くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「どうしてくれる!?」「これで解決!食の不思議」

2012-01-24 05:45:02 | 産業
アルバイトをしたのは、大学二年から三年にかけての一年半。ウェイトレスでした。ほかの職種をしたことはありません。
だから、結構背景が見えるんですよね。料理に虫が入ったとか、接客がよくなかったとか、筆者も言っていますが、よくあることです。もちろん、防ぐために注意はしますよ。
虫は、野菜の葉の影に残ることがある。五目そばに入っていたというので料理を作り直しましたが、同席したい彼女が、
「食欲がなくなるよね。同じものを食べたくないよね」と連呼。彼はほとんど食べていませんでした。
「どうしてくれる!? 店長1万人のクレーム対応術 37のトラブルから学ぶ対応術」(日経BP社)。著者は外食相談研究会。
その前に、「なるほど繁盛店 これで解決!食の不思議」(画・竹島未来)というまんがを読んでいて、どちらもレストランの経営とトラブルをおこしやすい問題に触れているなーと思っていたら、どちらも雑誌「日経レストラン」の連載記事だった。(時期はずれています)
クレーム対応というと、「社長を出せ!」ですよね。あの本もおもしろかった。
こちらで目についたのは、ごねてなんとか自分だけ得をしようとする人が増えているということです。あわよくば金銭の享受、ですね。
クレームの基本は、撃退ではなく「共感」。相手の怒りに寄り添うことが大切だそうです。言われてみれば、カッとなったときに火に油を注ぐような言動では困りますよね。水などをこぼして衣服を汚したら、綺麗なタオルを差し出す。クリーニングをする、代品を購入する、となった場合はそれなりの手順があるのですね。
料理をこぼしてしまうのは、相手への受け渡しがうまくいかないから。ううーん、わかりますわかります。しっかりつかまないうちに手を離してはいけません。
それから、相手の話は途中で遮らず、最後まで聞くこと。これも大切ですよね。(わたしは性格が雑なので、気をつけなくては……)
まんがの方でも、クレームに項目をさいていますが、「お客様と共に解決策を探る姿勢で臨む」「具体的な方法と結果を示す」なども納得ですね。ロールプレイングの練習も載っていて、これは「話す」授業でやってみてもいいかも。(今年はもう終わりましたが)
で、心理学で接客を分析する項目が興味深いと思います。「行動の反響」という原理があって、自分がどんな態度をとるかで相手の対応も変わってくるというんです。同じように、気の合う相手との会話では知らず知らず同じジェスチャーをしたり、口調が似てきたりする。手の表情(腕を組むとか、下げおろすとか)や立ち位置(斜め45度くらいが無難)にも意味があるそうです。
コーヒー・紅茶・生ビールのかたやも、いろいろとテクニックはあるようでしたが。ワインの「飲用適温と「料理との相性」の表がおもしろい。冷旨系(リンゴ酸系)にはさっぱり爽やかな食材、温旨系にはこってりスパイシーな食材が合うそうです。
「似たもの同士は相性が良い」ことから、例えばタコ。レモン・塩・しそなら白ワインに合いますが、キムチを載せると赤ワインに合うようになる。これが、キムチに生クリームをかけたソースを作ると、また白ワインに合うようになるんですって。
すごいなあー。
こういう内容の近い本を比べて読むのはおもしろいですね。ためになりました。(……何の?)

「奇跡のリンゴ」石川拓治

2010-09-06 05:09:03 | 産業
よく本屋で平積みになっていましたよね。ずっと気になっていたのですが。ノンフィクションものが好きなIちゃんが、感想文に書いてきたので読んでみました。
そしたら、おもしろいの。いやー、無農薬で林檎を育てたいという壮大な夢をもっているわけですから、並大抵の苦労ではないだろうと思ってはいたのですよ。でも、八年も成果が出ないなんて。年頃の娘さんたちを抱えながらどれほどの思いでやってきたのか。そう思うとなんだかしんみりしてしまいますよね。
おそらく木村さんの語りが、さらっとしていて明るいのでしょう。苦労話なのに、じっとりしてないのです。道半ばで自殺しようと思うパーツもあるのですよ。でも、そこでの発見がまさに起死回生。林檎づくりに光明が見えてくるのでした。
「奇跡のリンゴ 『絶対不可能』を覆した農家木村秋則の記録」(幻冬舎)。監修は、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班。著者は石川拓治。聞き書きを中心とした取材で書かれた本です。なんと、この本の執筆も木村さんの林檎畑で行われたそうですよ。
ただ農薬をやめることが、林檎を育てるわけではない。木を丈夫にするには、生態系のことを無視するわけにはいかない。
方舟にも例えられるこの畑、並の林檎畑ではありません。雑草が生い茂り、蜂や蛾が飛び回り、害虫も益虫もいる。台風がきても実が落ちなかったという頑丈な木。それは、つい数年前まで今にも枯れそうな木だったのです。花は秋に狂い咲き、そのために春は咲きません。葉はすぐ落ちてしまう。もちろん、実はなりません。
試行錯誤を繰り返し、今では無農薬栽培の第一人者として各地で講演や指導をも行っているという木村さん。無農薬林檎の夢にこだわり、農業機材を手放し、畑まで二時間かけて歩いたそうです。
わたしも農家(兼業)の娘。あれこれと手伝いをさせられてきました。さすがに農薬散布まではやらされませんでしたが、独自のえごったい感触が、まかれたあとは舌のあたりに残るので、結構辛いです。
だから、なんというか、木村さんの決断はすばらしいけど、そういう畑を作るのは勇気がいるだろうな、と思うのです。
草刈りもしない。害虫駆除もしない。荒れた畑。一見そんなふうに見えるでしょう。でも、独自の生態系の中で、林檎は力強く生きる。
そうだと予測できるとしても、これは一種の賭けです。まあ、それまでの経緯もかなりの大博打ではありますが。
植物が、人間が、生きるということ。自然の摂理によって生かされるということ。
本来の味をもった林檎、どんな味なのでしょう。食べたいですね。
木村さんが、無農薬野菜を広めたいと考えて価格を抑えるべきだと考えるのも、納得させられます。
わたしが子供のころ、もっとトマトはどっしりした味だったような気がします。今もトマトはみずみずしいものをもいできて(または完熟させて)食べていますが、あの味ではないような気がするのは、わたしの郷愁のせいでしょうか。

