合いだと思うのでがんばってね。こっちゃんのダンスとは意外とタイプが違うと思うけど、ダンスバトル場面みたいなのもあるといいですね。でもふたりともチエちゃんみたいなことばっかやらされる呪縛からは逃れられるといいね…あとここのノマドたち、それこそいつものメンバーすぎませんでしたかね…
 その次のちなつセンター場面、ジゴロの解釈がおかしくないですかね? なんでジゴロにマネージャーがいてマスコミに追われなければならないの? ビューティーズって何? ファンやグルーピーがいてもジゴロには一銭の得にもならないのでは…? 振付は楽しかったけど。でもここの相手役はみちるでよかったのでは…昔を思い出して元サヤ、ってのはいいけどなんでオチが「ベスト・フレンド」やねん。あとダンスメイト男女がいつメンすぎて、人数や出し方といいもうちょっと起用を考えてほしかったです。
 その次のジャンゴもよくわからなかった…これも「歌劇」では蝶が戦士に故郷の幻を見せたようなことが解説されていませんでしたっけ? なら下町のカフェは幻? でもそこにまた蝶が飛ぶのは何故? 最後に主役カップルだけになるのは何故? ジャンゴは何を追い、マ・シェリー(ここのくらげちゃんは前髪ありバージョンの方が好きでした)は何から彼を取り戻そうとするの? 最後、決まって暗転するから一応拍手するけど、いったい観客は何に拍手させられているのか、今ひとつワケわからなくてスッキリできませんでした…あとカフェの男女がいつメン以下略。
 中詰めのシナトラ・メドレーはお衣装が素敵で良きでした。歌詞もズルいぞ「マイ・ウェイ」!
 そのあとのパリ場面はちょっとおもしろくてよかったです。『ガイズ~』のスカイみたいなストライプのスーツにハットのれいこちゃんモーリスはとても素敵でしたが、ネックレスを運んだヴァンドールはマックスに撃たれるのに、そのネックレスをジャンヌを介してマックスに奪われるモーリスは撃ち返すどころか地団駄踏んで悔しがり、ヤケになってひとり踊って、肩をすくめて去っていくという治安の良さ…ツボりました(笑)。れいこちゃんは決してダンサーではないと思うんだけれど、こういう場面が意外に保つところが良きですよね。内ポケットからネックレスを盗まれるときの表情のエロさがよかったです(笑)。でもここのギャングとファムのいつメン以下略。
 その次からがフィナーレ、という構成なのでしょうか…ややナゾの銀橋渡りとありちゃんの突然のジャズマニア、からのロケット。大階段で娘役ちゃんに囲まれたれいこちゃんが、でも誰とも絡まずひとりさっさと本舞台に降りちゃうのがわりとツボ。端から撫で切りにしていくとかやらないんだ!?という…(笑)そして男役たちに囲まれ、次いで三組デュエダン。それぞれのカップルの空気の違いがよかったですね。
 ますますここからありちゃんが抜けるだなんて…!という気分になりましたが、さて『ギャツビー』はどうなりますかねえ…役が少ないしもう観た気もして、個人的にはややテンションが上がらないのですが。私は『ブエノスアイレス~』はどうも初演も再演も生では観ていないようなので(記憶も記録もない)楽しみではあるのですが、話は別におもしろくないとも聞くし…不安。今は先行画像もポスターも素晴らしいアンフィのコンサートを、怖いけど期待して待とうと思います…
 チケットがないようですが、映画関係者が持っていったりしているのかしらん…新たなお客が増えそうならそれはそれで良いことですね。大楽までどうぞご安全に! お祈りしています!!








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