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米国オルタナ右翼はカウンターカルチャーの末裔である、と

2025-02-12 11:18:45 | 読書ノート
アンジェラ・ネイグル『普通の奴らは皆殺し : インターネット文化戦争 : オルタナ右翼、トランプ主義者、リベラル思想の研究』 大橋完太郎訳, 清義明監修・注釈, Type Slowly, 2025.

  米国のオルタナ右翼(Alt-Right)の起源と思想を検討する内容。固有名詞(特に人物名)が大量に出てくるが、頁下部に詳細な注釈が付いており理解を助けてくれる。原書はKill All Normies: Online Culture Wars from 4chan and Tumblr to Trump and the Alt-Right (Zero Books, 2017.)である。2016年の米国大統領選挙におけるトランプ勝利に至るまでの、ネット言説の動向を詳しく伝えている。著者はテキサス出身の白人女性でフェミニストである。Type Slowlyは2024年設立の出版社であるとのこと。

  著者の見立てによれば、オルタナ右翼はキリスト教を信奉する伝統的な保守主義者とはまったく違っている。オルタナ右翼は1960年代の対抗文化の系譜にあり、価値相対主義的で、境界を設定するような振る舞いにたいして「侵犯」──破壊、あざけり、ニヒリズム──で答えることを信条とする。2000年代までのインターネット言説では、支配的な文化(大企業的あるいはエリート的な文化)からのリベラルな解放が夢想されていた。しかし、抑圧やタブーの存在を嫌うネット文化は、4chan(米国における2ちゃんねる)を舞台として、他者への配慮を(敢えて)欠如させた直截的な物言いを人目に付くものとした。オルタナ右翼は、オタク文化と親和的で、自由恋愛市場から疎外された男性たちをひきつけているとする。彼らは揃って反フェミニストである。同時期、リベラル側は、アイデンティ政治に傾倒することで特定表現の禁止や発言者のキャンセルといった活動に走った。これが抑圧的に見え、自由を志向するオルタナ右翼と激突することになった。リベラル側はこの間、仏頂面で問答無用の抑圧的な態度に終始し、楽しげに議論する態度を示したオルタナ右翼と比べて魅力を失っていったという。

  以上。あくまでもオルタナ右翼の研究であり、普通の保守主義者であると思われるトランプ支持層の大半は捉えていない。だが、ネットで影響力を発揮したトランプ支持派の先兵部隊として、彼らがどのような経緯で影響力を持つようになったのかがよく分かる内容となっている。4chanに記された、さまざまな女性ライターに対する下品な書込みに対してはうんざりさせられる。ひとつひとつ書込みの内容が酷いというだけでなく、いちいちこれを採りあげて読者に読ませる必要があるのかという著者に対する疑問が起こるのだが、ネット言説の下劣さを示すには必要だったということなのだろう。2ちゃんねるもこんな感じだったんだっけ。

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