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「水濃徃方」の解読 11




(静居寺のボタン)

午前中、思い付いて、女房と静居寺のボタンを見に行った。昨日の大雨で傷んだり、花びらを落したものも見受けられたが、残ったものも多く有り、堪能できた。池でザリガニ釣りしている親子も居て、少しずつ日常が帰ってきているが、背後に第四波が迫っていて、不気味である。

夜、区の総会に付いて打合せ。第四波を危惧して、今年も総会は資料を廻して済ませるようだ。その準備の段取りを打ち合わせる。

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「水濃徃方」の解読を続ける 。

いわば道中双六、人通りの多い春夏は、一人旅も心強い。行くも帰るも別れては、知らぬ人さえ便りになって、追いはぎの恐れもなく、戻り馬戻り駕(かご)通用(つうよう)が、よいじゃないか。町もに住むもその道理。
※ 戻り馬(もどりうま)➜ 荷物や客を運びおわった帰りの馬。
※ 戻り駕(もどりかご)➜ 戻り駕籠。客を乗せて送ったあとの、帰りの駕籠。
※ 通用(つうよう)➜ ある期間・範囲内で、自由に使えること。

近き頃、ある田舎に、「紙屑」と異名取りたる木綿売り、江戸に住んでは、近所隣りの付き合いだけ損じゃと、一ッ家を買いて、毎日/\江戸への通い商い。餅、茶のこ配る費(つい)えなく、戻りには紙屑拾うて包(つつ)んで帰る故の仇名。金の溜まる事、吹き廻しの雪の如く増える時に、盗人(ぬすっと)気遣(きづか)い、四方高柵、忍び返し。ある夜、何者の業とも知らず、親子三人ともに切り倒して、有金残らずもて行きぬ。いずくより誰が業(わざ)とも知れず。残りの家財は少しの知る辺の物となりたり。盗人の用心は、迯(に)げる時の邪魔になり、勘(かんが)え過ぎての一ツ家たれ。
※ 木綿売り(もめんうり)➜ 木綿物を売り歩くこと。また、その人。
※ 茶のこ(ちゃのこ)➜ 茶の子。お茶請けのお菓子。
※ 知る辺(しるべ)➜ 知っている人。知り合い。

(たす)ける者もなく、(あさ)ましい身の果て。その様な目にも会わぬは、向三軒両隣のお影(蔭)、それのみならず、お身達が仕事にも、友、朋輩、一所(一緒)木遣り云うたり、連れで出て、連れで戻れば、骨折り、遠道(とおみち)、苦にならぬ。相持(あいもち)の世、就中(なかんずく)、病い煩(わずら)い、公事訴詔、取持がて、人の憎まぬ事は、身を入れて世話してやるかよい。
※ 浅間しい(あさましい)➜ あまりにもひどい。程度がはなはだしい。
※ 向三軒両隣(むこうさんげんりょうどなり)➜ 自分の家の向かい側三軒の家と、左右二軒の隣家。日常親しく交際する近隣の称。
※ お身達(おみたち)➜ あなたがた。「お身」は、二人称の人代名詞。対等またはそれに近い相手に用いる。
※ 木遣り(きやり)➜ 木遣り歌。民謡の一。大木や岩を大ぜいで運ぶときにうたう仕事歌。
※ 相持(あいもち)➜ 互いに助け合う関係にあること。持ち合い。
※ 取持がて(とりもちがて)➜ 取り持ちついで。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「浪人奉行 五ノ巻」 稲葉稔 著
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