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「信長公記」を読む 5

(散歩道のヨメナ、昨日撮影)

丈が人の背ほどもあり、花がたくさん咲いていた。ヨメナと名前を定めたが、この種の花は名前がなかなか特定し難い。

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「信長公記 巻五」の解読を続ける。

八月八日に、越前の前波九郎兵衛父子三人、この御陣へ参られ候。信長公の御祝着(しゅうちゃく)斜めならず。則ち、御(とばり)、御小袖(こそで)、御馬皆具(かいぐ)ともに拝領(はいりょう)申され候。翌日、また、富田弥六、戸田与次、毛屋猪介参られ候。これまた色々下され、忝(かたじけな)き次第、大方(おおかた)成らず。虎後前山御取出、御普請、程なく出来、御巧(たく)みを以って(おわん)。当山の景気(けいき)あり。仕立生便敷(おびただしき)御要害、見聞に及ばざるの由にて、各(おのおの)耳目(じもく)、驚かされ候。
※ 祝着(しゅうちゃく)➜ うれしく思うこと。満足に思うこと。。
※ 斜めならず(ななめならず)➜ 並ひととおりでない。格別だ。
※ 帷(とばり)➜ 室内や外部との境などに垂らして、区切りや隔てとする布帛 (ふはく) 。たれぎぬ。たれぬの。
※ 小袖(こそで)➜ 現在の和服のもととなった、袖口の小さく縫いつまっている衣服。
※ 皆具(かいぐ)➜ 鞍橋(くらぼね)・鐙(あぶみ)・轡(くつわ)・手綱(たづな)・腹帯 (はるび)などの馬具の総称。
※ 拝領(はいりょう)➜ 目上の人から物をいただくこと。
※ 大方成らず(おおかたならず)➜ なみたいていでない。非常に。
※ 訖ぬ(おわんぬ)➜ (「おわりぬ」の変化したもの)終わった。
※ 景気(けいき)➜ 物事のようす。ありさま。また、情景。景色。
※ 興(きょう)➜ おもしろみ。おもむき。ふぜい。興趣。
※ 耳目(じもく)➜ 耳と目。聞くことと見ること。見聞。


座敷より北を御覧せられ候えば、浅井、朝倉、高山大ずく(大嶽城)へ取り上がり入城し、難堪(なんかん)の峠に及び、西は海上漫々(まんまん)として、向うは比叡山、八王寺、昔は尊き霊地たりといえども、一年山門の衆徒ら、逆心を企て、自業得果(じごうとくか)の道理を以って、山上山下、灰燼(かいじん)たりと。これ御憤(いきどお)りを散ぜられ、御存分に仰せ付けられたる所なり。また南は志賀唐崎、石山寺、かの本尊と申すは、大国宸旦(しんたん)までも、隠れなき霊験殊勝(しゅしょう)の観世音、往昔紫式部も所願(しょがん)を叶え、古今翫(めで)る所の源氏の巻を、注し置かれたる所なり。東は高山伊吹山麓あれて残し、不破の関、何れも眼前に及ぶ所の景気(様子)、また丈夫なる御普請申し尽し難き次第なり。
※ 難堪(なんかん)➜ 困難。艱難。
※ 漫々(まんまん)➜ 広々と果てしないさまのこと。
※ 自業得果(じごうとくか)➜ 自業自得によってまねいた果報、結果。
※ 灰燼(かいじん)➜ 灰や燃え殻。建物などが燃えて跡形もないこと。
※ 宸旦(しんたん)➜ 震旦。古代中国の異称。
※ 隠れなき(かくれなき)➜ 広く知られている。有名な。
※ 殊勝(しゅしょう)➜ 神々しいこと。おごそかであること。心うたれること。
※ 所願(しょがん)➜ 願っている事柄。特に、神仏への願い。
※ 注す(ちゅうす)➜ 記す。書き記す。

(「信長公記 巻五」解読、つづく)
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