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江戸繁昌記初篇 30 両国の花火 2

(御開帳の千葉山智満寺)

午前中に、島田の千葉山智満寺の御開帳を拝観に、女房と行く。平日であったが、けっこう拝観客が次々と見えた。

阿蘇山が噴火して、ニュースを騒がせている。

「江戸繁昌記初篇」の解読を続ける。

予、甞(かつ)て両国橋を過ぐ。會々(たまたま)烟火空を燭し、人群、潮の如し。相推(お)すこと甚だ急にして、人為し、毆(う)たるるが如きこと数回、気憤(ふん)す。然るも顧ることを得ず。少なく緩(ゆる)み、復た毆(う)つ。始めて知る。悪少年の戯(面白半分)に西瓜の皮を抛(なげう)ち、人を誑(たぶらか)すことを。雑踏想うべし。

奥山よりこれに至る数件の光景は、予が二十年前の観る所爾(のみ)物星換移、新奇、月に生じ、妙伎、歳に出づ。然るに、予、読書生と為らんより、未だ奔走に衣食して、一日縦遊せず。且つ、跋渉して口を糊する。都下に居る日もまた少なし。未だ、今日、前日と同じきや否やを知らず。
※ 物星換移(ぶっせいかんい)- 物換星移。世の中が移り変わること。
※ 縦遊(しょうゆう)- 気のむくままに遊ぶこと。気ままに諸方 をめぐり歩くこと。
※ 跋渉(ばっしょう)- 山野を越え、川をわたり、各地を歩き回ること。
※ 口を糊する(くちをのりする)- やっと暮らしをたてる。(「糊する」はかゆをすする意)


両国また諸伎名人の淵薮、近日三童子脚伎の妙、評高し。偶々(たまたま)田舎客有り。予、拉きて、往きて一観を試さんと請う。輙ち往く。三童子、馬吉と曰(い)い、亀吉と曰い、松之助と曰う。場を橋東に開く。こは則ち、予が今日の目撃する所なり。
※ 淵薮(えんそう)- 物事の寄り集まる所。
※ 脚伎(きゃくぎ)- 足芸。仰向けに寝て足だけで種々の技をおこなう曲芸。足先で樽・盥などを回したりする。
※ 拉く(ひく)- 両手でひっぱる。強引に連れていく。


鼓角節を打ちし。説き白(もう)し、状を宣す。並びに常例の如く、台上一坐の高牀(たかとこ)、紅氈を鋪き、嚢枕を安ず。小童出て拜す。幹人抱き上らせ、これをして横臥せしむ。双脚天に朝す。傍らより一桶を以って、その踵(かかと)上に置く。承け得て停当なれば、則ち旋(まわ)し、これを運(めぐら)す。運し得て鈞(ひと)しく運(めぐ)り、水渦まく。遂に蹴りて、これを弄び、投げ承け縦横、魚驚き、雀躍る。節に応じ、曲に合わす。
※ 鼓角(こかく)- つづみと角笛。古く中国で、陣中に合図に用いた。
※ 節を打つ(せつをうつ)- 始りの時間を知らせる。
※ 紅氈(こうせん)- 赤い毛氈。
※ 囊枕(のうちん)- ふくろまくら。
※ 幹人(かんじん)- 親方。
※ 天に朝す(てんにちょうす)- 天に向う。
※ 停当(ていとう)- きちんと整っている。
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