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駿台雑話壱 8 釈源空が誓い(後)

(強風になびく、土手のカラシナ)

昨日と一転して晴天、季節風が吹き荒れ、ムサシの散歩の土手では立っておれないほどであった。

駿台雑話壱の解読を続ける。

  釈源空が誓い(続き)
この人の、命を喪う外に神罰なき事を定め得て、誓いしように、源空も土になるより外に地獄なき事を定め得てこそ、かくは誓いつらめ。

今、翁が誓いはそれと異なり、上は皇天をいたゞき、下は后土を履(ふ)みて、天地にかけて誓う。誓いもし誕ならば、天地の罰を蒙(こうぶ)るべし。
※ 皇天(こうてん)- 天をつかさどる神。上帝。天帝。
※ 后土(こうど)- 土地の神。また、土地。


されど我道のために誓うは、源空も同じ心なり。これにつけて思うに、釈氏の教えは、有を無にし、実を虚にするにあり。然るに無を有にせねば、有を無にしがたく、虚を実にせねば、実を虚にしがたし。されば、極楽、地獄の沙汰は、もと虚なる事と知れども、もとより真仮一如とみてこれを説く。往生の教えを立てゝ衆生を導けば、賢愚を分かず、思慮に渉(わ)たす。すべて念仏滅罪の中に帰して止みぬ。これ釈迦如来の密旨なり。
※ 真仮(しんけ)-(仏)絶対的・普遍的な真理と、一時的に特定の場に適合した形態で示される真理。真実と方便。
※ 一如(いちにょ)-(仏)宇宙に遍在する根源的実体である真如は、現れ方はいろいろであっても根本は一であるということ。
※ 往生(おうじょう)-(仏)現世を去って仏の浄土に生まれること。特に、極楽浄土に往(い)って生まれ変わること。
※ 念仏滅罪-念仏をとなえることにより、すべての罪が許されて、極楽往生できること。
※ 密旨(みっし)- 秘密の命令。内々の命令。


我が朝にても、諸宗の祖になる程の僧は、この旨を互いに心をとて心に伝えて、仮にも、浄土、地獄の沙汰を浮きたる事とはいわず。今、源空が誓いも相伝の旨なるべし。九条殿の生れるべき浄土もなく、源空が堕るべき地獄もなし。されば無をもて有とし、虚をもて実として、衆生に生死を出離さする法とするは、釈迦の本意に叶えり。それはいさゝか偽りなきことなり。もし吾が儒、至誠をもて人を教化する道をいわば、雲泥の沙汰なるべし。
※ 浮きたる事 - 根拠がなく、事実から離れていること。
※ 相伝(そうでん)ー ある物事を何代にもわたって受け継いで伝えること。
※ 生死を出離(しゅつり)-(仏)生死の苦がある現世を離れて、悟りの境地に入ること。
※ 雲泥の沙汰 - 天にある雲と地にある泥。はなはだしく懸け離れているたとえ。もちろん、儒を「雲」仏を「泥」と言いたいのであろう。
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