映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年)

2023-02-11 | 【し】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv78914/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。
 
 ニューヨーク・タイムズの記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は、ハリウッドに君臨する映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶ性的暴行について調査を開始する。

 取材を進める中、ワインスタインが過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明。さらに、被害にあった女性たちはそのほとんどが示談を受け入れており、証言すると訴えられるという恐怖や、当時のトラウマによって声をあげられずにいた……。

 問題の本質は業界の隠蔽構造だと知ったミーガンとジョディは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。

 そして、サバイバーたちによって遂に沈黙が破られ、ワインスタインによる悪質な事件の全貌と真実が明らかになっていく……。

=====ここまで。


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 スルーしようと思っていたけど、巷で評判が良いのでやっぱり見に行きました。


◆ノミネートゼロは妥当なのか?

 ご存じ、#MeToo運動が広がるきっかけとなった、アメリカ映画界セクハラ事件を世に問うた記者たちの悪戦苦闘を描いた映画。少々実話モノに食傷気味でもあり、ゾーイ・カザンがちょっと苦手なこともあって、スルーするつもりだった。

 何で見ようと思ったかというと、Twitterで賞賛のツイートがチラホラ流れて来ていたのと、本作が今度のアカデミー賞の賞レースにかすりもしなかったことで、一部フェミの間で批判が上がっていたから。

 そーか。じゃあ、どんな映画かこの目で見ておこう、という気になった次第。

 で、結論から言うと、面白いし真面目に作られた良い映画だけど、まあ、ノミネートゼロなのはそれほど不思議じゃないな、ってこと。

 何でどの部門にもノミネートなしだったのか、真相は分かるはずもないけど、私が感じたのは、既視感が強いということ。この手の“ヤバいネタ”を世に出すためのメディアの裏側を描く映画では、古くは『大統領の陰謀』(1976)とか、最近では『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)とかが既にオスカーをゲットしているし、フェミ系映画としては割と斬新な切り口の『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)がオスカーをゲットしている。別に、フェミへの眼差しに欠けるから、フェミ映画として本作を無視した、ってことでもないように感じる。

 本作が賞レースに乗るには、それらの既出作品を超える何かがなければならないという、かなり高いハードルが最初からあったともいえる。


◆事実を確実にニュース化するということ。

 こういう、メディアの裏を描いた作品を見ていつも思うのは、やっぱし、事実を公にする、報道するためには、多大なコストがかかるってこと。

 なぜなら、あるネタが事実かどうか、ウラをとるのは、人間がするしかないから。近未来ではAIができるようになるのかも知れないけどさ。やはり、人が動く=金がかかる、なわけよ、ぶっちゃけ。その人が、大手メディアの記者だろうが、フリーのライターだろうが、動けば、普通に交通費や人件費がかかる。場合によっては、飲食費や宿泊費も余計にかかる。手間もかかるが、その手間にも金がかかっている。

 ネットのタダ記事に馴らされている現代人は、金を払って情報を買うことの意義を忘れがちだが、事実を、しかも重大で、ヤバければヤバイ事実ほど、それをニュース化するには、膨大なコストがかかるのだ。逆に言えば、タダで出てくる情報なんてのはゴミみたいなもんだということ。所詮“安かろう悪かろう”なんである、情報も。

 もちろん、金だけじゃない。こっちの方がもっと重要だろうが、取材力・調査力が必要不可欠だ。この能力は、一朝一夕に培えるものではない。そこに既にもの凄い時間と費用がかかっているわけだが、この能力なくして、重大な不都合な事実を暴くことなど不可能である。

 それが証拠に、ワインスタインは多大なコストを掛けて情報をコントロールしていたではないか。そこまでして、己の性欲・支配欲を満たそうとする思考回路は理解不能だが、世に出したくない、不都合なネタほど、手段を選ばず隠蔽されている。だから、それを掘り起こそうとすれば、財力・知力・胆力が必要なのである。

 本作で主役の2人の記者ミーガンとジョディは、そういう意味ではまだ若干経験値が足りないのだが、そこを絶妙にカバーして彼女らを導くのがパトリシア・クラークソン演ずる上司レベッカ・コルベットである。彼女の経歴は分からないが、恐らく彼女も、男社会だったニューヨーク・タイムズで数々の修羅場をくぐって来たツワモノだろう。この方が実在したのかどうか(多分実在だろう)分からないが、こういう人がいるというのは、若い2人の記者にとってどれほど心強かったろうと思う。

 真相に迫る過程はやはりスリリングであり、ワインスタインは声と後ろ姿でしか出て来ないが、直接2人が対峙する終盤のシーンは、本作の白眉である。彼女たちは、レベッカたちに鍛えられて、ワインスタインらを前に堂々としたもんだった。エラい!!

 多大なコストをかけて、やっとの思いで記事化されたのは良いが、問題はそれを出すタイミング。何であれ、重大スクープは出すタイミングが命取りになりかねない。ライバル紙の動きも気になるし。本作では、ネット社会での記事の出し方も考えさせられるラストシーンとなっている。その一瞬は、呆気ないほどである。

 ただ、驚いたのは、ジョディが被害者の一人に会いに行くシーンで、本人が留守だったためにその夫と話をするんだが、被害に遭ったことを夫にベラベラ話しちゃうんだよね。これ、マズいんじゃないの??とビックリ。だって、夫に秘密にしていたかもしれないし(実際、夫は知らない様子だったし)、あまりにも不用意だと思うのだが。その後、被害者本人と話すシーンが出て来て、この件は何事もなかったかのようにスルーだったのが、ますます??だった。


◆怖いんだよ!!

