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社会教育関連書籍の書評集、紹介数は少ないが内容は濃密

2023-10-19 20:09:14 | 読書ノート
野島正也『社会教育の魅力を伝える読書案内:好著を読み解く』樹村房, 2023.

  書評集。2007年から発行されている『生涯学習・社会教育研究ジャーナル』に掲載された14編の書評を、一冊にまとめたものである。著者は社会教育の専門家であり特に公民館を主な対象としてきた。文教大学で2013年から2017年まで学長を務め、2016年から同大学の学園の理事長をしている人である。僕が文教大学に在籍した五年間(2012年4月~2018年3月)と重なる。ただし、遠くから見かけたことはあるが、お話ししたことはない。

  取り上げられるのは、2005年から2020年までに発行された生涯教育・社会教育領域の書籍である。書評集なのに紹介されるのが14点だけというのは少なく感じるが、これは各一冊の中身をじっくり紹介しているためである。各章の構成は次のとおり。大部分は各書籍の詳しい要約で、ところどころで著者(すなわち評者)によるコメントが添えられる。そして章の最後にコンセプトや構成などの面からの全体的な評価を加えられる。面白いのが、全体を読み進めてゆくうちに著者の経歴が分かってくるところ。1960年代、工業高校に通ったのちに自動車工場で働いていた(大学に行ったのはその後らしい)とのことで、学長時代しか知らない人間なので驚かされた。

  脱線してしまった。社会教育領域の書籍はたくさん発行されているものの、地味な領域なので言及されることも少なく、どれを読めばいいのかわからないことが多い。本書では、公民館だけでなく、博物館、図書館、独学、ラジオ講座、通信教育、大学の出張講座、座談などを調べた優れた書籍が紹介されており、ブックガイドとして使える。紹介された書籍のうち、佐藤卓己・井上義和『ラーニング・アロン』と金山喜昭『博物館と地方再生』に対して個人的に興味を持った。
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