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小夜中山夜啼碑6 闇六、十六夜を殺し五百両を奪う

(散歩道のハクモクレン)

本日午後、名古屋のかなくんが来る。掛川駅まで出迎えに行く。幼稚園が春休みで、すぐに来る積りが、母子ともインフルエンザで一週間ほど遅れた。明日からまーくん、あっくん、三つ巴で大にぎやかになることであろう。

小夜中山夜啼碑の解読を続ける。

手元にしかと十六夜が、念力極めし女の一心、闇六の強悪人、かよわき女子とあなどりて、不義いい懸けしのみならず、かく無残にも殺すとは、鬼に類(ひと)しき人面獣心、たとえこの身は死するとも、魂魄汝に付き添いて、いつか恨みをはらさんと、憤怒の形相すさまじく、口より吐く息、炎となり、たけり狂うて闇六が、刃持つ手に食いつきて、小指を一本、喰い切ったり。
※ 人面獣心(じんめんじゅうしん)- 顔は人間であるが、心はけだものに等しいこと。恩義や人情を知らない者、冷酷非情な者のたとえ。ひとでなし。
※ 魂魄(こんぱく)- 死者のたましい。霊魂。


闇六は気をいらち、力を極めてふりほどき、刀逆手にとり直し、笛のくさりをさし通せば、歯を喰いしばり息絶えたり。闇六、刀の血汐をぬぐい、鞘におさめて蹴りかへす。死骸の肌につけたる五百金、この時胴巻うちほぐれ、あたりに飛び散る黄金の花、元来切り取り強盗を、業として世を渡り、富に浮べる村雲闇六、拾い集めて完而とうち笑み、死骸に立て寄り胴巻を、引き出だしつゝおし頂き、かゝるべしとは思わぬ幸い、仕合わせよしと懐中し、雲間を出ずる月影に、路をもとめて逃げ去りけり。
※ いらち(苛ち)- いらいら、せかせかとして落ち着かないこと。
※ 笛のくさり - 「喉笛の関節」の意で、喉仏の軟骨の部分。


かくてその翌の朝、所の百姓ら農業の、出がけにこゝをよぎり、十六夜が死骸を見つけ、驚きあわて、中山寺の院主に、かくと訴えければ、現住、夢幻和尚、徒弟をひき具(ぐ)しはせ付けて、死骸をいち/\あらためさするに、盗賊の業とおぼえて、何さま太刀疵数ヶ所あり、無残というもあまりあれば、上人読経し給いて、その死骸を百姓ばらに指揮して、その処に埋めさせ、しるしに一つの石を建てたり。
※ 現住(げんじゅう)- 寺院の、現在の住職。
※ 百姓ばら - 百姓たち。百姓ども。「ばら」は人に関する名詞の下について、複数を示す。(親しみ、あるいは見下して)


さればその折り、かの死骸のかたわらに、飛散りたる守り袋を、上人は拾いとり、後に由縁の者あらんとき、証拠のためと取り置かれ、跡ねんごろに弔われける。
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