映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

フランス映画と女たち @アテネ・フランセ文化センター

2023-11-05 | 映画雑感

 

 

 松たけ子さんに以前教えていただいた「フランス映画と女たち」という企画。ソフト化どころか、そもそも国内上映自体が初めて、というレアもの3本が1日限りで上映されるとのことで、しかも、あのイザベル・ユペールとロミー・シュナイダー主演となれば、馳せ参じるしかないでしょう、、、。

 というわけで、両日3本とも見に行ってまいりました。アテネ・フランセ行ったのなんて、一体何年振りやら。前はよく通っているのですが、、、。130名ほど入れる会場は、どの作品もほぼ満席。そらそうですね、こんな機会、そうそうありません。

 なお、3本とも作品情報は、仏版or英版wikiです。

 

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◆レースを編む女(1977年)

作品情報⇒https://fr.wikipedia.org/wiki/La_Dentelli%C3%A8re_(film,_1977)


 《あらすじ》 美容師見習のベアトリス、愛称“ポム”(イザベル・ユペール)は、失恋の憂さ晴らしをしたい美容師の先輩マリレーヌに付き合って、リゾート地ノルマンディのビーチにやってくる。が、奔放なマリレーヌは、ポムをほったらかして早速男遊びに夢中、、、。一人、リゾート地をさまようポムは、大学生の青年フランソワ(イヴ・ベネイトン)と知り合い、親しくなる。

 パリに戻った2人は一緒に暮らし始める。ラブラブだったポムとフランソワ、寝食を共にし、フランソワの友人たちと交流するうち、次第にフランソワはポムの尊厳を微妙に、ポムさえ気づかないほどにごく薄く、しかし確実に削る発言が増えていく。

 そしてついに、2人は破局し、ポムは実家に帰って行くのだが、、、。

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 ユペール24歳の頃の作品。24歳よりも、もっと少女っぽく見えるユペールは、おぼこ娘ポム役にハマっていた。

 どうも、このフランソワという男がいけ好かない。こういう男(ヒョロっとした頭でっかちの勘違い野郎)は、学生時代に結構身近にチラホラいた気がするが、私の知る範囲では、例外なく“モテない君”だった。そらそーでしょ。イヤミだもんね。

 でも、ポムにとってはそういうところが魅力的に見えたんだろうなぁ、最初は。で、若くて無垢なポムにマウントをとるという器の小ささ全開になる辺りが、嗚呼、、、やっぱり、、、、、な展開であった。ポムが言い返さないキャラだと分かってやっているところが、いかにもである。明らかに自分よりも未熟な人間を相手に優越感に浸るって、どんだけちっちぇんだよ、フランソワ君。

 2人が道路を渡るシーンが印象的だった。さっさと車の間を縫って渡ってしまうフランソワ、車に阻まれなかなか渡れないポム、そんなポムを見るフランソワ、、、。もうこのシーンだけで、2人の先行きが分かっちゃう。

 破局後、フランソワは、病んだポムを見舞いに行くのも、一人じゃいけないという情けなさ。若い男には荷が重いってか。あのポムに対する偉そうな物言いは何だったのさ。

 病んだ後のポムが、どうにも痛々しい。パッと見は割と普通に見えるが、一つ一つの挙動は明らかに病んでいる。その目線や話し方、動き、、、何かオカシイのだ。そして、フランソワが帰った後のラストシーン。ポムのいる部屋の壁には……。衝撃的なラストシーンである。

 ポムに言ってあげたい。世の中にはもっとイイ男はいっぱいいるんだよ! フランソワなんてクソ野郎だよ! ……とね。
 
 そんなポムを演じた若きユペール。本作が彼女の女優人生を決定づけたというのも納得。

 

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◆ヴィオレット・ノジエール(1978年)

作品情報⇒https://fr.wikipedia.org/wiki/Violette_Nozi%C3%A8re_(film)


 《あらすじ》 18歳のヴィオレット(ユペール)は、監視の厳しい両親との生活に息苦しさを感じ、街に出ると派手な格好で売春したり、カツアゲみたいなことをしたりして、帰宅する際には着替えて化粧も落とし従順な娘を演じていた。

