今日から3月。久しぶりに写真を撮影したヒイラギ科・ウケグチヒイラギ属・ホソウケグチヒイラギ。ウケグチヒイラギ属は日本には3種が知られているが、九州以北で入手できるのはこのホソウケグチヒイラギと、最近日本から報告されたばかりのカドガワウケグチヒイラギの2種くらいなものなので珍しい。ウケグチヒイラギ属の属学名については従来のSecutorからDeveximentumに変更になっている。
2013年の「日本産魚類検索第三版」における国内での分布域は鹿児島県内之浦湾としか書いていないが、現在はそれよりも北の宮崎県門川などでもよく漁獲されており、しかも現在では宮崎県内の定置網では毎日のように漁獲されているという。私のもとにもホソウケグチヒイラギが何回かやってきてくれた。そのおかげでこの種の耳石に関する知見の蓄積にも成功した・・・のだが、先端がどうも割れやすい。
日本産のヒイラギ科魚種は多くの種で口を前方または下方へ伸ばすことができる。しかし本種は「ウケグチヒイラギ」の名の通り、口が上向きで伸びる方向も上に向く。斜め下に向きながら泥の中の餌を捕食しているのかもしれない。しかしそうなったらほかの魚にお腹を見せることになるため危険だと思うのだが。もしくは食べるものが異なるというのもあり得るだろう。ヒイラギは底生動物を食うほかにサビキ釣りの主要なゲストの一種であるなど、底生動物を食っているだけではないよう。本属の中ではプランクトン食が強いのかもしれない。
成魚は薄い褐色の字に細い横帯がある。一見地味であるが、よく見ると大変美しいのに驚く。ただこの色を見るとお菓子の餡のような色にも見える。
こちらはやや小型の個体。この個体は長崎県産で、九州西部の産である。愛知県名古屋市のスーパーにて「メッキアジ」のパックの中に入っていたのを購入。なおパックの中に入っていたのはアジ科は一切おらず、すべてヒイラギ。ホソウケグチヒイラギは、鹿児島県の東側、日向灘沿岸では定置網に毎日入るというが、西側の東シナ海では少ないという。よく見ると低い体高や口の伸びるサイズなど、東側のものとはどこか違うようにも思われる。体長と体高の割合も大きく変わっている。残念ながらホソウケグチヒイラギは今のところ食したことはないが、唐揚げで食べたらおいしいかもしれない。
今回の個体はHN「あらら」さん経由でおそらくWadaさんにいただいたもの。ありがとうございます!