作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv68173/
以下、公式HPよりあらすじのコピペです。
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過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。
“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった??。
パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく??。
=====ここまで。
昨年のパルムドール受賞作。作品賞でのオスカーゲットも現実になるか?!
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公開前から話題沸騰の本作。もう既に、あちこちで批評・レヴューが溢れている上、監督もネタバレ厳禁!と言っているらしいので、なるべく本作の核心には触れずに、感想(?)を書こうと思います。
◆半地下のユーウツ
貧乏=半地下、金持ち=高台、、、ってものすごい分かりやすい舞台設定で、思わず笑ってしまった。
まぁ、でも、普通、建物を建てる際に、地面を掘る(地下を作る)のはそれだけで工費がグンと上がってしまうものなんだが。韓国では違うのかな。よく分からないけど、日本じゃ地下掘ってあるマンション(に限らないが)は割高になります。
ちなみに、私の知り合いで小金持ちな方がおりまして、老朽化した自宅を建て替えた際に地下を掘って、それこそ半地下を作り、そこをホームシアターになさいました。半地下というより、天井近くに辛うじて窓があるという感じの、ほぼ地下でしたけど、それはそれでなかなか贅沢な作りになっていて、ホームシアターが夢の私にとっては羨ましい空間がありました。
そんな非日常空間を敢えて半地下にするのは贅沢のうちだろうが、日常の空間が半地下ってのは、なかなかユーウツなもんです。これは私自身が経験アリなのでよく分かる。
新卒で入社した会社の借り上げマンション、割り当てられた部屋は1階の一番奥。その1階が、まさしく半地下だったのだ。ベランダの手摺りが地面の高さ。部屋の床が地面より下にある、部屋で床に座ると地面が目線より高いところにある、、、本作のキム家よりは浅めだったと思うが、何とも言えない感じだった。
部屋は中庭に面していて通りから丸見えではないから、キム家の人々みたいに部屋の中から外で立ちションしている人を見上げることはなかったけれど、生け垣の向こうには別のマンションが建っており、そこの1階よりも低いところで寝起きしているのは、あまり気持ちの良いものではない。時折中庭にネコが入ってきて、部屋でボケーッと座り込んでTVを見ていて、ふと外を見ると、ネコがこっちを見下ろしている、、、なんてこともあった。何より一番イヤだったのは、大して風のない日でも窓を開けておくとアッと言う間に部屋の床が土埃だらけになること。まともに地面から土が入ってくるのだ。布団はもちろん、洗濯物もベランダに干せないし、日当たりも悪いし、おまけに私の部屋の前には何かのモーターみたいな大きな箱が設置されており、間欠的にそれがもの凄い音を立てるという、まさに最低な部屋だったのである。
昔から出不精の私は、部屋が快適な空間でないともの凄くストレスが溜まる。実際、私は、あの部屋にいるとき(部屋だけが原因ではないが)拒食症になり、かなり精神的に病んでしまった。どんなにストレスを感じる出来事が外であっても、自分の部屋に帰ってくればリセットできるのが本来の私なのだが、あの部屋に住んでいたときはリセットできず、どんどん溜まる一方だったのだ。
その後、半年もしないうちに1階の別の部屋に空き巣が入るという事件が起きて、女子専用マンションだったのが、半地下1階は男子に割り当てられ、1階の女子たちは2階以上に強制移住させられたので、半地下から図らずも脱出できたのは有り難かった。4階に移ったら、心が健康に戻ったかというと、そんな簡単なモンじゃなく、一度病んでしまうとなかなか回復に時間がかかり、結局4階にも2年弱しかいなかった(退職したってこと)。
ただ、忌まわしい土埃からは解放され、布団も洗濯物も日光の下に干せるようになり、それだけでも少し気持ちが軽くなったのは実感した。やはり居住空間というのは精神衛生上ものすごく大事だと思い知った経験だった。
だから、本作でのキム一家は、あそこまで深い半地下の部屋で、あれだけ家族皆が仲良く明るさを保って生活していることは凄いと思ったのだ。夫婦二人とも楽観的だし、子どもたちも決して悲観的ではない。というか、一家揃って皆、たくましい。それが、私の半地下経験の実感とはかけ離れており、序盤は少し違和感があった。
スルスルと芋づる式に金持ち一家に食い込んでいくキム家の人々。要領良すぎで、なんか想定内の展開だなぁ、、、期待ハズレか?? と思って見ていたところへ、思いもよらぬ「転」が訪れ、一気に面白くなる。
半地下は、確かに貧乏の象徴だが、人間にとって耐えがたいことは貧乏ではない、もっと下には下があるということを、この映画は皮肉たっぷりに描いているのだ。
◆その他もろもろ
印象的なのは、階段、坂、、、。特に、豪雨のシーン。滝のような雨が階段を勢いよく流れ落ちていく様は、天国から地獄に落とされたキム家の人々の気持ちを象徴していて、見ていて切なかった。おまけに、その後、帰った半地下の自宅は水没しているのだから。
その直前の、金持ちの豪邸内での描写も笑えるけど、屈託なくは笑えない。ソファを挟んで、下にはキム家の人々が息を潜めて隠れている、上では金持ち夫婦がセックスしている。嗚呼、、、。
ただ、終盤、誕生日のガーデンパーティでの惨劇は、展開が予想できちゃった人も多いのでは? でもそこは、ポン・ジュノ監督、それで安易に終わらせない。あのラストのオチがあったおかげで、私は本作は格段に面白くなったと思っている。内容は書かないけれど、ああやって、ゴキブリみたいにしぶとく格差社会なんかモノともせずにしたたかに生き延びてやろう、というのは嫌いじゃない。社会の現実の前に呆然として絶望するようなラストだったり、一発逆転して勝ち誇るだけのラストだったりしたら、むしろ白けただろうな、と思う。
こういう面白い映画は、落としどころが難しいと思うが、本作はオチが秀逸だからこそ、評価が高いのではないかと感じた次第。
個人的に、一番印象に残ったのは、家政婦役のイ・ジョンウンさま。面白すぎる。階段から落っこちたときに死んだのかと思ったら、どっこいしぶとく生きていたのもビックリだった。金持ち奥様のチョ・ヨジョンは『後宮の秘密』よりも魅力的に見えた。「時計回りで!」が笑える、、、。金持ち夫婦もお人好しで、騙されやす過ぎなのが可笑しい。
長男のチェ・ウシクくんは童顔でとても大学受験生には見えないけど、彼も途中で死んじゃったのか??と思ったら生きていて、良かった……。長女のパク・ソダムちゃんも、可愛いかったなぁ。
まあ、日本じゃこんなパンチのある映画は、当面作れないでしょうなぁ。やっぱり、韓国映画の方が何歩も先を行っていると思う。危機感もっと持って欲しいですね、邦画界は。
基本悪人は出て来ないけど、、、