 そんなヴィオレットに彼氏ができると、いよいよヴィオレットは両親の存在が邪魔になる。お金にも困っていたことから、両親を殺して遺産を持ち出そうと考えるのだが、、、。

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 本作のヒロイン・ヴィオレットは、上記の「レースを編む女」で演じたポムの裏キャラとでも言おうか、本作と「レースを編む女」はコインの裏表かも知れぬ。

 あんな狭いアパートで、あんな過干渉な母親がいて、おまけにキモい継父までいれば、そら若い娘にしてみればウザくてしょーがないでしょうよ。実話ベースらしいが、親殺しって、実は珍しくないからなぁ。私も親(母親)に殺意湧いたことあるもんね。実行しなかっただけで、、、。

 その、実行に移しちゃうところが、まあマズいのだが、ケースによっては同情したくなるものもあるわけで。ヴィオレットはどうなのか、、、、というと、これは正直なところ同情できないケースかな。別に殺さなくても何とか逃げられたんじゃないか、と思うので。あまりにも短絡的。……というか、ヴィオレットはちょっとお頭が弱すぎるので、あらあら、、、、という感じでしかない。

 一方の両親側はもっと同情できないわね。娘の寝室と極薄な壁一枚しか隔てていないのに大声上げてセックスするとか、親として、というより、人としてオカシイ。

 おまけに、殺したはずの両親、母親だけ生き残るってのが、不謹慎だけど苦笑してしまった。あの母親は殺しても死なないタイプだろ、、、と思って見ていたら案の定過ぎて。きっと、私も実行していても、あの母親は死ななかったと思うわ。そういう種類の人っている気がする。

 男で人生狂っちゃう女の話って、見ていてストレス溜まるんだよね。「レースを編む女」のポムは自分の内面が壊れて行き、ヴィオレットは外へと向かう。ポムはまだフランソワのことが好きだったんだろうな~、可哀相だな、、、と思うけれど、ヴィオレットは相手の男のことを好きなのかどうかも怪しい。現状から抜け出すため掴んだ藁が、藁以下のババだった、、、って感じだよね。

 クロード・シャブロル監督による殺人映画では「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」の方が好きかな。ユペールのヤバさも、「沈黙の~」の方がぶっ飛んでて面白かった。本作のヴィオレットは、家庭環境や親の質の悪さには同情するけど、いかんせん、彼女自身の性質が悪過ぎるので、ユペールのぶっ飛び振りも面白さは半減といったところ。

 

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◆盗むひと(1966年)

作品情報⇒https://en.wikipedia.org/wiki/La_Voleuse


 《あらすじ》 ベルリンに暮らすジュリア(ロミー・シュナイダー)は、夫ヴェルナー(ミシェル・ピコリ)に、自分には19歳のときに産んで生き別れた6歳になる息子がいることを告白する。2人の間に子はなく、今後も子を持てる望みがないことから、ジュリアは、6歳になるその息子を引き取って育てたいと言う。

 息子の養父母を探し当てて、子どもを引き取りたいと申し出るが、当然養父母に拒絶される。ジュリアはストーカーまがいのことをして、ある日、その男児を半ば誘拐同然で連れてきてしまう。ポーランド移民である養父母は正式な手続きを経て男児を養子としておらず、ジュリアは自分に男児を育てる法的な権利があると確信しているのである。

 絶望した養父は、勤務先の工場の煙突に登り、男児を返さないなら、明日の午前6時にここから飛び降りると言って、メディアに訴える。国中の騒ぎとなり、ジュリアが攻撃の的となる。男が飛び降りるという時刻が迫る中、男児を返すようにジュリアを説得するヴェルナーだが、、、。

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 3本の中で、一番精神的に来る映画。これはキツい。

 オープニング、BGMが流れる中、何やらロミーが一人で喋っている(音声はない)。そのロミーの表情から、何か切羽詰まった感じ、良くない感じ、追い詰められている感じが伝わって来る。もう、いきなり不穏である。このシーンは、ジュリアが、実は息子がいるということをヴェルナーに話していることがオープニングの後に分かる。

