魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

モヨウカスベ

2016年11月17日 20時04分53秒 | 魚紹介

久しぶりの軟骨魚。ガンギエイ目・ガンギエイ科・コモンカスベ属のモヨウカスベ。

ガンギエイ科の多くの種は尾部に大きく鋭い棘があるので要注意であるが、アカエイのような大きく強い毒棘はない。ガンギエイの仲間の尾部背面にある棘は雌雄にとって棘列の数が違う。雄は3列、雌は5列であることが多い。またアカエイなどと異なるところはほかにもある。ガンギエイの仲間には尾鰭があるのだが、アカエイの仲間の尾部はムチのようになっており、先端には尾鰭がない。さらにガンギエイの仲間は卵を産むのが異なる。ガンギエイの仲間は卵生なのだが、アカエイやトビエイ、シビレエイといったエイなどは仔魚の状態で見られる。

モヨウカスベの尾部。鋭い無毒の棘が数列ある。小さい背鰭と尾鰭がある。

アカエイ科魚類の尾部。ムチ状で大きな毒棘があり、尾鰭はない。

コモンカスベ属は日本からインド洋に広く分布し、約15種が知られている。日本産は6種。海外では21世紀以降も新種が次々と記載されているが、軟骨魚類では多くの種が分類学的再検討がすすめられているところである。日本産のコモンカスベ属でもすこし怪しいものがいるようで、この仲間の総数はさらに増えるに違いないだろう。ガンギエイ科の魚は深海に生息しているものも多いが、この属は比較的浅い海に多く、沿岸の水深数mの海底に生息していることが多い。刺網、小型底曳網、定置網などで漁獲される。モヨウカスベは水深数10m~150mほどの海底に生息していて、この仲間ではやや深場にいるものともいえる。

モヨウカスベの肛門付近。ロレンチニ瓶が腹鰭前葉基部の後方にも分布している。水色の矢印がロレンチニ瓶。ロレンチニ瓶というのはイタリアの学者ステファノ・ロレンチニにちなみ「ロレンチニ氏瓶」とも呼ばれる

実はこのエイはモヨウカスベか、あるいはツマリカスベなのかははっきりしないというところがある。それが腹鰭前葉部の後方にも少々ロレンチニ瓶の開口部が分布しているからである。ツマリカスベは腹鰭前葉部の後方にロレンチニ瓶が分布していないことになっているからであり、モヨウカスベとした。ただその違いが本当に微妙なのである。だからこの仲間を同定するのに、上から見た写真だけで「これはなんでしょうか」と聞かれても答えられない。若干背面の模様が違うような気もするが、これが本当に同定に使えるのかはわからない。いずれにせよ、もっと多くの標本を見ることができれば、背面の模様も同定のキーに使えるようになるのかもしれない。

ガンギエイの仲間も種類が多いのだが、あまり利用される種は多くない。ガンギエイの仲間を食べる地域は意外と限られているのかもしれない。北海道や東北などでは食うが、四国や九州においてはあまり利用されていないようだ。従来は以西底曳網でよく獲られていて、食用になっていたようだが、漁獲量の減少、もしくは減船の影響で水揚げされなくなったのかもしれない。北海道では盛んに漁獲されているが、それは大型種が多いようだ。韓国ではガンギエイの仲間は好んで捕食される。

今回は唐揚げ粉を使って素揚げにした。これが本当にうまい。実はガンギエイの仲間を食するのは初めてであったのだが、これはもっと売れてもよいと思った。骨は若干あるものの、やわらかく骨ごとバリバリ食すことができる。調理にも包丁は必要ないし、キッチン用のハサミがあれば簡単にさばける。たくじーさん、ありがとうございました!!

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アミモンガラ

2016年11月15日 13時33分25秒 | 魚紹介

昨日までは北海道シリーズでしたが今日は小休止。日曜日に長崎からやってきた面白い魚「アミモンガラ」のご紹介。フグ目・モンガラカワハギ科・アミモンガラ属の魚。アミモンガラ属は世界で3ないし4種が知られているが、日本産は1種のみ。

高知県産の幼魚

 

幼魚は丸っこい形であるが、成魚はかなり細めの体をしている。また幼魚と成魚では尾鰭の形も少し違う。幼魚は尾鰭の後縁が丸いが、成魚では二重湾入系に近い形になるようだ。体には小さな白色斑があるが、これは出るものと出ないものがいるよう。今回は2匹入手したが、片方の個体には多数の白色斑があり、もう片方の個体にはあまり出なかった。

