昭和十二年三月十日夜,東京駅の東海道下りホームは,おびただしい数の群衆でうずまっていた。大群衆のお目当ては十六歳の新進女優だった。その少女の名前は原節子。
この日,原はスターへの道を約束してくれた主演映画『新しき土』のドイツ・プレミアに出席すべく,東京駅を出発することになっていたのである。目的地はドイツの首都ベルリン。 汽船,満鉄,シベリア鉄道を乗り継いでユーラシア大陸を横断するには二週間あまりを要する。旅行者にとっては難儀な行程であるが,それをみずから経験することのかなわぬ群集にとっては,想像力を刺激する大旅行であった。見送りの歓声は夢の世界に繋がっていた。
映画「美しき土」は、日本の山々の美しい景色が映されている。
一方で、東京市街を阪神電車が走っていたり、夜景のシーンは東京と大阪の夜景が混ざっていたり、
日出子(ドイツ帰りの男の妹)の勤め先が大阪の大阪紡績(現・東洋紡)だったり、
光子の家の裏が厳島神社であるなど、
地理感覚に乏しいシーンも多い。
なお、現在は廃線となった愛宕山鉄道が映っており貴重な記録となっている。(ウィキぺディアより)
「新しき土」は、ドイツ人から見た昭和12年の風景が映し出されていて貴重であります。