書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

沖森卓也編 『図説 日本の辞書』

2017年11月17日 | 人文科学
 執筆:木村一/木村義之/陳力衛/山本真吾。

 2017年11月09日「杉本つとむ『江戸時代蘭語学の成立とその展開〈第3部〉対訳語彙集および辞典の研究』」より続き。
 日本語で「いろは」順が確立したのは11世紀半ば頃だが五十音順は遅く現在の順番で確定するのは17世紀以降のことだという(沖森卓也「第一部 日本辞書概説」“2 日本における辞書の歴史” 本書12-13頁)。確立していなければ辞書の配列順序には使えない。これで答えが出た。
 それでも室町時代あたりから五十音を配列原理にした仮名引き辞書が現れる由(18頁)。そして明治時代以後は大槻文彦の『言海』(1889~1991年)以後、五十音引きが我が国国語辞典の主流となる(21頁)。

 11月17日付記。

 明治政府が編みかけて中絶した『語彙』という辞書は、本書108-109頁の同項によれば、配列が五十音順であることのほか、語釈がたんなる類義語での言い換えではなく「文による説明を加えている点は後世の国語辞書に与えた影響は少なくない」(陳力衛執筆)。ではそれまでの、こんにち国語辞典と分類しうるものの本質は、シソーラスであったのかという疑問が起こる。

(おうふう 2008年10月)