書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

小野川秀美・島田虔次編著 『辛亥革命の研究』 

2005年02月03日 | 東洋史
 10数年ぶりに再読。内容をすっかり忘れている。前回は大学で東洋史学を専攻していた時だが、目次に寄稿者の一人に狭間直樹氏の名を見て、「なんだそんな本か」と、最初から真面目に読む気をなくしたためだった(狭間直樹氏に対する私の評価については、2001年11月28日欄、狭間直樹・長崎暢子著『世界の歴史 27 自立へ向かうアジア』参照)。
 必要に駆られてちゃんと読み返してみると、狭間氏の「南京臨時政府について――辛亥革命におけるブルジョア革命派の役割――」は存外ましな内容だった。少なくとも『世界の歴史』のように常軌を逸したたわごとは書かれていない。そして狭間氏以外の部分になると、素晴しい論文ぞろいでとても勉強になった。

(筑摩書房 1978年1月)

澤田隆治 『上方芸能列伝』 

2005年02月03日 | その他
 この人が1980年代の第一次漫才ブームの仕掛け人であることは知っていたが、『てなもんや三度笠』のディレクターだったとは知らなかった。
 この中で取り上げられるのは、主なところだけで横山エンタツ、花菱アチャコ、中田ダイマル・ラケット、ミヤコ喋々、南都雄二、都家文雄、人生幸朗・生恵幸子、高田浩吉、暁伸・ミスハワイ、ルーキー新一、正司敏江・玲児、曽我迺家五郎八、横山やすし・西川きよし、そして吉本興業会長・林正之助。
 富士正晴『桂春団治』(2002年3月31日欄)とこの本で、粗々ながら明治から昭和までの上方芸能通史になりそうである。両者に欠けている上方落語の昭和史、とくに戦後部分は、未読だが桂米朝師匠の自伝(『桂米朝 私の履歴書』 日本経済新聞社、2002年4月)をもってくれば、埋まるのでは。

(文藝春秋 1996年8月第2刷)