映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

メモリーズ・オブ・サマー(2016年)

2019-06-11 | 【め】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv67651/

 

以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 1970年代末のポーランドの小さな田舎町、夏。

 12歳の少年ピョトレックは母親のヴィシャとはじまったばかりの夏休みを過ごしていた。父イェジは外国へ出稼ぎ中だが、母と息子は、石切場の池で泳ぎまわり、家ではチェスをしたり、ときにはダンスをしたりする。ふたりの間には強い絆があり、ピョトレックは楽しく夏休みを過ごしていた。だがやがてヴィシャは毎晩のように家をあけはじめる。ピョトレックは、おしゃれをし、うきうきとした母の様子に、不安な何かを感じ始める。

 団地に、都会からマイカという少女がやって来る。母に連れられ、おばあちゃんの家へ遊びに来たマイカは、田舎町が気に入らないようだ。仏頂面のマイカに、ピョトレックは一目で惹かれる。やがてふたりは徐々に仲良くなり、郊外へ一緒に出かけるようになる。

 母は相変わらず出かけてばかりいる。月に一度、ふたりのもとに、外国で働いている父イェジから電話がかかってくる。喜んで話をするふたりだが、「ママに何か変わったことはないか?」という父の質問に、ピョトレックは沈黙する。その様子を見ていた母は、息子に「なぜあんな真似を」と怒りをぶつける。その日から、ふたりの間には緊迫した空気が流れ始める。そんななか、大好きな父が出稼ぎから帰って来る……。

=====ここまで。

 

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   数年前から続くマイ・ブーム、ポーランド。昨年2018年は、ポーランド独立回復100周年だった。プロイセン、ロシア、オーストリアによる三国分割が終わってから、ちょうど1世紀。そして今年は、日本とポーランドの国交樹立100周年だそうで。今月末には『COLD WAR』も公開されるし、本作もポーランド映画界期待の若手監督の作品だとか。ネットでチラッと評を見て、ちょっと面白そうかなと思って見に行って参りました。

 

◆一見静かな映画だけど……

 こういう雰囲気の映画は、かなり好きな方。あんまりセリフで話を進めないで、とにかく映像での描写に徹する作風が良いなぁ、と思った。

 父親不在で、母と息子の2人の生活。とにかく、序盤の2人は、とても仲が良い。12歳といえば、日本じゃ小学6年生か中学1年生辺りで、母親と一緒に(しかも抱きついて)寝ているってのは、、、まぁそんなもんかね。

 余談だけど、私の中学1年生の担任は30歳くらいの女性だったんだけど、パッと見が冷たい感じの厳しそうな先生で、入学式の後のHRで保護者たちを前に話した内容がインパクト大で、今でも鮮明に覚えている。

「中学生になったのだから、親御さんにもそれなりの対応をお願いしたい。例えば、天気が急に変わって雨が降り出した場合、よく親が傘を持ってきて下駄箱に掛けていったりするが、そういう行為は小学生までで十分ではないか。また、(異性の)子と一緒に風呂に入るのを得意げに親が語るのを見ることもあるが、1年生といえども中学生はもう大人の一歩手前である。異性の親と一緒に風呂に入るのはいかがなものか。差し出がましいと思われるかも知れないが、親と子の関係性についてはよくよく弁えていただきたい」

 ……みたいな話だった。まだまだガキンチョだった私には、かなり脳天直撃の内容だったが、半面、この先生は信頼できる、と何となく確信したのも覚えている。実際は、冷たいというより常にピリッとしていて、厳しいことも結構言われたが、つい数年前まで年賀状のやりとりをしていたくらい。返信が来なくなって、こちらから出すのも迷惑かと思い出さなくなったが、良い先生だったと思う。

 と、そんな原体験に近いものがあるので、小学6年生か中学1年生で、母親と親密すぎる関係ってのは、ちょっと??な気もする。が、まあ、欧米ではそれほど珍しいことでもないのかな。私の同級生は、息子が4年生までは一緒に寝ていた、と言っていた。それが2年延びたくらいのことなのか。日本でも今は普通なのかもね、よく知らんが。

 そもそも男はイイ歳になっても程度の差はあれ大抵マザコンだから、ピョトレックがお母さん大好きなのは12歳なら当然といえば当然だ。ピョトレックも実に嬉しそうなのよね、お母さんと一緒にいる時間が。なんか微笑ましいのです。

 でも、2人で泳ぎに行った帰り、自転車に乗って汽車と競争しているときに、ピョトレックは気付いてしまうのね、お母さんが泣きながら自転車を猛然とこいでいることに。「どうして泣いているの?」と、ピョトレックは聞けない。このシーンの感じがとても切ない。

