書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

イザベラ・バード著 高梨健吉訳 『日本奥地紀行』 

2005年05月15日 | 日本史
 NHKスペシャル『明治』第二集「模倣と独創 ~外国人が見た日本~」(2005年4月16日放映)で紹介されていた書籍である。
 イザベラ・バード(Isabella L. Bird)については以下を参照されたい。
   http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%B6%A5%D9%A5%E9%A1%A6%A5%D0%A1%BC%A5%C9
 
 番組では、近代化以前の日本に存在したいわば”美しき”いにしえの日本と日本人の淳風美俗を書き残した旅行記として紹介されていたが、一面的なとらえ方ではないかと思える。

“彼ら(日本人)は、あぐらをかいたり、頭を下げてしゃがみこんだりしているので、野蛮人と少しも変わらないように見える。彼らの風采や、彼らの生活態度に慎みの欠けていることは、実にぞっとするほどである。慎みに欠けているといえば、私がかつて一緒に暮らしたことのある数種の野蛮人と比較すると、非常に見劣りがする。(略)日本人の精神状態は、その(貧相で不潔な)肉体的状態よりも、はたしてずっと高いかどうか、私はしばしば考えるのである。彼らは礼儀正しく、やさしくて勤勉で、ひどい罪悪を犯すようなことは全くない。しかし、私が日本人と話をかわしたり、いろいろ多くのものを見た結果として、彼らの基本道徳の水準は非常に低いものであり、生活は誠実でもなければ清純でもない、と判断せざるをえない” (123-124頁)

 ちなみに、訳者の名は私にはとてもなじみ深い。中学の時から使い続けている『総解英文法』(美誠社 1974年3月第20刷)の著者である。

(平凡社 1980月7月初版第7刷)