書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

橋本萬太郎/鈴木孝夫/山田尚勇編著 『漢字民族の決断 漢字の将来に向けて』

2018年01月12日 | 人文科学
 編著者のひとり鈴木孝夫氏は「第1部第1章 文字と言語の問題について」において、日本語には同音類義語・異義語が多いだけでなく、同音衝突の原理に反して、同音語でも表記を変えることによって「微細な意味の違いを区別」し、「同音語が逆に意識的にどんどん作り出される」と指摘する。氏はその理由として、「日本人にとって言語というのは、音だけで情報が区別されるものではなく、字面(表記)も必要」であり、「見て初めて情報は完結するという仕組みになっている」からだと言う。そして、日本語とは「二つの違った、視覚と聴覚という二次元の交点に成立する言語」であり、「目という視角の次元を音声次元に加えるという例外的なテレビ型の言語」なのだと主張される(同章、13頁)。

 興味深いのでメモ。

(大修館書店 1987年6月)