「序論 アジア的視野から日本文化の成立を考える 第二章 東アジアにおける民族文化のダイナミズム――紀元前一〇〇〇年紀を中心とした文化変動―― 一 東アジアにおける言語類型とその変化」に、“統辞構造の変化”として、通時的には殷と周の言語の順行構造・逆行構造の差異および前者から後者への変化、共時的には東アジア地域におけるその南北で北の逆行構造から南の順行構造への言語分布のグラデーション状の変化が存在する事実について、橋本萬太郎説を借りて言及がなされている。また“越文化とその特色――エバーハルトの学説を中心に”では、エバーハルトの『中国史概説』が紹介され、彼の「八つの地方文化」論が取り上げられて いる。エバーハルトの説では、この八つのなかの一である越文化は、もともと焼畑農耕の山地民の瑶文化と水田耕作をのタイ文化とが混成することによって成立した混合文化だった(60頁)のであり、そしてその瑶文化は照葉樹林文化であるとして、エバーハルト説と佐々木論とが結びつくわけである。橋本説にせよエバーハルト説にせよ、却って本来の中国史・東洋史において昨今個人的にはあまり出会っていないので、懐かしい感じがした。
(小学館 1997年3月)
(小学館 1997年3月)