「ニッポン『もの物語』 なぜ回転寿司は右からやってくるのか」夏目幸明

2009-07-24 04:59:34 | 産業
知っていますか。東京都水道局の地下には、金魚が飼われているんですって。
「炭坑のカナリア」と同じように、水質に汚染がないかどうかを、金魚はつねに見守っている(?)のです。
知っていても実生活で役に立たないような知識が大好きです。そう、クイズなら得意なんですが。
この本も、ジュンク堂の棚の前でしばらく悩んだ果てに購入。でも買ってよかったですよー。迷っているくらいならすぐ買いましょう! トリビアルな知識満載です。おもしろい。
夏目幸明「ニッポン『もの物語』 なぜ回転寿司は右からやってくるのか」(講談社)。たしかに、回転寿司は右から来ますよね。これは人間の「利き目」に関わるからなんですって。機械を作っている会社のアイディアが秀逸です。おぉっ、こんなことまでできるんだー。ネーミングセンスに着目する著者に、ついくすっと笑ってしまいますよ。
この方、文章の流れがリズミカルで、とても読みやすい。わたしは、あとがきが好きですね。
雑学メインではありますが、それだけで終わっていないのがいいのです。モノづくりに関わる人のモノ語りが、ここにあります。
インスタントラーメンが食べたくなったりスーパーカブに感心したり、チロルチョコを買いに行きたくなったり、そしてこの本にはとりあげられていないモノの、背後にある歴史が気になってしまうのです。
連載分からのピックアップだそうなので、ほかの商品についても読みたいな。講談社さん、二冊め出してください。
「オーディオ」の項、世界最古の録音が解析されるのに百五十年もの年月が費やされたというエピソードがまたいいですねー。

インディラとともに

2008-12-20 06:50:20 | 産業

上野動物園にこの年になっても行ったことがない。修学旅行は、わたしたちの学年から北海道になり、その後も縁がないまま現在に至る。パンダ見に行けばよかったよ。
わたしは元園長中川志郎氏の文章が大好きで、「なるほど動物園」をはじめ、一時期著作を読みあさったことがある。ほぼ図書館で借りたので、書名は忘れてしまったが、ある文章を読んで泣いてしまい、即、コピーを取りに行った。この前、そのコピーを発見して久しぶりに読んだら、やっぱり泣いてしまった。
それは、ケンカで堀に落とされたインディラというゾウが、園内に出てしまったことから始まる。なんとかゾウ舎に戻そうと飼育係が総出で鎖をかけたものの、インディラは動こうとしない。そこに駆け付けたのは胃がんのため自宅療養をしていたベテラン飼育係の落合さん。彼に声をかけられると、あんなに抵抗していたインディラが、おとなしくゾウ舎に向かって行ったという。
で、この本をみつけた。川口幸男「インディラとともに」を読む。副題「上野動物園ゾウ係の飼育記録」。おや? このインディラって、あのインディラ?
ぱらぱらめくったところ、おぉっ、落合さんの写真が載っているではないの! 借りて帰って一時間半で読んた。落合さんが亡くなって、あとを任された川口さんが、ゾウたちの飼育に奮闘する。
あの事件で腰を傷めたインディラは、横になって眠ることができなくなった。立って寝るため、あちこちにケガをしている。うとうとすると体が倒れて、壁に激突するからだ。当然体も弱ってくる。何とか横にしようと奮闘する飼育係たちの姿は、お客さんの目にゾウをいじめているように写ったらしい。
読み終わって、家畜として飼い馴らされなかったゾウという生き物に、崇高な感じをも覚えた。以前、「星になった少年」の映画と原作を読んだけれど、そのときの映像も思い浮かぶ。愛をもってゾウに接した落合さんと、その思いを継いだ川口さんとの絆も美しい。
でも、奥付を見てびっくりした。NDC645? ってことは、これは産業部門。「畜産・獣医学」? むー、ハムスターの本がそういや近くにあったかも。「飼育記録」だからここに入っているのかな。