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「慶應四年日録/徳元」を読む 68

我が家の見張り役
買い物から帰ってくると
大屋根にアオサギが止まって
周囲を見張っているように見えた

「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

(廿二日分の続き)
もっとも、その時勢、人気(じんき)驕惰(きょうだ)に相成り候故、当家の仕入は
※ 驕惰(きょうだ)➜ おごり高ぶって、ほしいままにすること。
相断わり候後、追々困窮切迫(せっぱく)致し、何様(なにさま)掛け合い候ても、
行き届き申さず、漸々去子年に至り、貸金元の弐拾分の一程も請け取り候て、
事済みに致し候様の次第に付、弱年の時分、ただ勤倹(きんけん)
※ 勤倹(きんけん)➜ 勤勉で倹約なこと。仕事にはげみ、むだな出費を少なくすること。
(もっぱ)らとして、母と同意して、質物へは貸し遣(つか)わしたくと存じ、
父に内々、母在所よりも借用など致し候て、実に艱難(かんなん)
※ 艱難(かんなん)➜ 困難に出あって苦しみ悩むこと。
拾ヶ年余も相暮れ候て、その後、追々借用、金主方へ勘弁請け候て、
※ 勘弁(かんべん)➜ 他人の過失や要求などを許してやること。堪忍。
年賦に致し候分などもこれ有り、漸々取り続き候次第に候。

これより、前三代の成り行きを熟考致し候処、当家屋敷地形宜しからず候間、
中年破業に及び候由。方考者、これを申し候間、畢竟、中年破業に
※ 破業(はぎょう)➜ 破家。家産をつかい尽くすこと。
※ 方考者(ほうこうしゃ)➜ 方位学者。「方位学」とは、吉凶や運勢を方位で判断する占術。

及び候と存じ、当時の内、地形相直し、普請致し候は然るべきかと存ず。
右普請相営み候えども、元来、祖父植付け置き候桧林これ有り候間、
これを売り払い候処、代金弐百三拾両程に相成り候間、右普請失費、
余分に見込み候ても、右山代金にて相済み申すべきかと存じ、取り掛り候処、
殊の外、入用相嵩(かさ)み、凡そ惣躰にては、四百も相掛り候義にて、
※ 惣躰に(そうたいに)➜ だいたいにおいて。一体に。総じて。
※ 金(きん)➜ 大判、小判、一歩金などの金貨の総称。ここでは、金は一両小判のこと。
一旦家業の元金手薄(てうす)と相成り、心痛致し候えども、元来、数代
中年破業の義も、これまでにて仕舞い候様にも相成り申すべきか、
決心相付き候。普請の義は、案外の入費相嵩み候ものに候間、
後来(こうらい)、我が子孫たる者、物好きがましき普請などは、
※ 後来(こうらい)➜ こののち。行く末。将来。
決して致さざる様、致すべき事。

薩州様御人数、当宿御泊り、完
(蒲)原入りの由。継馬(つぎうま)六拾疋余
※ 継馬(つぎうま)➜ 江戸時代、宿場に用意した乗り継ぎ用の馬。
これ有る趣、大混雑の由。
(つづく)

読書:「天狗姫 おっとり聖四郎事件控 6」 井川香四郎 著
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