書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

上田信 『伝統中国 〈盆地〉〈宗族〉にみる明清時代』 から

2009年04月29日 | 思考の断片
 漢族が〈気〉の思想を生み出したと考えるべきものではなく、〈気〉の発想が生まれたときに漢族が成立したと考えるべきであろう。 (「第二章 親子関係は宗族(リニージ)をどう生み出すか」 本書93頁)

 気とは「漢族の発想の根底にある感覚なのであり、これ以上は因数分解できない素数のような言葉である」(93頁)とも。
 気は万物を構成する基本要素でもあるが、原子論を中国人(漢族)が受け入れることができないのは、受け入れると自らの存在が消滅してしまうからか。その原子論を背景に生まれた西洋の個人主義を排斥するのも理由は同じか。気の概念から導き出されるのは集団主義もしくは全体主義だから。

(講談社 1995年1月)