書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

「一寸の虫にも五分の魂」と「匹夫不可奪其志」の差

2015年12月26日 | 思考の断片
 「一寸の虫にも五分の魂」の中国語(漢語)における同様の含意をもった諺(成語)はあるかとネットで検索してみた。「匹夫不可奪其志(匹夫もその志を奪うべからず)」(『論語』「子罕」篇)を見出した。これはそうかもしれぬと思った。
 だが、この言葉はどうやら人間個人個人の尊厳を述べたもので、「一寸の虫にも...」にはやや含まれているように思える、人間の平等を言ったものではなさそうである。
 この点に関しては、「王侯将相寧有種乎(王侯将相寧んぞ種有らんや)」のほうが、比べれてみればまだ近いかもしれない。だがこの言葉は、万人の平等を求めるのではなく、自分(達)とそれ以外の人間の不平等を好しとする主張である。己は特別・例外なのである。ここにおいて、その考え方は自身が敵として倒そうとする相手となんらかわらない。同じ人物が言ったとされる「燕雀安知鴻鵠之志哉(燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや)」からも、そのことは推察できる。