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古文書解読基礎講座始まる

(中村典夫講師)

今夜、靜岡市立中央図書館で開催された古文書解読基礎講座の第1回に参加した。講師は、駿河古文書会副会長の中村典夫氏である。

靜岡市立中央図書館は城北公園内にあり、駐車場が夜間はない。最初にそのことは受け付けてくれた図書館の女性にも言われた。それで夕方5時にJRで出かけた。松坂屋前の駅前バス停から、静鉄ジャストラインの安東循環という市内循環バスに乗った。座席数が10数席しかないミニバスだった。昔、城北公園がまだ靜岡大学のキャンパスだったころ、循環バスは安東循環以外に大岩循環などというバスもあり、大きなバスに客が満載だった。ミニバスの乗客は結局降りるまで自分一人であった。当分、このバスにお世話になることになる。バス賃は180円。

講座は6時30分からであったが、30分前には会場に着いた。受付で自分の名前に丸を付けて、係りの女性に聞くと、申込者は50数名ほどあったという。定員80名というから、まずまずの生徒数だろう。これで駐車場があればもっと受講者が増えるのだろうが。

定刻に、中央図書館長の挨拶から始まった。静岡市には12の図書館があり、蔵書の総数が200万冊に及び、人口当たりの蔵書数では政令指定都市の中で最も多い。また貸出数でも2番目に多く、市民の皆様のご理解とご利用のたまものと感謝しているなどと、話があった。

講義は「基礎講座」と銘打っただけに、ごく初歩からやってくれた。

古文書には、地方、町方、武家、寺社、写本、版(板)本の種類があり、町方の古文書は、その多くが天災や戦災で失われているため、古文書で圧倒的に多いのは、農村の名主、庄屋、村役人などが残した地方(じかた)の古文書である。古文書の講座で使われるのも大部分は地方の古文書である。

本日のテーマは「草仮名」に付いてである。すべて漢字で書かれた万葉集で、読みだけに使った漢字は1000種類近くあり、万葉仮名と呼ばれている。万葉仮名が1000年ほどの間に草書化して、江戸時代には約300種類ほどに集約された。これを我々は「草仮名」と呼んでいる。

明治33年に小学校令が出て、ひらがながそれぞれ一かな一文字に限定され、それ以外は小学校で教えることが禁じられた。以来、小学校で教える仮名が正字で、それ以外の仮名は「変体仮名」と呼ばれ、区別されるようになった。しかし、江戸時代には正字と変体の差はなく、どちらも全く同等に正しい仮名であった。一つの文章で同じ仮名を何度も使うのは芸がないとして、あえて別の草仮名を使うほどであった。だから、自分は「変体仮名」という分け方をせずに、合わせて「草仮名」と呼んでいる。

教材になった古文書は、300年ほど前、正徳3年頃の版本文書で、「近道子宝」という寺子屋で教科書として使われた文書の、冒頭のごく一部である。大きな文字で判りやすい。特に色々な平かなが出てくるために教材としたのであろう。

以下へ解読したそのままを書く。なおカッコ内は仮名の元になった漢字(「字母」という)を示した。

人の行儀作法物書事を(遠)第一に(尓)教ゆへしいろはの四十八字を(越)初と(登)して仮名真名を(越)ならふへし物を書ざる(類)ハ人間に(尓)あらさる也よミも(毛)のは手習状実語教江戸往来今川庭訓之往来其外様々あり(里)其上に(尓)ハ大学中庸論語孟子の四書を専に(尓)よむへきなり夫人間乃入用の物の(能)なくて不叶ハ着も(毛)のと喰物と家と三色也先絹といふものハ蚕と云虫の巣よ(与)り糸を引取て織也木綿と云ハ草の穂也麻といふ(婦)ハ草の(能)皮なり(利)

同じく書き下して書く。

人の行儀作法、物書く事を第一に教ゆべし。いろはの四十八字を初めとして、仮名、真名をならうべし。物を書かざるは人間にあらざる也。よみものは手習状、実語教、江戸往来、今川(状)、庭訓之往来、其外様々あり。其上には大学、中庸、論語、孟子の四書を専らによむべきなり。夫れ人間の入用の物の、なくて叶わざるは着るものと喰い物と家と、三色也。先ず絹といふものは蚕と云う虫の巣より糸を引き取りて織る也。木綿と云うは草の穂也。麻というは草の皮なり。

寺子屋のごく最初の教科書である。理科とか社会という科目は無いから、寺子屋では、読み書きを教えながら、同時に色々な知識を教えた。

10時前にようやく帰宅した。
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