映画 ご(誤)鑑賞日記

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ドラマの脚本、これでいいのか? ~NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』を見終えて~ ②

2022-04-18 | ドラマ

公式HP⇒https://www.nhk.or.jp/comecome/


その①のつづき


◆五十嵐、重要人物じゃなかったの??

 ヒロインにとって家族以外では最重要人物として描かれてきた文ちゃん、、、いや五十嵐。再登場後の扱われ方は、およそ最重要人物に見合わぬ描写の連続やった。トドメのバーでの2人のシーンは、全くの無駄シーンと言っても過言じゃないだろう。

 再登場後の展開は、さんざん、ひなたに気を持たせる演出をした挙句、他の女へのプロポーズ宣言っていう、、、。この究極の“無神経”さは、文ちゃんのツンデレと関係ないやん。ツンデレ=無神経、ではない。実際、文ちゃんは礼儀をわきまえた思いやりのある子やった。ひなたが結婚したがっているからと、夢を捨ててもひなたと一緒になることを選ぼうとした文ちゃんだ。

 彼の今までの長きにわたる描写は一体なんやったん? あんだけ尺をとって描いたキャラを、脚本的に“ポイ捨て”みたいに退場させるなんて。

 ネットで、このシーンの意図をプロデューサー氏が「ひなたが自分の現在地を確認して前を向いていく場面」と説明している記事を読んだ。記事執筆者の「五十嵐とひなたの関係はこんなふうに書く必要はあったのでしょうか」との問いに対して氏は「ひなたさんもここで過去の自分を見つめ、前に進んだのだと思います」として、次のように語っている。

「藤本有紀さんの台本を最初に読んだときはそういう思いを抱きました。が、改めて読み込んでいくうちに、この展開の必要性を感じました。(中略)ひなたさんもここで過去の自分を見つめ、前に進んだのだと思います。(中略)10年経ってようやくその落とし前をつけることができたのではないでしょうか。第22週は全編通して、焼けぼっくいに火がついたかのように見えますが、ひなたさんは終わった恋をもう一度始めたいというよりは、過去の思い出に浸ろうとしている自分と戦っている、そんな心情を描けたらと思いました。その結果、バーで「いまは仕事が楽しい」という言葉が出てきたのではないかと思います。”ハッピーな展開”の意味についても考えさせられる回でした」

 、、、何言ってるか分かんない。

 だったら、五十嵐を既婚者にして、ひなたと再会して間がない段階で「結婚したんだ」と報告するシーンをサラッと挟めば良かっただけでしょう。10年経ってりゃ、それも十分アリなんだから。演出まで総出で思わせぶりな展開にしたのは、視聴者をバカにしている(この点については後述)。

 ちなみに、文ちゃんとの別離後10年間のひなたは、“落とし前をつける”も何も、結婚資金に溜めていたお金を英会話学校のために使っていたし(ここでは全くモノにならなかったが)、その後英会話もマスターして仕事に打ち込むなど、前向きに描かれていた。

 百歩譲って氏の言うことを理解したとして、であれば、ひなたの10年間に落とし前をつけるため“だけ”に五十嵐を再登場させたってことになる

 私がこの脚本に衝撃を受け、その後怒りに転じたのは、この点だ。


◆これはドラマだ!!

 ネットでは、元カレがただの人生における通過人であることなど「リアルじゃフツーにあること」という趣旨の書き込みも散見されたが、これはドラマである。ドラマとリアルは、当たり前だが別物だ。まさしく「虚実皮膜論」である。

 ドラマ(映画でもだが)の脚本の鉄則として“無駄なセリフ・シーンは書いてはならない”というのがある。書き手は、どんな小さなセリフやシーンでも、必ずそれを書く意味を考えて書け、ということだ。レゾンデートルというやつですね。

 藤本さんのドラマは、まさに無駄のない脚本だと感じることが多かった。好き嫌いは別として、三谷幸喜の脚本も無駄がない。ものすごく計算されていることが終わってみれば分かるようになっている。私は三谷ドラマは苦手なのが多いが、それでも彼が脚本家として天才であることに異論はない。

 「カムカム」については、私の中では完成度では「ちりとてちん」には及ばないし、ところどころで??となる部分は結構あった。でも、どんなドラマもツッコミどころは必ずあって本作もその一つに過ぎない。良いドラマであることは間違いない。五十嵐の扱いを除いては。

 ひなたの人生を描いたドラマなのに、残念ながら、最終話のひなたの人物造形に五十嵐との時間はほぼ何の影響も与えていないオハナシになってしまっている。

 ひなたが英会話に集中するようになったのは、五十嵐との結婚資金をはたいて通った英会話スクールではなく、その何年も後、母親るいの実家で“平川先生の亡霊”に会ったから(??)であり、五十嵐との別れはひなたの一念発起に何の作用も及ぼしていない。

