魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ハシナガアナゴ

2016年03月12日 12時36分49秒 | 魚紹介

前回もハナアナゴのことを書いたような気がしますが、2回連続でアナゴの仲間、ハシナガアナゴです。

ハシナガアナゴは「アナゴ」という名前がついていますが、アナゴ科ではなくハモ科の魚類。ただしアナゴ科と、ハモ科は近縁なよう。もっとも、近年はアナゴ科自体が単系統群ではないといわれておりますが。

やはりハモと同様に歯が鋭い感じ。きっとこの歯で甲殻類や小型の底生魚類、あるいはイカなどを捕食するのだと思われます。また薄い色でよくわかりにくいのですが、大きな胸鰭があります。この特徴で同じハモ科魚類のうち、ワタクズハモと区別できます。ワタクズハモの場合胸鰭は痕跡的、または完全にないようです。

日本産ハモ科魚類は本種とワタクズハモのほかに、水産上有用なハモ属の2種がいます。ハモ属の2種、ハモとスズハモの比較はまだできません。スズハモの状態のよい標本が入手できたならやりたいとは思っています。

ハシナガアナゴの特徴は肛門の位置が体の中央よりも後方にあること。ハモやスズハモでは体の中央よりも前にあることにより区別できます(ただし尾鰭が切れてしまっている個体は除く)。ほかにハモ属よりも吻がかなりとがっているのが異なるところです。さらには前鼻孔の位置も異なっています。ハシナガアナゴは吻の中央付近にありますが、ハモでは吻の前よりにあるようです。

今回の個体は鹿児島県近海の沖合底曳網漁業により漁獲されました。宇和島や高知沖では残念ながらまだ見ていません。ハモ属の2種はインド‐西太平洋域に分布し、国内ではハモは青森県から東シナ海、スズハモは釧路から東シナ海に分布するのに対して、ハシナガアナゴは熊野灘、土佐湾、佐世保、そして鹿児島県に分布しています。分布域が南方に偏っているのかもしれません。

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ハナアナゴ

2016年03月07日 17時29分07秒 | 魚紹介

ハナアナゴはウナギ目・アナゴ科・ゴテンアナゴ属の魚です(ただし、アナゴ科は単系統群ではないといわれていますが)。

ゴテンアナゴ属Ariosomaは昔「ニラミアナゴ属」となっていましたが、現在はゴテンアナゴ属とされているようです。日本には属の標準和名にもなっているゴテンアナゴとハナアナゴを含め3種が知られていましたが、オオシロアナゴが種に昇格し4種となっているようです。この属の魚は青森県以南の各地に生息し、ハナアナゴも千葉県~九州南岸にまで分布します。沖縄にはいないようですが台湾や澎湖諸島には生息し、オーストラリア北東部沿岸にまでいます。上の写真の個体は高知県の土佐清水市にある以布利大敷網で漁獲されたもので、2010年8月のことです。もう6年近く前のこと。

フィリピンのハナアナゴ

こちらはフィリピン産の個体。ハナアナゴと思われるのですが、本当にハナアナゴかどうかは不明。頭部は下あごにのみ、茶色の帯があるのが特徴。背鰭と臀鰭に黒い帯があるのですがそれは縁辺のみ。魚類検索では臀鰭が真っ黒いのが特徴とされますが、ハナアナゴも明瞭に黒いのばかりではないため、同定は難しい。さらにこの属のものは書籍などにより学名が異なったりするのでなかなかわかりにくいものです。Facebookによると40以上の魚種がおり、有効種も28種おりますが、分類は混乱の極み。

ゴテンアナゴ属の種類では、ゴテンアナゴは沖合底曳網漁業や釣りなどで漁獲されています。一方でハナアナゴは沖合底曳網では私はまだ見ておりません。この個体のように大敷網で漁獲されるほか、夜の防波堤からの投げ釣りでも採集することができます。ハナアナゴはまだ食べたことはありませんが、近縁のゴテンアナゴは白焼きにして美味。卵の煮つけも美味しいものでした。このゴテンアナゴ属のものでトロールで漁獲されるシロアナゴやオオシロアナゴ(オオシロアナゴはハナアナゴと同種なのかもしれませんが)もまだほとんど見ていません。ほかにも深海性アナゴはいろいろいますが、ぜひ見たい、というものが多いです。

