書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

田窪行則編 『琉球列島の言語と文化 その記録と継承』

2015年12月27日 | 抜き書き
 出版社による紹介

 トマ・ペラール「日本列島の言語の多様性―琉球諸語を中心に―」に、「相互理解性」についての言及がある。

 二つの言語体系がお互いに通じない場合はそれらが同一言語の方言ではなく別の言語と考える。
 (82頁)

 しかしアイヌ語とは違って系統的に日本語と近い関係にある琉球列島や八丈島のことばでも本土のその方言とも通じない。たとえば琉球列島の最北の喜界島とそのすぐ北にあるトカラ列島や九州の方言とは大きく異なっており、相互理解が不可能である。さらに、琉球列島のなかでもことばが通じない地域が存在している。 (82-83頁)

 2009年にUNESCO(国連教育科学文化機関)が、日本には消滅の危機に瀕している言語が8つもあると認定した。アイヌ語の例はよく知られているが、その他に八丈島の八丈語と琉球列島の奄美語・国頭語・沖縄語・宮古語・八重山語・与那国語が取り上げられた。 (82頁)

 琉球諸語は基礎語彙を80~85%共有している一方、日本語とは70%ほどしか共有していない〔略〕。琉球諸語と日本語とのこの距離はロシア語・ポーランド語・ブルガリア語・セルビアクロアチア語等を含むスラヴ語族内の多様性に近い。また、ドイツ語とオランダ語との距離やスペイン語とポルトガル語との距離よりも大きい。
 (83頁)

 以上のことから、複数の『琉球諸語』を認め、日本語を単一言語ではなく多様な語族とみなし、『日琉語族』という名称を使った方が妥当と思われる。
 (83頁)

(くろしお出版 2013年11月)