 本作は、実際にあった事件を映画化しているということで、主要登場人物は実名である。こういうところは、正直、本当に羨ましい。邦画界でこれを実現させられる骨のある映画会社はゼロだろう。……というか、アメリカ映画では基本実名なんだが。邦画界も、もっと自国の観客を信頼してはどうか。どこを向いて映画を作っているんだろうか。

 ワインスタインのやってきたことは、セクハラなんてもんじゃなく、立派な性犯罪である。なのに、長年黙認されてきたってんだから、この手の問題の闇は深い。とにかく、セクハラもそうだが性犯罪の場合、加害者よりも被害者が責められるという、特異な社会構造がある。加害者が100%悪いのに、なぜか被害者に非があると言われる。お前が誘ったんだろ、隙があったんじゃねーの、等々。

 しかも、本作では、ワインスタインはその財力にモノを言わせて、金で相手の口を封じ、被害者の弁護士も巨額の成功報酬に目がくらんで、刑事告発をさせなかったというのだから、もう、被害者にとっては地獄である。まさに“加害者天国”。メディアも法曹界も映画界も、こぞって天国の演出に加担していたってことだわね。

 でもこれ、アメリカに限らず万国共通だと思うわ。当然、日本もね。で、被害者は沈黙させられる。

 印象的だったのは、被害者が一様に、被害に遭遇した時の心情を「怖かった」と言い、その後、被害について口にすることも「怖かった」と、常に恐怖感を口にしていたこと。もうね、これは、もの凄くよく分かる。私もセクハラレベルの被害なら、かつていくつも遭遇しているので。ましてや、犯罪ともなれば、、、。

 取材する2人も(原作読んでいないので分からないが)、実際はもっと緊迫した局面が多々あったに違いない。自らの意志で調べているとはいえ、恐怖感は相当なもんだったろう。

 ネットの感想で、男性によるものをいくつか見たが、やはり『SNS-少女たちの10日間-』(2020)でも見かけたのと同様、「こんなひどいことが実際あったなんて!」的なことを書いている人がいた。確かに酷いけど、女の私から見れば極めてリアルな話でしかなかった。中には、「大好きな映画の世界でこんなことが、、、」というのもあり、オメデタ過ぎて笑ってしまった。この問題での男女の認識の差って、永遠に埋まらないのかも。

 良かったのは、あんまし“女だから”的な要素が強調されていなかったことかな。記者2人は子持ちのワーキングマザーだが、仕事と子育ての両立!!みたいな切り口はほぼなく、ミーガンが若干産後鬱っぽくなっているくらいで、日常としての描写に徹している。

 ミーガンを演じたキャリー・マリガン、あんなにハスキーで低い声だったかしらん?? なんか、出産後で育児に疲れている感じがよく出ていた。

 本作は、ブラピが出資しているのね(アンジーにDVで訴えられていたのは却下されたのか?)。グウィネス・パルトロウも実名で声だけの出演をしている。ワインスタインの制作した映画をみんシネで検索したら、ものすごい数で、しかも、DDLやHBCの出演作も複数あり、ヴァルタン主演の「マンイーター」もだった!! もしや、DDLやヴァルタンも傍観者だったのではないか、、、と不安になる。もしそうだったら、かなりガックシだなぁ、、、。

 

 

 

 

 

 


相変わらずダサい邦題(何とかならんのか、、、)

 

 

 

 

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2 コメント

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女もつらいの (松たけ子)
2023-02-12 21:30:20
すねこすりさん、こんばんは!
確かにひどい邦題ですね~。タイトルだけで観る気が失せるほどに。
ワイン何とか氏、ほんと気持ち悪い男ですね!こんな凶悪な色魔がふんぞり返ってヤリたい放題してたなんて、信じられない異常事態ですね。いつまで経っても女性には苦難と受難に満ちた世界、そんな現実を描く映画はあまり観たくない…と避けてしまう私のような意識低い人間もまた、ワイン何とか氏同様に女性の地位向上を阻んでいるのでしょうか。女優さんたちの声高な映画やドラマでの性的シーンNG!な風潮も、何だか寂しいです。
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こわれている男 (すねこすり)
2023-02-13 22:29:52
たけ子さん、こんばんは~☆
邦題がヒドい映画はいっぱいありますが、これもまあまあヒドいですね(^^;
フェミ映画(だけでなく小説やドラマも)は、ホントに玉石混交で、耐性のある私でもウンザリする作品は結構あります(*_*)
ただ、過去に声高な人々がいたおかげで、今、我々が当たり前に享受している権利はたくさんあって、大人しく主張していても黙殺されていただけでしょうね。
声高な人々が時には命懸けでゲットした権利に、後世の人間は言ってみればタダ乗りしているわけで、、、。
“タダ”は、やっぱりその価値の有難みを感じにくいですが、今は結構ヤバい時代になっていると肌感覚ですが実感しています。
むやみに性的シーンNGと言う俳優さんたちは一部でしょう。
ベルトルッチがラストタンゴでシュナイダーにやらかしたみたいなことは明らかにNGで、そういうのが許された時代は終わったということでは。
脱ぎ惜しみする女優は私も嫌いなので、きちんとご本人が納得した上で魅力的なシーンを演じてもらえれば、見る方も嬉しいですよね。
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