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江戸繁昌記初篇 28 揚花 2

(散歩道のシロバナヒガンバナ)

午後、「駿遠の考古学と歴史」講座へ出席した。

「江戸繁昌記初篇」の解読を続ける。

耕やさずして食い、織らずして衣(き)る。徳沢の致す所、仰(あおぎ)て思わざることを得ん。然も、都俗常態、唯だ習びて思わざるならず。なおかつ、梁肉を食い、錦綺を曳んと欲するや。為すべからざるの事を為し、耻ずべきの業を恥じず。寧ろ花子様を為すも恬然、これに居て疑わず。
※ 徳沢(とくたく)- 恵み。恩沢。おかげ。
※ 都俗(とぞく)- 都会の風俗・習慣。
※ 常態(じょうたい)- 平常の状態。
※ 梁肉(りょうにく)- 上等な穀物や肉。上等な食事。
※ 錦綺(きんき)- にしきとあやぎぬ。あやにしき。
※ 花子様 - こじき(乞食)とルビあり。謂れはわからない。
※ 恬然(てんぜん)- 物事にこだわらず 平然としているさま。


(ひ)かな。近来、揚花の盛んに世に行わる。侈靡節せず。事々度に踰(こ)えて、人、その梁肉、錦綺を羨むや。都俗漸く風を為し、今の人、中夜に子を生む(と)、遽(あわ)てゝ火を取りて、これを燭(とも)す。唯だ、その女子為らざるを恐るゝなり。
※ 侈靡(しび)- 身分不相応におごること。
※ 中夜(ちゅうや)- よなか。夜半。


その子、伎を售(う)りて、業と為すに及ぶが如く、その母、欣然物を負いて、これが従役を為し、気色(はなは)だ揚る。頗る矜色有り。女(むすめ)もまた、習う所、母視ること、なおの、嗚呼(ああ)人倫、幾何(いくば)くか、廃(すた)れざらん。
※ 欣然(きんぜん)- よろこんで物事をするさま。
※ 気色(きしょく)- 気持ち。気分。
※ 矜色(きょうしょく)- おごりたかぶった顔つき。
※ 娨(かん)- ごうまん。


近日この風、殊に煽(あお)らんに気炎し、人熱して聞く。今春、令出て、これを禁ずと。これにおいて、益々徳沢の浸(ひた)す所を見る。然るに、愚人、或はその一且生計を失うを以って言うを為す。愚かもまた甚し。但し、或は、死灰復たび燃えんことを恐る。この輩、面目、畢竟溺(でき)すべし。
※ 気炎(きえん)- 燃え上がるように盛んな意気。議論などの場で見せる威勢のよさ。
※ 一且(いったん)- とりあえず。差し当たって。ひとまず。


浄瑠理物語十二卷へ、永禄中、織田氏の侍女小通が著わす所、而して、検校岩舟氏、その曲節を製して、これを琵琶に於いて調す。嗣(つい)で龍野角澤氏など、更に三弦を以って、これを律し、後、南無右衛門なる者に至りて、その伎、大いに世に行わる。慶長中、伎を以って、徴(め)されて、因って大夫に拜らる。爾後、薩摩、土佐、山本、宇治、伊藤、出羽、都氏など並び廃す。今は則ち、竹本氏の一流独り、益々行われて、豊竹氏、また絶ゆること危からんと云う。
※ 拜らる(はいらる)- 拝命を受ける。
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