新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

昼の酒

2008年07月09日 07時48分57秒 | 写真俳句・エッセー

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紫陽花に言い訳してる昼の酒

 月曜日の午前中、仕事場へ旧友のK君から電話があった。k君とは小学校、中学校以来の付き合いである。私たちの郷里で、今も会社を経営している。

「今、渋谷にいるんだが、会えないか?」

 否や応の話ではない。K君の上京などは珍しいこと、万難を排して会わなければならない。

 K君は大の日本酒党。焼酎の蕎麦湯割りというわけにはいかない。昵懇の料亭に無理を頼んで、席を設けてもらうことにした。

 そんな段取りの結果、3時半過ぎから呑み始めた。中庭にはまだ額紫陽花が咲いていて、折からの小雨に濡れていた。

「Tが死んじゃったんだよ」 言い出しかねていた気配の後、K君が言った。

「えっ?!」

「オレも後から聞いたんだが、急性心不全だったようだ。朝、起きてこないので見に行ったら、布団の中で……」 K君は言葉を切った。

「ふーん」 私にとっても、大きなショック。

 私には、小学校、中学校を通しての旧友が4人。KとTとH,それに私。

 H君は数年前に肝臓ガンで亡くなっていた。

 また一人、T君を失うこととなった。

 T君は50年ほど前から、少し離れた都市に移り住み、普段からの付き合いは途絶えていた。訃報がなかったのはやむをえなかったかも知れない。

 二人とも、しばらくは言葉がなかった。

 やがて、K君がポツリ。

「早過ぎるよなァ。Hは68歳、Tは73歳だぜ」

「うん……」

 女将が元気よく入ってきた。外出していたらしく、はじめて顔を見せた。紫陽花みたいな顔だ。

「珍しくしんみりねえ。浮気がバレたの?」

「同級生が死んじゃってね」

「アラッ、そりゃあゴメンなさいね」 女将は出ていってしまった。

 雨はあがったようだ。

 濡れた顔の紫陽花が、微かに揺れている。

   紫陽花に言い訳してる昼の酒   鵯 一平

 K君は後継者が悩みの種。暫くは仕事を続けるとのことだ。

 遅ればせながら、弔問を考えなければならない。 

 (写真の紫陽花は、別の日に撮影したもの)

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コメント (20)
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