 また、ひなたが40歳を過ぎて米国留学し、起業してキャスティング・ディレクターになったのも、祖母のアニーこと安子がその仕事をしていて、安子の誘いがあった上でノウハウの伝授を受けたからである。ひなたが自発的に動いたわけではない。そして、ここにも五十嵐の影響は何もない。

 ドラマ最終盤、2025年のひなたは、NHKのディレクターからのオファーを受け、ラジオ英会話の講師を務めている。オファーを受けるか迷ったときに、彼女の背中を押したのは、当然、五十嵐ではなく、万年斬られ役の虚無蔵さんだ。そして、英会話講師を一緒に努めているのは、初恋のビリーであり、ラストシーンは、ビリーとの熟年の恋の予感、、、でエンドマークである。

 なにそれ、、、。五十嵐、どこ行った??


◆視聴者を信じていない制作陣

 このドラマはSNSも動員して、特に“ひなた編”に入ってからは、“伏線回収”をこれでもかと煽りまくり、ネタバレに過剰に神経質で、アニー=安子を明かすのを2週にわたって引き延ばすなど、必要以上に勿体つけた展開を見せた。これら全ては、制作側の実に独り善がりなプロモーションだ

 三谷幸喜や、同じく脚本家の大石静氏も言っているが、本当に面白いドラマはネタバレしていても面白いのである。

 結局、このドラマの制作陣は、視聴者の鑑賞能力を全く信じていない、ということだ。

 もっと言うと、視聴者をバカにしている印象さえ受ける。特に終盤、ドラマの本質は置き去りで、“ネタばらしの仕方”に躍起になる。この戦略で大いに盛り上がっているネット民たちもいたけれど、SNSで騒いでいるのは視聴者のごく一部だ。大方の視聴者が制作側の意図通りにドラマを鑑賞したかどうか、甚だ疑問である。

 制作陣は、もう少し冷静であっても良かった。本当に良いドラマは、ドラマだけで十分なのだから。余計なプロモーションなど、雑音になりかねない。

 脚本家としては、きちんと、ひなたの人生に五十嵐が存在意義を持っているように描くべきだろう。何度も言うが「ドラマ」なんだから。

 まるでエクスキューズのように、最終話の少し前(2022年の設定)で、五十嵐がハリウッドのアクション監督として雑誌に掲載されている、、、という形で登場する。それも、ほんの一瞬で、どんな活躍振りかはまるで分らない。

 後から、その雑誌が鮮明になった画像がTwitterで公開されたが、この文章を読むと、再登場後の五十嵐のイメージはまた変わる。やはり、文ちゃんだ。デイジーとの家族写真も載っているのはご愛敬。だから、既婚者として再登場させれば良かったのだよ、ホントに。

 ひなたがアメリカで自身の人生を切り開き、五十嵐が良きビジネスパートナーとなる過程のシーンを丁寧に積み上げてほしかった。アニーの正体を明かすのにあんなに尺をとる代わりに。ほんの数シーン入れるだけで、ゼンゼン違ったと思うのに。

 これが、藤本さん以外の人の脚本ならば、まあ、ショックも軽かったと思うのだが、、、。文ちゃんにガックシ&藤本さんにガックシ、、、とガックシ2倍だったのだ。

 もう、こんな思いはしたくないので、朝ドラは今後見ません。もともとほぼ見ていなかったのだから、元に戻るだけだが。

 長々グチを垂れ流し、失礼いたしました。


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◆おまけ

 俳優・本郷くんには何の罪もないので、再登場後のも含めてオフショット画像を貼っちゃおう。

 まずは、こちら。

2022年に雑誌に掲載された五十嵐 ~~ ブン・イガラシかく語りき ~~

 

 

五十嵐を演じた本郷くんのインタビュー ~~ 「視聴者の方からイヤなやつだと思われないように気をつけて演じ」ていたのにねぇ ~~

 

 

「ひなたと五十嵐」のオフショット ~~ まさかあんなオチが待っていたとは。どんな気持ちで演じていたのか、お2人。 ~~

 

 本郷くんは、クセのある役を多く演じているみたいだけど、彼にはエイドリアン・ブロディみたいな主演も張れる性格俳優になってもらいたいなぁ。今でも十分、主演を張れると思うが。少なくとも、今、大河で義経を演じているお方よりは、実力も存在感もあると思うヨ、私は。もう少し、筋肉付けた方が良いかも、だけど。細すぎるので。

 


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