『ロマンスウィング！』初日雑感

　あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願いいたします。
　さて、『ダル湖』マイ初日に雷に打たれて幾星霜（イヤそんなに経ってない（笑））、れいこちゃんの本公演お披露目初日が観たすぎて、『シェイクスピアイズ』『グラホセル』『ポー』のときに３年連続でやらかして以来の、４年ぶりのムラ年越しをしてきました。大晦日の昼にさっと東京から移動して（途中は確かにものすごい雪景色でしたが、予定より１０分遅れてくらいで新大阪駅に着きました）ホテルにチェックインし、元日１３時の初日と２日目１１時を観劇して帰京しました。以下、簡単な所感です。ただしお芝居に関しては重大な演出上のネタバレを書いており、できれば映画をご存じの方でもそこはまずはまっさらで舞台を観ていただきたいので、ご留意くださいませ。

　映画『今夜、ロマンス劇場で』は、確か一昨年にテレビで放送していたのを見た記憶があります。でもその後この舞台化が発表されても、細かいところが全然覚え出せないくらいの記憶でした。綾瀬はるかのお姫様が可愛かったよねー、程度…坂口健太郎も「俺たちの菅波」以前だったわけですしね。まあ、カワイイ小品、というような印象だったのでしょう。でも、なーこたんは上手くやるだろうし、れいこちゃんもくらげちゃんも上手くハマってくるだろうと、心配はしていませんでした。
　で…その期待どおり、非常に手堅く上手く宝塚歌劇化しているな、と思いました。そういうところ、なーこたんは本当にそつがないと思うので。ただ、宝塚歌劇化するというのはこういうことだよね、とちょっとしたファンなら思いつくそのまんまだったな、という気はしました。意外で新鮮な驚き、そうキタか！というときめきみたいなものはなかった、ということです。再三言いますが、よくできてはいるんですけれどね。
　また、ハンサム・ガイのちなつ、くらげ美雪を狙う隣国の王子・大蛇丸のありちゃん、助監督仲間のおだちんもそれぞれいい感じにソロや場面をもらっていたりいい感じにれいこ健司に絡みはするんだけれど、それぞれ単なるワンポイント・リリーフみたいな存在にすぎないんですよね。複数のストーリーが平行して走る、みたいな構成では全然なくて、軸はあくまで健司と美雪のラブストーリーというごくシンプルな作り。そしてそのラブはちょっと概念チックというか、ファンタジーですよね。美雪が生身の人間じゃないから、というのもあるけれど、彼女が現実に現れる以前から彼女に恋しているような健司も冷静に考えるとちょっとアレな男ですもんね（私はフツーに「わーキモ」とちょっと思った…彼は美雪役の女優に恋しているのではなくて、あくまで役としての美雪に恋しているので、今で言うとアニメキャラに恋してるオタク青年ってことですもんね。イヤそれが悪いという気はさらさらないのですが…）。もちろん純愛って素晴らしいとは思うんですけれど、でもその後下手したら５０年とかこのままいって、触れて消えて死んで（雑）、脚本が完成したからその作品の世界で再会できた…と説明するとすればそういうことでそれはハッピーエンドでいいんですけど、やっぱその５０年間何もないってのがまず無理あるじゃん？とか私は考えないではいられないのですよ。イヤ何もなかったわけしゃないのかもしれないけどさ…私はるうちゃん本多さんの方がまだ理解できる気がしたんですよね。彼は若いころ相手を抱きしめて失っているわけですよね、もちろんこちらもその後５０年何もなくすごしてきたのかもしれないけれど…うぅーむ。
　なのでウェルメイドと言えば聞こえはいいけれど、ちょっとたわいのない、シンプルすぎるお話だったかもね…とは感じたのでした。直前が『川霧』であり『ダル湖』であり『桜嵐記』だっただけに、ね…もちろんそういう作品のあとだからこそライトなものもいい、お正月らしく万人が気軽に観られて楽しくていい、って考え方もあるので、これはもう好みの問題かなと思います。実際、私もわかってじっくり観た２日目は初日より席が良かったこともあって入り込めて観られて、これはこれで悪くはないかな、とは思いました。今後、小芝居が増えていろいろ密になっていくのでしょうし、組ファンは楽しく通うのかなとも思います。でもまあ私は、もっと濃い人間ドラマの物語の方が好みだし、この公演は東京はもうそんなにはいいかな、と思っちゃっただけです、ハイ。
　あ、でもラストの舞踏会、プロローグの繰り返しなんだけど、着色具合（笑）がわかっていても素晴らしいと感動しましたし、美雪のドレスが月組カラーの黄色になったのを見たときにはちょっと泣いちゃいました。チョロくてすんません…
　あとラスト前のカップル場面がすごくよかった。このアイディアは秀逸だと思いました。あとぺるしゃの黒縁メガネ、ごちそうさまでした（笑）。
　よかったのは「写真の女」おはねちゃんかな。まあ私が彼女を好きってのもあるんだけど、短い出番でも印象的でした。メイクが上手くなってどんどん可愛くなっているのも嬉しい。あとありちゃん大蛇丸の従者をやっていたぱる。これまた私が好きなんで目が行くってのもありますけど、『ダル湖』でのある種似たような役まわりより断然上手くなっていたと思うし、なんせ楽しそうにやってるなと思いました。あとは鳩三郎だな、アレは卑怯だよな（笑）。
　あ、もちろんちなつありちゃんおだちんみちるとも手堅くちゃんとしていました。でもなー、全体に役不足ですよねやっぱり…役の数じゃなくて情報量というか、芝居の密度、強度としてね。なっちゃんもさちかもぐっさんもヤスもるねっこもはーちゃんもぎりぎりもれんこんも、もっとなんでもできるじゃん。芝居の月組がやるだけに、この薄さは余計にもったいなく感じました。結局のところ原作が「決して大ヒットした映画ではありません」というのも、そのあたりに原因があるのでは…と私は思うのでした。

