書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

レイモンド・W. ギブズ Jr.著 小野滋/出原健一/八木健太郎訳 『比喩と認知』

2018年09月21日 | 人文科学
 副題:「心とことばの認知科学」
 出版社による紹介

 昼間に「隠喩は内包の同一性を梃子に作られる云々」(私の理解による要約)という意見をネットで見たので、こちらはどう言っているか確かめた。そんなことは書いていない。たぶんそうではないかとは予測していた。この意見が正しいなら内包の概念のない文化や言語に隠喩は存在しないことになるからだ。
 それより換喩(メトニミー)についての記述が気になった(第7章)。筆者はメトニミーを、「あるもののよく知られていたり捉えやすい側面が、そのもの全体を表したり、代替していると捉える」(381頁)とするのだが、これはつまり、おなじものでも、その“よく知られていたり捉えやすい側面”は、言語や文化によって、また同一の言語や文化内においてさえ、地域ごと、社会階層ごとに、異なってくるだろうということである。

(研究社 2008年6月)