赤川学『これが答えだ! 少子化問題』ちくま新書, 筑摩書房, 2017.
少子化論。『子どもが減って何が悪いか!』の続編。結論は前著と同じで、女性が働きやすい社会を作っても子どもの数は増えないということを述べている。
最初の章では「女性労働力率あるいは所得の高さと子ども数」についての各種統計の再解釈である。著者によれば、現在これら要素と合計特殊出生率や実際の子ども数の間に正の相関をみるような調査が主流だが、そうした調査にはそもそもサンプルに偏りがあったり、想定される因果関係モデルに難があるとする。虚心にデータを見れば、女性が働けば働くほど子どもの数は減り、また超金持ち層と貧しい層では子ども数が多くなる。中間層では子どもが減る。
中盤以降はなぜかという話である。まず原因とされるのが女性のハイパーガミー志向である。女性は、社会的地位が相対的に低い男性とは結婚したがらない。この傾向は生得的なものである。そうすると、女性就労を支援して女性の地位が上昇するほど結婚数は減る。特に、地位の高い女性と所得の低い男性は結婚からあぶれやすい。女性の地位向上と少子化対策は矛盾するのだ、と。(少子化対策と格差縮小政策の二つは女性の就労を阻害する、とも)。
さらには戦前の社会学者・高田保馬を引き合いに長期的な人口動態が語られる。金持ちまたは貧乏人以外の、社会においてその地位が安泰でない中間層は、現状の地位を維持する・または向上させるための投資を行わなければならず、その分どうしても子ども数は減るのである、と。現在行っている政策は短期的にわずかながら出生率を上昇させるかもしれない。だが、夫婦の生活期待水準を引き上げてしまうのでその効果はすぐに薄れるだろうというのが著者の見立てである。子ども数は政策感応的ではないのだから、そうした対策に政府が出資しても無駄金だよ、というのが最終的な結論となっている。
というわけで少子化傾向に歯止めをかけることは絶望的であるという。確かに、今さら女性の就労を妨げるようなことはできない。しかしながら、格差を拡大させて、貧乏子だくさん家庭と金持ち子だくさん家庭をつくるという方向は絶対にタブーなのだろうか。中間層破壊的だが社会的にマイルドであるという政策はありえないかな?
少子化論。『子どもが減って何が悪いか!』の続編。結論は前著と同じで、女性が働きやすい社会を作っても子どもの数は増えないということを述べている。
最初の章では「女性労働力率あるいは所得の高さと子ども数」についての各種統計の再解釈である。著者によれば、現在これら要素と合計特殊出生率や実際の子ども数の間に正の相関をみるような調査が主流だが、そうした調査にはそもそもサンプルに偏りがあったり、想定される因果関係モデルに難があるとする。虚心にデータを見れば、女性が働けば働くほど子どもの数は減り、また超金持ち層と貧しい層では子ども数が多くなる。中間層では子どもが減る。
中盤以降はなぜかという話である。まず原因とされるのが女性のハイパーガミー志向である。女性は、社会的地位が相対的に低い男性とは結婚したがらない。この傾向は生得的なものである。そうすると、女性就労を支援して女性の地位が上昇するほど結婚数は減る。特に、地位の高い女性と所得の低い男性は結婚からあぶれやすい。女性の地位向上と少子化対策は矛盾するのだ、と。(少子化対策と格差縮小政策の二つは女性の就労を阻害する、とも)。
さらには戦前の社会学者・高田保馬を引き合いに長期的な人口動態が語られる。金持ちまたは貧乏人以外の、社会においてその地位が安泰でない中間層は、現状の地位を維持する・または向上させるための投資を行わなければならず、その分どうしても子ども数は減るのである、と。現在行っている政策は短期的にわずかながら出生率を上昇させるかもしれない。だが、夫婦の生活期待水準を引き上げてしまうのでその効果はすぐに薄れるだろうというのが著者の見立てである。子ども数は政策感応的ではないのだから、そうした対策に政府が出資しても無駄金だよ、というのが最終的な結論となっている。
というわけで少子化傾向に歯止めをかけることは絶望的であるという。確かに、今さら女性の就労を妨げるようなことはできない。しかしながら、格差を拡大させて、貧乏子だくさん家庭と金持ち子だくさん家庭をつくるという方向は絶対にタブーなのだろうか。中間層破壊的だが社会的にマイルドであるという政策はありえないかな?