今日はやや珍しい魚、エボシダイ科のボウズコンニャクCubiceps squamiceps (Lloyd,1909)です。
名前が面白いこの魚はエボシダイ科の魚で、南日本、インド・西部太平洋に分布します。和名の由来は不明ですが、本種と同じエボシダイ科の魚の1種であるハナビラウオPsenes pellucidus Lütken,1880のことをかつて「コンニャクアジ」と呼んでいたことがあるようで、そこからきているのだと思われます。
水深200m以深の深海から漁獲される深海性の種類ですが、ホウライエソやチョウチンアンコウのようなグロテスクな顔つきではなく、家族曰く「うさぎみたい」な、かわいい顔をしております。生態はよくわかっていないのですが腔腸動物を主に捕食するようで、深海性のクラゲなどについているのかもしれません。
かなり深い場所から漁獲されるので、漁獲量は少なそうです。アカザエビを獲る網の中にたまに混ざる程度、でしょうか??
ということで食味。ハシキンメやフウセンキンメと一緒に塩焼きにして食べました。ハシキンメも脂が強かったですがボウズコンニャクはそれ以上。以前食ったハナビラウオの刺身のような脂でした。同じエボシダイ科ですからね・・・。肉離れもよく、骨も気にしないで食べることができました。本によると、軽く干物にして焼くと美味であるという話もありました。次は一夜干しにしようかな。
でも、次があるかどうかは・・・。
(食味は2013年1月20日追加)
ネズッポ科のベニテグリFoetorepus altivelis (Temminck and Schlegel,1846)です。深海性のネズッポ科魚類で、鮮やかな赤の色彩が特徴的な魚です。
ネズッポ科魚類は雌雄で色彩や模様などが異なる場合が多く、本種も雌雄で若干色彩などが異なっています。このベニテグリの場合は雌は第1背鰭に黒色斑があるのに対し雄の大型個体ではこれがないのが特徴です。写真は雄。
第1背鰭の形状は本種によく似たルソンベニテグリFoetorepus masudai Nakabo,1986では雌雄で形状が異なることがわかっていますが、本種では雌雄ともに糸状にのびています。
このベニテグリは、ほかのネズッポ属魚類と比べると肉にやや厚みがあるため、普通はから揚げやフライなどにされるようですが、今回は東京で言う「メゴチのてんぷら」のように、てんぷらにしてみました。魚に味をつけてることはせず、今回はただ「粉つけてあげるだけ~」
完成です。前のほうは骨がわずかに気になる箇所がありましたが、この魚のてんぷらも美味しいものでした。いつかは近縁種ルソンベニテグリもここで取り上げたいものです。
アオメエソ科の魚ではやや浅い場所でよく見かけるツマグロアオメエソChlorophthalmus nigromarginatus Kamohara, 1953です。
ツマグロアオメエソは大きいので全長20cmをこえてくる魚ですが、今回、インドアカタチやミシマオコゼなどと一緒にきたこの個体は体長では8cmほど、全長でも10cmくらいのかなり小さな個体。
アオメエソの仲間は「深海性」というイメージが強いですが、以前沖合底曳網船に乗船させていただいたときには水深150mほどと、この仲間としてはやや浅めの場所で獲れていたと思います。逆にアオメエソのほうは200m以深でまとまって入っているような様子でした。
美味しい魚とは思うのですが今回は標本用としてキープ。八幡浜では一夜干しで販売されていますが、福島あたりで賞味されるのはマルアオメエソという別種、このほか三河湾近辺でもこの仲間のアオメエソを食べる習慣があります。
こんな感じでてんぷらにして食べると美味しいです。
アカタチ科の魚、インドアカタチAcanthocepola indica (Day, 1888)です。やや珍しい種類なのか、市場などでも目にすることがなかったものです。もちろん私もはじめてお目にかかります。
日本に分布するアカタチ科の魚はアカタチモドキ属、ソコアマダイ属、スミツキアカタチ属、アカタチ属の4属からなりますが、前の2属は体がやや細長いですがいたって普通の魚のようにも見えるのに対し、後の2属は、英名のBandfishが示すように、まるで帯のような形をしています。
インドアカタチはアカタチ属の魚で、体がやや高いこと、背鰭の軟条数が80前後であることなどからアカタチによく似ていますが、アカタチとは体側の模様や、背鰭の斑紋の有無などにより区別できます
アカタチAcanthocepola krusensternii (Temminck and Schlegel, 1845)の場合、体側の黄色斑は円形です。ただし不明瞭になる場合もあります。写真にはうつっていませんが、背鰭には目立つ模様はありません。「東シナ海・黄海の魚類誌」によると、アカタチには2つのタイプあるようですが、これらについては精査が必要とされています。
インドアカタチAcanthocepola indica (Day, 1888)では背鰭に暗色斑があり、体側には薄い橙色の帯が多数入ります。
日本に生息するもう1種のアカタチ科魚類であるイッテンアカタチAcanthocepola limbata (Valenciennes, 1835)です。この種類には背鰭に黒色斑がありますが、その黒色斑はインドアカタチのよりも明瞭であり、背鰭軟条数が100前後と多く、体高がインドアカタチやアカタチに比べるとやや低いという特徴があります。
アカタチやイッテンアカタチは主に小型底曳網で漁獲され、これらの個体は水深70m前後の場所から漁獲されました。その一方で今回のインドアカタチは、やや深い場所をひく沖合底曳網で漁獲されましたが、宇和海では本種の水中写真による記録もあります。
帯のようなユニークな姿ばかりが注目されるアカタチ科の魚は、釣りではアマダイ釣りなどの外道でたまに釣れる程度ですが、この仲間は実は美味なことでも知られています。今回はてんぷらにして食しましたが肉には甘みがあり最高に美味しい。市場には出ることがほとんどない魚ですから、釣り人のみが楽しめる味といえそうです。
奥に見えるのはまた別の機会に。