くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「アルテーミスの采配」真梨幸子

2015-12-04 20:33:39 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 三つめの「おかしなこと」がさっぱりわからず、ミズホやメグを見習ってウェビングみたいなことをしてみました。
 でも、やっぱりわからない。とりあえず分かったことをまとめてみますので、結構ネタバレしてます。
 「アルテーミスの采配」(幻冬舎)真梨幸子。
 アルテーミスとは、純潔と復讐の女神。そのメタファは、「二つの顔」だと思います。
 これは、登場する女たちの誰しも当てはまるのですが、いちばんしっくりくるのはゆなとミズホでしょう。歯科医師とAV女優。美と醜。しかも二人は、ブログの中では同じ人物です。
 また、州房出版の「アルテーミスの采配」という企画自体、AV女優の来歴をインタビューして、西園寺ミヤビがエッセイ化するというふれこみでありながら、社内では復讐代行サイトの告発として企画されていたこと。担当者は産休をとることになっていたのに、なんらかの理由をつけて資料を持ち去ります。
 ミズホの語る三つのおかしなこと。まず、「アルテーミスの采配」と題した出版企画のずれ。そして、担当者富岡の殺害です。
 でも冷静に考えると、この二つ、彼女にとっては自明ですよね。ライターとして下調べをしたのはミズホなのですし、女優たちや富岡の名前をブログに書き込んだのもそうです。
 だいたい、検索してもなかなかたどり着けないサイト(もともとダミーですから)に、あっさりアクセスしてソースまで解析していますし。
 ミズホとしては、「週刊リアル」の編集部に渚と移籍し、そこで両親のしたことに嫌悪を抱かせて破滅に導くつもりだったのでしょうか。
 
 冒頭のモノローグは、同じ場所に芽美がいることからもミズホの視点だと分かります。しかし、ゴーストライターの名賀尻の「あなたが」という驚きがよくわかりません。優秀なライターだということ? 
 それから、彼女にこの仕事を依頼した州房出版の編集者って? 富岡? 越谷? それとも、このメールは派遣編集としてのミズホに用があるのでしょうか。ゆな以外にも自分のブログ持ってたの? で、この誘いが「宝石」と判断される理由は?
 だって、結果的に渚を陥れることを優先した彼女は、殺人予告サイトと言われるようなブログに書き込み(筆者は亡くなっているのに……)、話題の「例の洋館」で撮影をするとメディアにメールで告知したのてすよね。
 ミズホは東大出身である女性の「デビュー作」を撮るようなニュアンスでいますが、警察に注目されてはいないのでしょうか。名賀尻が逃げ出したのだし、小田原からのIPが検索できたんですよね。
 ちがうのかな?
 結局三つめの謎はわたしにはわかりませんでしたが、ミズホ自身はそれをおかしいとは思っていないだろうということはわかりました。
 渚の旦那がなんだか非常によくわからない存在でした……。