平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「水濃徃方」の解読 5
(庭のアヤメ)
朝早くに通学路の見守り立哨。月一回の区長の仕事である。立哨は少し大げさか。結局、我が班のゴミステーション角の五差路を通ったのは、番生寺から来る30人ほどの子供たちのみであった。
朝から明後日のはりはら塾の古文書講座の準備に、ほぼ昼間を過ごした。準備完了。
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「水濃徃方」の解読を続ける 。
これはまた、言われぬ事して、弟吉めに能(よ)い物、あいつが好きの絵草紙、何時(いつ)とても廃らぬは、この道中双六。合羽(かっぱ)着て雨のふるは白須賀。戸塚ではいつも居風呂(すえぶろ)に入って居る。六十六部、早追飛脚、三宝荒神、抜け参り。こればかりづつ書いてあれども、これに向えば、自然と旅の情が浮んで面白い。
※ 言われぬ(いわれぬ)➜ 無用の。 余計な。
※ 居風呂(すえぶろ)➜ 大きな桶の下にかまどを作りつけて、湯をわかし入浴するのに用いるもの。すいふろ。
※ 六十六部(れい)➜ 法華経を六十六回書写して、一部ずつを全国六十六か所の霊場に納めて歩いた巡礼者。
※ 早追飛脚(はやおいひきゃく)➜ 急行飛脚
※ 三宝荒神(れい)➜ 日本特有の仏教における信仰対象の一つ。仏法僧の三宝を守護し、不浄を厭離する佛神である。
※ 抜け参り(ぬけまいり)➜ 親や主人の許しを受けないで家を抜け出し、往来手形なしで伊勢参りに行くこと。江戸時代に流行し、黙認された。
わしが思うに、人間一生もこの様なもので、箱根と云う嶺(とうげ)があれば、大井河と云う大河あり。島田、金谷と唄いしも、むかし石部々々と皆な口々に誉められた堅作(かたづく)りも、今は大津馬の追がらし。隙(ひま)ゆく年も、丁度今年で五十三次。無明(むみょう)の酒に酔いもせず。京まで行き着かぬ内は金も大事。めつたには使われず。命も大事、道連れの付き合い、食養生、少しでも抜けがあると、それだけの苦労が増える。一生は長(なが)の道中、駒の朝走りも後(しり)の続かぬは油断の本(もと)。挊(かせぐ)/\を悪く心得て、慾に目が一つ余ると、つい跡戻(あともど)りする。
※ 石部(いしべ)➜ 東海道五十三次の宿。「石部金吉」(非常にきまじめで物堅い人の擬人名)の略。
※ 堅作り(かたづくり)➜ 堅気風。まじめな職業についている人らしいこと。
※ 大津馬(おおつうま)➜ 大津の宿駅で荷物の運送に使われていた馬。
※ 追がらし(おいがらし)➜ 使えなくなるまで追い使うこと。
※ 隙ゆく年(ひまゆくとし)➜ 隙ゆく駒。年月の早く過ぎ去ることのたとえ。隙過ぐる駒。
※ 五十三次(ごじゅうさんつぎ)➜ 五十三歳を東海道の宿場数で表現。
※ 無明の酒(むみょうのさけ)➜ 人間を惑わす煩悩を、正常な心を失わせる酒にたとえていう語。
※ 駒の朝走り(こまのあさばしり)➜ はじめに元気がよすぎると、最後まで続かないことのたとえ。
(「水濃徃方」つづく)
読書:「小袖の陰 御広敷用人 大奥記録 3」 上田秀人 著
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