書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

本多熊太郎 『魂の外交 日露戦争に於ける小村侯』 から

2009年04月11日 | 抜き書き
 外箱に「小村寿太郎侯三十年祭記念版」との表記あり。

 要するに日本は何処迄もルーズヴエルトの力を藉りて講和会議に臨む。併しながら講和談判の内容とか条件には一切指図させないと云ふ訳である。併し我方に取つて大事な問題――条件とは云はない――がある。例へば、朝鮮は再び国際紛糾の源にさしてはいけない。之に対しては日本は指導・保護・管理の権、即ち朝鮮保護を設定しなければならぬ。遼東半島を取るのは当然だし、満州は施政改革及び善政の保障の下に支那に還付するのだと云ふような事柄は、ちゃんと(原文傍点)ルーズヴエルトに吹込せてある。償金も取るのが本当と思ふと、之はいけないぞとル氏に言はせないやうにした。和戦何れの段階に於ても飽迄露西亜と日本だけに限る。さうして置いて日本に都合の好い時には、外部の勢力を巧に我が目的貫徹に利用しよう。而して其の利用の目的を十二分に達したのは小村さんの外交である。 (「日露戦争と小村侯」 本書285頁)

(千倉書房 1941年11月)

「中国元国家主席の次女が墓参り 佐世保、父の病気治した医師にお礼」

2009年04月11日 | 抜き書き
▲「龍~なが 長崎新聞ホームページ」2009年4月11日。 (部分)
 〈http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20090411/03.shtml

 戦後の混乱期、後に中国の国家主席となる故・李先念氏の病気を治した恩人にお礼を言いたいと、次女の李小林・中国人民対外友好協会常務副会長(55)が十日、佐世保市八幡町の井上芳雄医師の墓を訪れた。対面した遺族には父から託された感謝の言葉を伝えた。
 〔中略〕
 墓参した李副会長は花束をささげ中国式の三度の礼で井上医師を追悼後、遺族と懇談。「父だけでなく湖北省住民の病気を治してくれた」と、元主席から聞いた井上医師の分け隔てない医療姿勢を遺族に紹介した。「井戸水を飲むとき、井戸を堀った人の恩を忘れない」という中国の格言を引き、同省にある李元主席記念館に井上医師の写真を展示したいと提案、訪中を求めた。

 もちろんただの美談というだけではあるまい。しかし、この李先念の娘さんの態度は須藤五百三を殺人犯呼ばわりした魯迅のドラ息子のそれとは天地の差がある。

→2003年3月17日、「許広平著 松井博光訳 『魯迅回想録』(筑摩書房)
→2003年7月25日、「周海嬰著 岸田登美子・瀬川千秋・樋口裕子訳 『わが父魯迅』(集英社)