 ロミー演ずるジュリアが男児を取り返そうとする一連の行動は、ほとんどストーカーで、犯罪に近く、狂気の沙汰である。ハッキリ言って怖い。ロミーがまた、何というか、素でヤバそうな感じが伝わってくるのが、さらに怖い。養父母の家に押し掛けて、何度も何度も息子を渡せと声を張り上げたりドア(窓だったかな)を叩いたりする姿は、もう狂っているとしか言いようがない。

 余談だが、ロミーの年表を見ると、本作を撮影していた頃が、実生活でも息子さんの出産前後だったのではないか。作中の彼女は、狂気だが美しく、品があり、それだけに怖かった。

 男児を誘拐してきてからのジュリアは、一生懸命世話をするのだが、男児も決してジュリアに拒絶的ではないけれど、どうも打ち解けない(アタリマエだ)。でもジュリアは、息子を養父母に返す気など全くない。その一途さというか、周りの見えなさ、、、もう見ていてツラい。

 養父が煙突に登ってしまってからは、一斉に、子を捨てた母親として世間のバッシングを浴びるジュリア。しかし、彼女はめげない所がスゴい。私だったら耐えられない、、、というか、あんな風に男児をさらってくることがそもそも出来ないが、、、。ここでも、世間は母親に厳しかった。子を育てられなかった事実について母親にだけ責めを負わせる。父親は存在自体が問われない、透明人間みたいなもんである。子は男がいないと出来ないんですけど?

 ロミーの迫真の演技がグサグサと胸に刺さる。徹頭徹尾利己的に見えるジュリアだが、あれほど強固だった彼女の意志も、命がけの養父の脅迫の前に折れる。説得したヴェルナーとジュリア夫婦の今後は、、、、というエンディングで、不穏に始まり不穏に終わる。

 脚本をデュラスが手掛けており、デュラスらしいのかどうか、私はデュラス作品をほとんど読んでいないので分からないが、とにかく終始ヒリヒリする作品であった。今回が本邦初上映とのことだが、ロミー特集とかで上映してほしいと思った次第。もう一度見たいわ。

 

 

 

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2 コメント

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セーター編みたい (松たけ子)
2023-11-06 00:18:42
すねこすりさん、こんばんは!
Ohh, la la!待ってました!フランス映画と女たちのレビュウ!ご堪能されたようで、重畳と存じまする(^^♪
いいなあ~。私も観に行きたかったわ。お江戸にお住まいの映画ファンの方々が、ほんと羨ましいです。レースを編む女もヴィオレット・ノジエールも、フランス映画ならではの佳作ですよね~。どっちも男たちがろくでもなくて、そんな奴らに人生狂わされるヒロインに共感も好感も抱けないけど、ありきたりなだめんず女になってなかったのは、やはり稀有な女優イザベル・ユペールの個性と魅力のなせるわざでしょうか。ロミーの作品もキツそうだけど面白そう。観たいわ~。
こういう映画祭、もっと開催してほしいですね!日本未公開なままの埋もれた佳作を発掘してほしい。個人的にフランス大女優映画祭したくなってきました(^^♪
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寒さこらえて編んでます。 (すねこすり)
2023-11-06 22:22:45
たけ子さん、こんばんは☆
見てから1か月も経ってしまい、、、(-_-;)
1回限り、1日限定って、なかなか緊張感ありましたわ~。遅刻したら終わりですもん、、、。
ユペールのその後の凄まじいキャリアを決定づけた作品を見ることが出来て感激でした。
たけ子さんのおかげです。感謝!!
丸っこいユペールが可愛かったです(*^-^*)
ロミーのは、彼女自身のその後を知っているからか、どうもそれに引っ張られて鑑賞してしまいました。
本邦初公開って、、、何で公開されなかったの?って感じです。
ユペールの新作もなかなかシビアでヘヴィそうですが、近々見に行く予定です♪
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