書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

狭間直樹 『中国社会主義の黎明』 

2005年06月14日 | 東洋史
“(康有為や梁啓超などの)改良主義が体制の擁護者としての反革命の本質を暴露せざるをえないということ自体、革命的高揚の時代が到来したことを、なににもまして鮮明にうつしだす鏡だったのである。かくして、一九〇五年のロシア革命によってきりひらかれたアジア全域での封建専制支配の崩壊の時代に、出版ジャーナリズムという革命闘争の瞰制高地をしめた中国のブルジョア革命派は、民族、民権、民生の三民主義をかかげて理論闘争をたたかいぬき、世論の準備をおこなった。と同時に、かれらは実力闘争をいささかも軽視することなく武装蜂起に邁進し、やがてアジア最初の共和国の樹立に‘成功’することになる” (序章「『民報』発刊1周年記念集会」 同書15-16頁)

 先ず以て全体的にイタい。この文章など、“アジア全域”と言うからには、日本だけでなく清と李氏朝鮮はいわずもがな、仏領インドシナ(ベトナム)やフィリピンや蘭領東インド(インドネシア)や英領インドも封建国家だったということか。もともと非常識な人だが(→2001年11月28日『世界の歴史 27 自立へ向かうアジア』)、これはイタすぎる。

(岩波書店 1976年8月)

伊藤整ほか編 『日本現代文学全集』 75 「井伏鱒二・永井龍男集」

2005年06月14日 | 文学
 井伏鱒二――文章は確かに上手い。作品自体で読ませる。(『厄除け詩集』が抄録されているのはいいが、于武陵の「勧酒」が入っていないのはやや不満也。人生別離足る。「サヨナラ」ダケガ人生ダ。)

 永井龍男――こちらは同業者と愛読者以外には読んでもらおうという気がない書きぶりである。

(講談社 1962年2月)

▲女性国際戦犯法廷(2003年8月7日秦郁彦『現代史の対決』参照)について、興味ある記事がある。
 
 →野村勝美「思考の断片(17) 正平協と朝鮮総連の相互乗入」   http://www.nomusan.com/~essay/essay_vatican_17.html
    (「ノムさんのエッセー」http://www.nomusan.com/~essay/index.html)