今回は久々に亜熱帯のサンゴの海らしい魚のご紹介。スズメダイ科、クマノミ亜科のカクレクマノミAmphiprion ocellaris Cuvierです。
スズメダイ科の魚は、日本近海だけで100以上の種が知られる大きな分類群ですが、その中で大きく2~4のグループに分けられることがあります。クマノミ亜科は、鰓蓋の後ろに棘があったり、縦列鱗数が多い、あるいは眼の後ろに大きな棘があるものがいるなどの特徴があります。生態もユニークで、一般にもよく知られるようにイソギンチャクと共生します。しかしイソギンチャクの依存の度合いは種によって違いがあり、クマノミのようにイソギンチャクのあまりない岩礁や藻場をウロウロするものもいます。
●近縁種
カクレクマノミAmphiprion ocellaris Cuvierの体側の白色帯
カクレクマノミに近縁なものとしてオレンジクラウンフィッシュAmphiprion percula (Lacepède)ペルクラ、クラウンアネモネフィッシュなどとも呼ばれる)がいますが、これは体側の白色帯が黒く縁取られることが多いです。また分布域は本種よりも南方で、ニューギニアやオーストラリア北部沿岸などに生息しています。フィリピンにも分布するとありますが、これはカクレクマノミとの混同の可能性がある、あるいは移植放流かもしれません。
模様はカクレクマノミ以上に変異に富んでいます。カクレクマノミの様な模様から、縁取りの黒の模様が広がっているものまで・・・。
クラウンアネモネフィッシュAmphiprion percula (Lacepède)
また、フィリピン・セブ島から記録されたティールズアネモネフィッシュAmphiprion thiellei Burgessと呼ばれる種類については、雑種説が濃厚とされています。この種の模様は極めてユニークなものですが、躰つきをみると、カクレクマノミの類だと思わせます。
●飼育
クマノミの仲間は美しい色彩と、本種の場合は独特な泳ぎ方により、古くから観賞魚として人気があった種類です。しかし近年(といっても10年ほど前)、とある映画の公開に影響されたか、観賞魚目的の乱獲などが行われているという話もあります(ただしその映画の舞台からか、モデルになったのは本種ではなくオレンジクラウンフィッシュではないかという説もあり)。
幸いにもクマノミの仲間は海水魚としては大きめの付着卵を産むため、研究施設、あるいは努力すれば個人宅でも繁殖が可能な種とされます。すでに様々な種類のクマノミが養殖されているほか、ユニークな模様を持つ改良品種もあります。逆に繁殖後に問題となるのが自然界への放逐です。クマノミの仲間では例を聞かないのですが、淡水魚のグッピーや、メダカの仲間、など容易に水槽内でも繁殖可能な種は、増えすぎたものなどを河川や溝に放流、それが増えたなどという話も伝わってきます(もっともクマノミなどの海水魚はそれらの淡水魚に比べると繁殖が難しいから聞かないのか)。
イソギンチャクの仲間の飼育はやや難しいものも多く、特にカクレクマノミが好むハタゴイソギンチャクの飼育については強い光が必要とされ、レベルが高いとされます。ほか、飼育下ではセンジュイソギンチャク、シライトイソギンチャク、サンゴイソギンチャクにも入るそうです。もちろんイソギンチャクがなくても飼育可能です。
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