　ジャズ・オマージュ『ＦＵＬＬ　ＳＷＩＮＧ！』はいいミキティーだったかと思います。ひと頃のミキティーは昔の自作の焼き直しばかりというか、歌もダンスも場面の構成も目新しさが全然なくてなんだかなーという印象だったのですが、登板の間が空いてちょっとエンジンを掛け直したのか、やったるで！これでもか！！感がありました（笑）。
　ただ、スターの使い方はかなり凡庸。あとＢほどじゃないけど舞台に人をたくさん出すタイプで、これだと下級生の識別にはなかなか至らなくてつらいなーと感じました。娘役ちゃんたちも、もっと小分けにして出してほしいんですよね…そして働き盛りの世代と言えばそれまでなんだけれど、ぱるとかぺるしゃがほとんどの場面に出ていたんじゃない？ってくらいに出ていましたね。でも本来ロケットボーイってもう彼らの役目だと思いますよ…
　トレンチコートでスタートと聞いてはいたけどなんだその金ピカ！？から始まって、ありちゃんにはただ踊らせとけばええやろって思ってるんじゃなかろうな？って場面、ちょっと芝居のポジションと似ちゃってないか？ってちなつの場面（ここの相手役はみちるじゃダメだったんだろうか…イヤはーちゃん美しいんですけどね、上級生娘役格あるべしって仕上がり具合なんですけどね）、れいこの軍服はごちそうさまでしたが蝶だの雲だのはええんかいなってな場面（プログラムにあった蝶役は飛んだんですかね？）、そしてシナトラ・メドレーの中詰めはお衣装の色目が素敵でしたがこれってメドレーか？とはひっかかりました。次のパリの場面はこの関係性でまた人が死なないとはホント治安のいい…（笑）と感心し、何故かもう一回銀橋歌い継ぎ場面があり、ありちゃんのロケットボーイからのにゃんこが尻尾を振り回すロケット、ラテンのフィナーレまで、わりと盛りだくさん感のあるショーだったと思います。
　デュエダンが３組タイプで、れいこくらげでしっとり優雅に…ってのがなかったのは残念だったかな。あと、ここの娘役のドレスは半身が白でもよかったかもしれません。黒はちょっと重かった気がしたなー。
　エトワールがりりちゃんとおはねちゃんを連れたおだちんってのもちょっと謎でした。私はエトワールはちゃんと歌姫を立ててほしい派なので。あとは学年の問題もあるけど、３番手のありちゃんが肩ショール羽根なんだなー、とかね…ちなつは博多座に続いてしっかり２番手羽根を背負い、ますますマイティーなんだったんねんみたいになりました。
　れいこちゃんの背負い羽根は雉羽根がみっちりで、その奥に黄色いフワフワ部分もあってナイアガラは白いので、お辞儀すると卵サンドか目玉焼きに見えてとてもチャーミングでした。おでこに汗はかいてたけど滝汗ではなかったので、体力的にも問題ないんじゃないかな。初日のカテコはわりとフツーに締まってしまってちょっと残念でしたが（笑）、まあ別に笑いを期待しているわけではないしナチュラルに楽しそうにしていて、またほっとしている感じもあったので、よかったねえぇと思いました。ただハット登場ばかりだったせいもあって拍手を入れるタイミングが全体に微妙だったので、会の人がもっとバンバン切ってあげればいいのにな、と思いました。あと手拍子はジャズだけに裏打ちをがんばりたいところだけど、これは微妙かもね…特にバレードは無理かなという気がしました。まあ月担は訓練されているからどうにか揃えてくるのかもしれませんが…どうかがかばってくださいませ。


　４日には花組を観ます。やがて雪組さんが始まりますね。あとは今月はヴァイオリン・デュオとか『ミネオラ・ツインズ』、『イントゥザヴッズ』『ブルーレイン』などが控えています。今年も楽しい出会いに恵まれますように！　みなさまにもどうぞ幸せ多き一年となることをお祈りしています。