花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

おかしな男 渥美清

2006年01月27日 | わたくしごと、つまり個人的なこと
「おかしな男 渥美清」小林信彦著(新潮社)図書館の本です。1970年の正月映画、第3作「男はつらいよフーテンの寅」は湯の山温泉でロケが行われた。
の山温泉の旅館で寅次郎が働いているのを、旅行に来ていた、おいちゃん夫婦に見つかってしまう。寅は旅館のおかみ、新珠三千代にひそかに恋心を抱いていて、そこで働いている。僧兵祭りのシーンもあり温泉街の様子がよく出ていた。
か近くの諏訪神社前でもロケが行われた。このロケシーンはカットされたが「寅さ~ん!」と声をかけても、渥美清は見向きもしなかった。なんて愛想のない奴だ、という声を聞いた記憶がある。
美清は本名田所靖男との住み分けをはっきりさせていた。演じている車寅次郎に、田所靖男を見せることはなかった。小林信彦は渥美清と交流があり、その辺を詳しくこの本で書いている。
き人の篠原靖治の文章が出ていた。37作「幸福の青い鳥」で萩市のロケのときだ。本番前のテスト中に暴走族風の若者が近くで騒いでいる。注意しても聞かない。そこに渥美清が出てきた。少し離れたところから「ちょっと来い」といった手招きをして、
「お兄ちゃん、なっ、すぐ終わるからさ。ちょっと待っててくれないかい」
一瞬驚いた様子を見せたが、騒ぎをやめようとはしない。すると、おもむろに近寄り、彼らを見据えると、さっきよりも低い声で
「なぁ、お兄ちゃん、話せばわかるんだから、なっ、すぐ終わるしさ」
原は、その瞬間若者たちがビクッとしたのがわかったと書いている。その隙を見逃さず、
「あっ、そうかい、向こうへ行くのかい。じゃ、そこを通してあげておくれ」
こうして外へ追い出した。
1988年長野県 小諸市「寅次郎サラダ記念日」でのロケのときだ。ロケ現場に通行の邪魔だと、ツッパリ風の高校生が文句を言いに来た。ロケ班も本番前で緊張している。そのとき、渥美清は手招きした。高校生たちは吸い寄せられる。
「オレにもお前たちと同じ血が流れている。気持ちは分からないじゃない。その薄いカバンじゃ、教科書は入っていないだろう。今はいいけど、高校卒業したら、ちょっとはまじめになれよ」
緊張した様子でお辞儀をすると、高校生たちは逃げるように立ち去った。
まりにもサマになっている。田所靖男の若い頃の苦労時代に積み上げてきた稼業体験が垣間みえるようで興味深い。映画で見せる莫迦の寅さんが凄んだことに高校生たちは驚いたのだろう。
の凄さはちょっと真似が出来ない。寅さんが逝って10年近く経つ。
コメント (2)
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