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脾肝薬王圓用い法 - 古文書に親しむ

(脾肝薬王圓用い法)

先週土曜日の午後、「古文書に親しむ」講座に出席した。その日、解読した古文書の一つに「脾肝薬王圓用い法」という文書があった。薬の効能書き、あるいは使用法を書いたものである。これもれっきとした古文書である。この古文書にはすべての漢字に振り仮名が付いている。その振り仮名には変体仮名が多用されており、振り仮名の解読も勉強になる。また振り仮名が翻字のヒントになるから、解読が楽だと講師は言うけれども、この振り仮名がなかなか曲者で、現代の読み方のルールからすると、いい加減極まりない。ともあれ、読み下し文で示そう。

  脾肝薬王圓用い法
一 小児出生より五才までは、一日に一ずつ、好む品に随い何度にも用ゆべし
※ 貼(ふく)- 調合して包んだ薬などを数えるのに用いる。服。
一 小児六才より十才までは、一日に一貼半ずつ、三度に白湯にて用ゆべし
一 小児十一才より十五才までは、一日に二貼ずつ、四度に白湯にて用ゆべし
一 十六才より惣て大人は、一日に二貼ずつ、四度に白湯にて用ゆべし
 大人小児とも七日の内に心下をすべし、乳食をよく治め、小便をよく
 通ずを薬効と知るべし、また少しも効験なくば用ゆる事なかれ
右は凡そ用い方の大略にて、また病の軽重に継うべし、平安の節、養生の為に
用ゆるには心に任すべし、重病の節、用ゆるには一日に弐貼ずつというを三貼ずつも用ゆべし、一日に一貼ずつというを弐貼ずつも用ゆべし、大病にても何程多量に用ゆるとも、過量の害ある事なし、ただ軽量を緩に用いる節は、効くべき功も効きがたし、心得べし


振り仮名がいかにいい加減か、いくつか示してみよう。

  「出生」-「むまれて」、「うまれて」の意味だろう。
  「品」-「もの」
  「大人」-「たいしん」
  「心」-「むね」
  「乳食」-「ちちしょくもつ」
  「薬効」も「効験」-「ききめ」
  「大略」-「あらあら」
  「平安」-「つねづね」
  「節」-「とき」
  「過量」-「つよすぎる」
  「害」-「うれい」
  「軽量」-「すこしばかり」
  「緩」-「ゆるゆる」
  「功」-「やまい」

思うに、まだ漢字の読み方がしっかりと決められていない昔は、意味が通じればよいと、案外いい加減に読んでいた。おそらく人によって読み方は同じではなかったと思われる。古文書を読むときに、そういう前提で読まないと、誤読する可能性がある。読み方はどうであれ、意味が間違いなく伝わらないと文書の意味がない。普通の古文書には振り仮名が振られていない。たまにこういう文書を読むと、読み方について色々考えさせられる。
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