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松山善三監督“名もなく貧しく美しく”感想

2015年09月27日 | 諏訪商店街振興組合のこと

9月25日松山善三監督の“名もなく貧しく美しく”を鑑賞いたしました。早速Tさんから感想を頂きました。ありがとうございました。

素晴らしい作品だった。

主演は高峰秀子。脚本・監督は夫の松山善三。

映画は空襲シーンからの始まりで、爆弾落下で焼け落ちる建物が逃げ惑う人々の上に崩れかかる場面とか、すし詰めの列車の中にうずくまる疲労困憊の人々の様子が丁寧に撮られていた。

脇役も数多く出演していたが、中でも印象に残ったのが

① 障害者の妹、秋子(高峰秀子)の存在で、自分は母の愛を受けられず“金”にしか生きていく道を得られなかった勝ち気で淋しい心を持つ姉を演じた草笛光子。

② 女手一つで三人の子供(それぞれが個性的?)を陰になり日向になって育ててきた明るく逞しい明治の女を演じた原 泉。

さてこの作品の圧巻は・・・

① 母親が宝石売って買ったミシン。その大切なミシンを遊び人の弟に取られた秋子がトラックにしがみ付いて追い縋るシーン。蹴られた手から血を流し乍らも、必死に走り続ける秋子。本当によく走った。(この辺りから場内のあちこちで啜り泣く声が・・・)

② 家出した秋子を追い駆けて、電車に飛び乗った夫が、連結車両の窓越しに必死に説得し続けるシーン、秋子の心が次第に解きほぐれて行く様子が、林 光作曲の効果的なBGMと相まって、観客の心を打たずにはおれない。

高峰秀子は大正15年生まれ。養母のマネージメントの元、15歳から始まった女優稼業。一人でずーっと家族のみならず、親類縁者の生活の面倒を見続け来、31歳の時に2才年下の松山と結婚したのを機に、念願の一主婦の平凡な暮らしに入ろうとしたが、諸事情がそれを許さず、53歳になってやっと引退することが出来た。

読書家(勉強家)で「私の渡世日記」を始め、数多くのエッセーを出版。86歳で亡くなったが、物事の本質を見抜く信念の人でもあったらしい。

子供に恵まれなかった夫婦にとって、ある意味、この作品は“愛児”ではなかったかと思われる。



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