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「丸尾文六報恩碑」を読み解く その3

(ヤツデの花、子供の頃はよくお目にかかったが、
近年はまったく見ることは無かった)

昨日の文学散歩で、築山御前(瀬名姫)が葬られた西来院でヤツデの花を見た。花にはアブがいっぱい集っていた。

午後、駿河古文書会に出席する。

「丸尾文六報恩碑」の解読の続き。
大人(文六)資性英邁篤実、幼きより学を好み、嘗(かつ)安居院翁を聘(まね)き、報徳の教えを受く。石川依平翁に就いて、和歌を学ぶ。その家系及び政治教育など功業、已(すで)に、榎本農商務大臣所撰、頌徳碑に備わる。
※ 資性(しせい)- 生まれつきの性質や能力。資質。天性。
※ 英邁(えいまい)- 特別に才知がすぐれていること。
※ 篤実(とくじつ)- 情が深く誠実なこと。
※ 安居院翁(あぐいおう)- 安居院義道。江戸期の農業指導者及び報徳運動家。
※ 報徳の教え(れい)- 二宮尊徳が説き広めた道徳思想。関東から東海地方に広まる。現在、大日本報徳社の本社が掛川市に置かれている。
※ 石川依平(いしかわよりひら)- 江戸後期の国学者。歌人。遠江国佐野郡伊達方村生。
※ 功業(こうぎょう)- 功績の著しい事業。また、功績。てがら。
※ 榎本農商務大臣 - 榎本武揚。幕臣。戊辰戦争後、明治政府に出仕した。


余、数年来、令嗣鎌三郎と令孫文雄、二君に交わる。皆な温厚、篤實、先徳紹述するに足りて、文雄君、農科大学を卒業し、研精を持ち、茶業また以って国利民福を謀るを為すのみ。その任、家声を墜さざるなり。知るべし。これ豈に大人積徳の余慶に非ざらんや。
※ 頌徳(しょうとく)- 徳をたたえること。
※ 令嗣(れいし)- 他人の家の跡継ぎを敬っていう語。
※ 令孫(れいそん)- 他人を敬って、その孫をいう語。
※ 先徳(せんとく)- 徳のある先人。また、先人の徳。
※ 紹述(しょうじゅつ)- 先人の業を受け継いで、それに従って行うこと。
※ 研精(けんせい)- 精密な研究。
※ 家声(かせい)- 家全体の誉れ。一家の名声。
※ 余慶(よけい)- 先人のおかげ。


銘曰く、
     誠實利國  仁慈救民  良圃月拓  功業日新
     螽斯之羽  保厥懿親  甘棠之詠  仰止如神

※ 螽斯(しゅうし)- イナゴの別名。(イナゴは 群集し、数多く産卵するところから転じて)子孫が繁栄すること。
※ 懿親(いしん)- うるわしく親しみのある親族の間柄。
※ 甘棠(かんとう)- からなし。(小りんごのこと)。(昔、中国で立派な為政者が、甘棠の下で民の声を聴き、善政を敷いた故事から)民が為政者を慕うこと。


(銘の意訳、七五調で)
誠実にして国を利し、情け深くて民救い、銘茶の畑を次々と、功績てがら日々新た。
イナゴのごとく子孫増え、情愛深き家族持ち、為政者慕う歌を詠み、神の如くに仰ぎみる。


明治四十五年二月十一日 双松学舎橋本孫一郎撰 松塢平岩高暉書 坂田鳴鳳
※ 双松学舎 - 静岡県小笠郡(旧)小笠町猿渡にあった私塾。
※ 橋本孫一郎 - 橋本鶴堂。双松学舎の創立者。
※ 鐫(せん)- 彫る。

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