くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「あなたはここにいなくても」

2023-10-17 19:00:03 | 文芸・エンターテイメント
記録と記憶について考えさせられた。
離職とともに写真を焼いてしまう人。ホスピスに入る前に断捨離を決行する人。
「捨てる」ことだけではない、彼女たちなりの思いのつなぎ方。
渋皮煮を作る人も、旦那さんにリクエストする人も、気持ちは同じ。
物として残すこと、誰かの気持ちを後押しするために動くこと。
その人を喪って、改めて気づくこと……。
どうしてもいつか訪れる、いとしき人との別れを考えると、私たちは時と思いとを大切にしなくてはならないと感じました

「27000冊ガーデン」

2023-10-15 10:13:31 | ミステリ・サスペンス・ホラー
学校司書の駒子と書店員針谷が解決する本の謎。
殺人事件から祖母の読んだ本まで、多様な事件を、本を手がかりに追っていく。
理不尽な前任校の担当者、本当に嫌な奴ですね! 受験生が本を読むの、何が悪いんだ! 新しい司書さん、素敵だわ。
「罪の声」読みたくなりました。

教え子の羽多くんがかっこいい。これは惚れるよね。
そして、ラストの話を読んで、自分が高校のときの図書館には栗本薫が多数あったことを懐かしく思い出しました。
あのころは、JUNE小説の第一人者で、部活の先輩がよく借りていたな。
作中の女の子の、母親世代に該当する年代ですからね……

「偽りの春」

2023-10-10 17:39:26 | ミステリ・サスペンス・ホラー
元捜査一課の敏腕刑事ながら、現在は交番勤務の狩野雷太。
彼が捜査する事件を、加害者側から描く連作。倒叙ものです。
ランドセル、薔薇の花、蔵、彫刻等、今回も小道具に引かれました。
特に「見知らぬ親友」が好き。美容室で泣きそうになりました💧
「サロメの遺言」とセットです。

続編は「朝と夕の犯罪」
兄弟として育ったアサヒとユウヒ。
父の死が二人の道を分ける。
再会したユウヒから誘われたのは、ある偽装誘拐だった。
一見成功したかに思われたが…
第二部は、子どもを置き去りにして餓死させた23歳の女性を尋問する烏丸を視点に展開。
生き残った長男夕夜。彼は誰の子どもなのか。なぜ母親は、アパートに戻ることができなかったのか。

美織の絶望がひしひしと伝わってくる後半。つらい。
ラスト、平穏な生活が垣間見れてよかった。

「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」

2023-10-08 15:47:30 | ミステリ・サスペンス・ホラー
のどかな田舎町に暮らす仁美は、秋祭りの日に何者かが投入した毒で、母を失う。幼なじみの涼音、修一郎も弟妹が亡くなり、今までの暮らしが崩れ落ちていく。
親しみを感じていた近所の人々は、犯人と疑われる人を次々と糾弾する。

疑いが疑いを呼び、誰を信じられるのか。
大人になっても事件に縛られ続ける仁美たちだけれど、誰かを守ろうとする思いや葛藤が切なかったです。
しかし、和菓子屋の親父は腹が立ちますな。
久しぶりに急き立てられるように読みました(笑)
後半の、ペンダントの形のエピソードが素晴らしいです。

「事件は終わった」

2023-10-07 19:44:10 | ミステリ・サスペンス・ホラー
すごく、すごく優しい話だった。
想像していた展開とは違いました。
地下鉄でおきた悲惨な事件。死傷者もあり、PTSDに苦しむ人もいる。
拡散された事件の映像。階段から落ちて怪我をしたテニスの選手。彼を取材する報道部員。
「未来ドア」が印象的でした。尾辻さんの傷が辛い。

だけど、どの話にも救いがある。
苦しみは、見方が変われば解放につながっていく。
本編を貫くある謎が解決されたとき、「事件は終わった」のだと実感しました。
ただそれに費やされる時間は、マスコミが思うよりも長いかもしれません。

「教室が、ひとりになるまで」

2023-10-03 20:04:17 | ミステリ・サスペンス・ホラー
とてもよかった!

少しずつ嘘をついている登場人物たち。
「最高のクラス」「友達になれたと思ってた」「誰も殺してない」

金曜日の放課後は、全員参加でレク大会の話し合い。
でも、BBQの肉は回ってこないし、道化として笑われる姿が「最高」?
その歪みが違和感で。

そして、それが作者の企みであることが、後半で暴かれる。

読み終えて、檀が書いた「友達:いない」がつらかった。1年の間に燈花とのすれ違いがあったのでは。
だからこそ彼女も、「調律」を考えたのでしょう。

ラストが優しく美しい。
八重樫は青く見える人が嫌いなんだろうな、と思いました。

「ラブカは静かに弓を持つ」

2023-10-02 07:45:46 | 文芸・エンターテイメント
作品を重低音のように流れる、チェロの調べ。

ある事件のあとに、チェロに触れることができなくなった橘は、著作権をめぐる調査のためにミカサ音楽教室に通うことに。
次第に講師の浅葉や、受講生たちと親しさを増していく。しかし、リミットはどんどん近づいてきて……

「信じる」ことを考えさせる美しい物語。自分に頓着しない橘が、チェロへの思いを高めていく姿に心引かれます。
ヨー・ヨー・マのCDを引っ張り出して、時間をかけてまた読みたいと思わされる一冊でした。
「戦慄きのラブカ」、検索しちゃいましたよ! どんな曲なのか、聞いてみたい。

「木挽町のあだ討ち」

2023-10-01 15:49:57 | 時代小説
これ絶対面白い! 装丁読みです。
予感的中でした。

芝居小屋の裏手で行われた一幕もののような仇討。
時を経て、見事討ち取った若侍・菊之助の縁者を名乗る男が関係者に話を聞きにいく。
これが、隠された真実があることがどんどん明らかになっていくんですよ。

話者は意図的に語っているし、後半になるに従って芝居以上に芝居らしく演出されていることが分かるような構成・伏線が面白い。
そして、一人一人の経歴がとてもいい。人情をひしひしと感じさせます。
特に好きなのは、無口な久蔵(小道具作りの職人)とお内儀の与根の話「長屋の場」です

「おやごころ」

2023-09-30 09:46:30 | 時代小説
「まんまこと」シリーズも9冊目。
新妻の和歌と仲良く暮らす麻之助の、お気楽だけど奮闘する様子が描かれます。
もう何年にもわたって読んでいるので、私もすっかり髙橋家に馴染んだ気持ち。
江戸店でなくなった品物探し。夫婦の揉め事。こじれた縁談。
そして、待望の赤子が誕生。
前妻を産褥で失ったことから、非常に不安を感じていた麻之助。
私自身も、そのあたりには個人的に辛いことがあり、当時「ときぐすり」という言葉に慰めを感じたものでした。
失った日は、帰らない。
だけど、新たな希望は生まれる。
いつの間にか、あの日から十年経っていました……。

「六人の嘘つきな大学生」

2023-09-30 06:50:20 | ミステリ・サスペンス・ホラー
就職のためのグループディスカッションのために集まった大学生六人。
和やかに始まる筈だった会は、お互いの秘密を暴露する封筒が現れたことで一変する。
誰が、選ばれる一人になるのか。
それは「犯人」で間違いないのか。
緊迫感とユーモアのバランスが、とてもよかった。
久しぶりに日付変わっても読んでました。そのあともなかなか寝つけないほど……
袴田くん(187㌢)が石巻出身なのが親近感あって楽しかった(笑)