流れ藻につく習性があり、モンガラカワハギ科としては非常に広い範囲に分布している。日本では北海道~沖縄にまで分布し、本州にも太平洋岸・日本海岸問わず見ることができる。海外では地中海をのぞき、ほぼ世界じゅうの熱帯~温帯海域から記録されている。アミモンガラは夏から秋にかけて幼魚が流れ藻やブイ、流木、あるいは浮き漁礁などの浮遊物につく習性があり、そのような場所で浮遊物ごと掬うと採集することができる。上の幼魚は高知県で浮遊物についていたものを採集した。成魚はよく泳ぎ、秋の終わりから冬にかけて、急激に水温が下がって弱ったところを簡単に網で掬うことができるのだ。今回購入した個体は長崎県近海でおそらく定置網か釣りにより漁獲されたものと思われる。

アミモンガラを含むモンガラカワハギの仲間を食するのに注意すべきことは、まず内蔵は食べないほうがよい、ということ。熱帯性のモンガラカワハギ類はいったい何を食べているかわからないのだ。雑食性で魚や甲殻類、貝類、棘皮動物など何でも食う。カワハギ科のソウシハギは内臓に毒をもつことがあるが、これはスナギンチャクの仲間を食することにより、スナギンチャクの毒が蓄積されたことによるものと言われている。今回は内臓をすべて取り除き、その後もよく洗い流した。さばくのも包丁だけでなく、キッチン用のハサミがあると、いろいろと役に立つだろう。

今回は三枚におろし、その後包丁を使って皮をはいだ。今回は刺身でも食することができるような鮮度ではあったが、鍋で食してみることにした。つまみ食いしたら弾力があってかなり美味しいものであった。ただ肝醤油・・・とは考えてはいけないのだ。なお今回は長崎県の印束商店 たくじーさんこと石田拓治さんからいただいたもの。どうもありがとうございました^^

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タウエガジ

2016年11月14日 10時24分02秒 | 魚紹介

今日もカジカ亜目の魚にしようかと思ったけれど、今回は別の種をご紹介。スズキ目・ゲンゲ亜目・タウエガジ科のタウエガジ。ただゲンゲ亜目もカジカ亜目と近い関係にあるといわれている。

タウエガジ科はあまり聞きなれない名前かもしれないが、穴釣りで釣れるダイナンギンポや、頭部に大きな皮弁があり、水族館の人気者であるフサギンポもこの科の魚。世界で約71種が知られている。

ナガヅカ 京都のシーフーズ大谷さんにて購入。2010年4月

日本に生息するタウエガジ属は5種。最近巷ではナガヅカが多く出回っているようであるが、タウエガジは画像検索してもなかなか出てこない。冷たい海にいる魚は熱帯の魚ほど興味の対象になりにくいということもあるのかもしれない。

生息域は広く、浅海から水深500mほどの場所にまで見られ、底曳網、刺し網、釣りなどの漁法で漁獲される。分布域はやや狭く北海道の全沿岸から青森県、日本海では佐渡近辺にまでの分布となっている。近縁種のナガヅカはもっと分布域が広く、北海道の全沿岸から太平洋岸は千葉県、日本海岸では島根県にまで分布している。

タウエガジの頭部 口がやや小さい

ナガヅカの頭部 口がやや大きい。というか顔がタウエガジよりも小さく見える

タウエガジとナガヅカはよく似ているのだが、タウエガジはナガヅカよりも口が小さいことで見分けられる。また体もナガヅカのほうがかなり大きくなるようだ。ナガヅカの顔は本当に恐ろしげである。

 

タウエガジの背鰭

キタタウエガジとニセタウエガジもタウエガジに似ているが背鰭の模様が違う。この中で見たことがあるのはタウエガジだけであるが、本種は背鰭に斜め帯が入るのに対し、ほかの2種は背鰭に鞍状斑があるのだ。もう1種、ツチガジは背鰭縁辺部に小さな斑点が入る。

タウエガジを食する際、注意しなければならないことがある。タウエガジは卵に毒があるというのだ。そのため卵は調理前にあらかじめ除去しておく必要がある。卵は食べると下痢や嘔吐などをするおそれがあるのだ。肉は無毒で食用になるが、練製品原料になることが多い。以前同属でやはり卵に毒があるナガヅカを食した時は唐揚げで食べたが、今回も同様の方法で食した。かなり美味で家族からの評判も良かった。