 そして、しばらくするとお母さんはめかし込んで出掛けるようになる。直截的な描写は一切ないが、まぁ、男が出来たんだな、、、と見ている者は思うでしょう。そこから、ピョトレックの表情がだんだん暗く、、、というか、何となく憂を帯びてくる。ここでもピョトレックは、「行っちゃうの?」とは言っても「行かないで」となかなか言えない。挙句「行っちゃえ!!」なんて心にもない言葉を叫んでしまう。

 おまけに、、、このお母さんが夜ごと歩いて行く道は、かなり暗くて人通りもほとんどない、言ってみれば“結構コワい”道なんである。街灯らしきものも見当たらないし、ピョトレックが一度後をつけるのだが、あっという間に暗闇に消えて見失ってしまう。しかも、そこをパンプスを履いて歩いて行く、、、ってんだから、このお母さん、根性あるわ。私が彼女なら、いくら男が好きでも、あんな夜道を毎晩歩くなんておっかなくてゴメンだわ。そんな思いしてまで男とセックスしたいって気持ちにならない。男が車で迎えに来てくれるとかなら分かるが。

 しかし、ピョトレックが尾行し、お母さんを見失った直後に、暗闇から、小鹿が現れるんである。この小鹿がまた、可愛らしいんだけど、ホントに弱々しくて心配になるくらい。ピョトレックは、お母さんのことなど一瞬忘れたかのように小鹿に見入ってしまう。どちらも親を見失った者同士の思いがけない遭遇シーンも、何やらまた暗示的で胸に来る。

 そして、お母さんの恋は破れ、お父さんはお母さんの変化に気付き、、、

 ……てな具合に、一見静かで地味に進行していくのだが、実際に起きていることはピョトレックにとっては実にドラマチックで、ただのチョコケーキかと思ってフォークを入れたら、中からあっついチョコソースがジュワっと出てくるフォンダンショコラみたいな感じの映画だ。

 

◆本作の構成とかもろもろ

 本作は、割とよくある、ラストシーンを冒頭で見せる、という手法がとられている。もちろん、エンディングのオチは見せないけど。こういう構成は、正直言ってあんまり好きじゃないのだけれども、本作についていえば、これが功を奏していると感じた。

 つまり、本作は、この冒頭シーンがあるおかげで、最初から最後まで緊張感漲る作品になっている。もし、この冒頭シーンがなく、次の、お母さんとピョトレックの微笑ましいシーンから始まっていたら、観客は、そういう“ほのぼの系”映画だと思って、しかし見て行くうちに、その不穏さに???となっていき、あのエンディングに気持ち的に着いて行けないんじゃないかと思うのね。

 まあ、前半と後半で別の映画じゃないか?と思うくらいガラリと雰囲気が変わる作品は珍しくないし、それが一概に悪いとは思わないけれども、本作の場合は、やっぱり終始緊張感を見る者に感じさせた方が正解だと思う。だからこそ、あのラストシーンが効いてくるのではなかろうか。

 そのラストシーンについて、ここで書いてしまいたいけど、そうするとたとえネタバレ承知で読んだとしても、本作を見る価値が半減するので、やっぱりやめておく。

 でも、単なる少年のひと夏の成長譚で終わらせない人間ドラマに仕上がっているのは、この構成に負うところもかなり大きいと感じた。

 本作を見ている間、『ラブレス』(2017)が頭に浮かんでいた。設定は違うし、少年の置かれている状況は、圧倒的に『ラブレス』のアレクセイの方が厳しいのだけれど。作品の雰囲気(緊張感が途切れないところとか)が似ているのもあるけれど、両親の不和で家庭が安住の場でなくなり、少年が試練に直面する、というテーマが同じだからかも。

 ピョトレックの今後を考えると、なかなか厳しい感じがする。父と母の間には決定的な溝が出来てしまい、父は単身赴任のままだし、母とピョトレックもかなり緊張した関係になるだろう。そうすると、まだ内面的にはオコチャマなピョトレックとしてみれば、ちょっとキツい状況なのではないか。

 本作は、70年代のポーランドが舞台だが、ピョトレックの住むアパートの部屋とか、衣装などから、何となく時代を感じさせる。ソ連支配下の東欧って、やっぱりどこかちょっと重苦しさがあったんだろうな、、、。昨今は右傾化が懸念されるポーランドだが、2年前に行ったときはそんなこと微塵も感じさせないほどにワルシャワの街並みは美しかった。彼の地がずっとあのまま荒れることなくあって欲しいと、本作を見終わった後に思った次第。その前に自国の方がヤバいかもだけど。

 

 

 

 

ひと夏の経験、、、にしてはシビアすぎるお話。 

 

 

 

 

 

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