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サガミソコダラ

2016年03月04日 13時15分39秒 | 魚紹介

ソコダラの仲間は意外と種が多く、意外と同定が難しいものも多いです。はっきり言って、ソコダラの仲間の写真だけを見て「これは何何ダラ」といえる人がいるなら、それはよほど大量のソコダラを見た人か、あるいは虚言かのどちらかです。私は嘘をつきたくはないから、結局はあいまいな答えしかできなくなってしまいます。

これはサガミソコダラという種類です。もちろん写真だけで判断するのは困難。この個体も色々触ってみて、サガミソコダラが近いように思いました。サガミソコダラを含むミサキソコダラ属は日本から7種が知られていますが、同定の形質は肛門の位置や発光器の様子、顎歯の形状などです。これらをみないことにはサガミソコダラである、と同定することはできません。サガミソコダラは体が銀ピカで、この体で性的なアピール(深海で繁殖の相手を見つける)するのか、それとも威嚇(もしくは目くらまし)に使うのでしょうか。

鼻先はトウジンのようにとがっていません。下顎のひげはソコダラ科の多くの種類にあるため、これの有無は同定にあまり使えません(カタダラとアナダラなどではひげの有無が同定に使えるよう)。ただしひげの長さを同定に使うことがあります。第2背鰭や臀鰭の鰭条もあまり同定には使わないようです。体が細長く途中で切れていることもあるので、ちゃんと計測するのができないことがあります。この仲間において鰭条数確認は第1背鰭や腹鰭、胸鰭を使用します。特に腹鰭は同定に重要なことがあるので、しっかり見ておきましょう。計数でももちろんよいのですが、写真に撮ったり、あるいは基部ごと体から抜き取ってアルコールにつけて保存しておくのもよいでしょう。

胸鰭は条数のほかに腹鰭との位置関係も重要なものになります。サガミソコダラの同定にはこれが重要です。腹鰭基部は胸鰭基部よりも少し後ろにあるのがサガミソコダラ、少し前にあるのがサイカイヒゲといわれます。しかしこれでは若干わかりにくいです。

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コトヒキ

2016年03月02日 11時24分11秒 | 魚紹介

 

年明けすぐのぶろぐにも書いたと思いますが、今年はまだ紹介できなかった魚についてもぶろぐで書いていこうかと思っています。

写真の魚はコトヒキといい、スズキ目シマイサキ科の魚です。シマイサキ科の魚は日本を含むインドー太平洋域と地中海に生息し、多くは河川の淡水域・汽水域から沿岸に生息しています。コトヒキは河川の汽水域から沿岸に見られ、南日本の太平洋岸ではごくふつうに見られます。この個体は沖縄県八重山諸島で採集された個体をいただいたもの。

コトヒキ属は世界で3種が知られ、日本にはコトヒキとヒメコトヒキが分布しています。もう1種のSmall-scaled teraponという種もインドー西太平洋に生息しているのですが、日本からこの種の記録はありません。

コトヒキは沖縄や奄美諸島などではよく釣れる魚ではありますが、鰓蓋の棘が鋭く触るとけがをするおそれがあり、注意が必要です。

フィリピンで採集されたコトヒキ。コトヒキは河口域に近い磯でもよく見られますので磯で採集されることがあります。体は灰色っぽいのですが、体側に細い縞模様があり、面白い魚です。しかし観賞魚としては向いていません。私はこの種を飼育したことはないのですが、かなり気が強くほかの魚の鰭や鱗などをつついたり食べたりすることがあるようなので、飼育するのは避けたほうがよい種といえます。

これまでの3枚は自分で撮影した画像でありますが、私が採集した個体ではありませんでした。私が採集したコトヒキはこんなのしかありませんでした。これは2009年7月に高知県で採集した稚魚。真っ黒になったり、水槽の中では特徴的な模様があらわれたりします。しかしあまり飼育には向きません。単独で飼育するのであれば別でしょうけれど。しかしコトヒキ、自分で採集した個体の写真がこれしかないのはちょっと問題です。今年の喜界島ではこれを狙いたいものです。

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