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市野村出入の一件(3) - 古文書に親しむ(経験者)

(久しぶりの雷雨の後の散歩道)

午後、静岡へ駿河古文書会に出席する。帰り道、大井川を前にぽつりと来て、大粒の雨がしばらく降った。帰宅したが、雨の止むのを待って車を出た。すぐに止んでしまったが、久し振りの雨であった。

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「市野村出入の一件」を続ける。

その上、廿五日夜、浪人体の者、六、七人参られ、門内外囲め、四、五人宅へ押込み、壱人座に着き、私忰龍太郎面会仕り候処、私を相尋ね、面談仕りたき由、これを申し候に付、父龍左衛門は他行致し候段、龍太郎より申し聞く。左候わば内匠宅へ罷り越し候上、取計らい致すべくと、前書の者ども、忰を引っ立て、その侭帰宅致さず候に付、始末掛け合い候処、
※ 他行(たぎょう)- よそへ行くこと。外出すること。

私面談に及ばざる内は、龍太郎差し戻さず、厳重に禁錮致し、日々貞三郎、源次郎、善八三人にて、替る/\棒、縄持ち参り、拷問致し掛り、衣類引き破り候程の仕業(しわざ)、ついては安間村伊七は、中泉において、これまた禁錮致され、両人とも取錮(つなぎ)の始末、何様(いかよう)掛け合い候ても、前書の者ども悪意を念(おも)い、差し戻し申さず。
※ 禁錮(きんこ)- 一室に閉じ込めて、外へ出るのを許さないこと。

余儀なく二月廿八日出立、尾州様より内匠方へ、中泉御守衛の趣に付、尾州様御勘定所御用達(ごようたし)、当村に御座候に付、右手続きを以って、御勘定所へ出願仕り、御添翰にて中泉御出役先へ申すべき旨、仰せ渡され、同三月十日帰宅の上、中泉御陣中へ罷り出候処、最早尾州様御出役様は御引き払い、致し方なく帰宅仕り居り候処、
※ 添翰(そえかん)- 添え状。近世の訴訟手続き。 添簡。

同月十五日頃、村内三郎兵衛、同源兵衛、安間新田七郎左衛門、三人にて、御時節柄、かれこれ右始末甚だ不本意には候えども、一子禁錮致され候に付、金五拾両差し出し候わば、龍太郎差し戻し申すべく、品々深切に世話致し候儀、右三人の者よりこれを申す。
※ 安間新田村(あんましんでん)- 現、浜松市東区和田町の一部。市野より南へ3キロ。

本意ならざる儀には候えども、壱人の忰、病人母、私実家老母始め、その外親類の者ども相歎き候に付、愛に溺れ、殊に不法者ども方に、長々差し置き候ては、病身の忰、人命の程計り難く、心配り、右相断り候ては、老母へ対し不孝に当り、親類一同も只々それのみ申し居るに付、内金拾両、源兵衛へ相渡し申し候処、

受取り申さず、その節、書面差し出しくれ候様、申す事に付、忰儀受取書のみ相心得候処、下書き、以っての外、文意にて、直様右三人へ深切に立ち入りくれ候わば、第一詫び書と申す儀は、これ有るまじき箋簡候えば、扱いの者勝手に文意直し申さずと、張紙に致す様申し聞けられ候に付、第一詫び書と申す所は勿論、その外数ヶ所張り下げ、差出し候事ゆえ、当方に控えもこれ無く、先方より下書き扱い人へ差し戻し候に付、当方より下げ紙の分、取り戻しくれ候様、申し談じ候処、
※ 箋簡(せんかん)- 書簡。手紙。

示談に相成らず、假令(たとい)張紙これ有り候ても、早々行き届かざる上は、以来反古たるべき旨、扱い人より申し聞けらる処、今般両人より願い立て相成り候段、扱い人と申すは、甚だ不審に存じ奉り候。先方より扱い人、私へ申し聞かされ候は、只々金と談示計り、右差し出し候わば、忰龍太郎差し戻し申すべき様、相掛け合い御座候。
※ 反古(ほご)- 無効。取り消し。破棄。


読書:「危険領域 所轄魂」笹本稜平 著
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