明日はカジカ・・・にしようかと思ったけれど、また別に面白い魚が来ましたので、カジカはまた別の機会に。

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コブシカジカ

2016年11月12日 14時09分53秒 | 魚紹介

今回登場のコブシカジカは以前このぶろぐでもご紹介したヤマトコブシカジカの近縁種である。どちらの種もスズキ目・カジカ亜目・ウラナイカジカ科の種で、コブシカジカ属に属する。この属の魚は北太平洋から4種が知られているが、日本に生息するのは2種のみ。ただしヤマトコブシカジカはコブシカジカと同種である可能性があることや、東海大学出版会から出ている「東北フィールド魚類図鑑」ではこの仲間の不明種が掲載されるなど、この属の魚種は今後増えたり減ったりしていくのだと思われる。

ヤマトコブシカジカ

コブシカジカとヤマトコブシカジカの区別の方法は、頭部の背面が多数の粟粒状の鱗に覆われるか否かで見分けるのがわかりやすいようだ。コブシカジカは頭部の背面に多数の粟粒状の鱗を有するが、ヤマトコブシカジカにはそれがほとんどない。ただし、ヤマトコブシカジカについてはこれらの位置や数について変異がある。先ほど述べたようにこの2種は同種の可能性もあるらしく、確実に見分けられるとはいえず、悩ましい。もっとも、分子分類自体が確実といえるかどうかわからないが。

コブシカジカの粟粒状鱗

基本的に深海性。水深数100m、時に水深1000mを超える深さの海底に生息しているが、たまにそれよりも浅い場所で漁獲されたりする。この個体はおそらくキチジなどを獲る刺網にかかったもの、とお伝えしたが、実際には釣りで漁獲されたもののようだ。以前に同じウラナイカジカ科のニュウドウカジカを送っていただいた友人に送ってもらったものである。この場を借りて感謝申し上げたい。

ウラナイカジカの仲間はあまり食されないのかもしれないが、実際には美味しい魚ばかりである、先ほど述べた本では「食用にしない」と書いてあるものが多かったが(東北地方では食用にされない、というわけではない。イシガキフグなどは無毒で「沖縄県では食用にする.」とされていた)、コブシカジカは同書に掲載されているウラナイカジカ類では唯一食についての記述がなされている。

寒くなってきたということもあり鍋で食したが、身は淡泊で、皮はかなり美味であった。今回の個体は雌だったので、卵も煮て食したがこれがまた美味しかった。

これで私が入手した「魚類検索図鑑」に掲載されているウラナイカジカの仲間は6種目となった。あとはヤギシリカジカ、コンニャクカジカ、ウラナイカジカ、トサカジカ、クマノカジカの5種。この5種も入手し食べてみたいものである。ウラナイカジカ科の魚は顔つきが独特なものが多く、面白いキャラクターがそろっている。

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クロメヌケ

2016年11月10日 22時02分20秒 | 魚紹介

この魚は以前もご紹介した。スズキ目・メバル科・メバル属のクロメヌケ。最近は魚市場だけでなくスーパーの鮮魚コーナーでもこの魚を見ることができてうれしい。多くの場合標準和名の「クロメヌケ」ではなく、「青そい」なる名前で販売されていると思う。以前2013年にこのぶろぐで紹介したときには鱗なし、内臓なし、体の側面に切り込みが入ってる、という魚の写真を撮影する私としては正直見るに堪えないものであったが、今回ようやくきれいな個体を紹介できるのでとても楽しみなのだ。

種標準和名や地方名・別名にも「クロ」や「青」といった色の名前が入っている割には黄色い模様があって美しいのが特徴的。灰色っぽい地色に黄色っぽい模様が控えめにある様子はこけむした岩を思わせる。背鰭棘条数は通常14で、この仲間としてはやや多め、この個体は第8~11棘条間の鰭膜が破れているところがある。

頭部、眼の後下方に黒色の太い線が入り、メヌケというよりもむしろソイに近い雰囲気。ただ本種はメバル属の中の分類ではソイの仲間やオオサガなどの深海性大型種とは別の亜属に含められている模様。涙骨の棘はあまり目立たない感じでこの点では涙骨に明瞭な3棘があるクロソイと見分けやすいのかもしれない。

分布域は岩手県以北の太平洋岸、富山湾、山形県、そして北海道。北海道では各地沿岸に分布している。海外ではロシアから北米の太平洋岸にかけて広く分布している。今回の個体は北海道の羅臼で漁獲されたもの。採集方法は不明であるが、やや深い場所で行われる刺し網ではないかと思われる。この種は浅場から水深500mを超える深海にまで生息しているのだ。

今回はクロメヌケは昨年にニュウドウカジカなどを送っていただいたお友達の方から頂いたもので煮つけにしておいしくいただいた。ありがとうございました。

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