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近い将来のことならば予測の精度を高めることはできる、と

2019-05-24 09:48:32 | 読書ノート
フィリップ・E.テトロック, ダン・ ガードナー『超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条』土方奈美訳, 早川書房, 2016.

  未来を予測する能力を測定することを試み、平均より成績のよい人たちの特徴を分析するという一般向け書籍。著者のテトロックはカナダ出身米国在住の心理学を専門とする大学教授、もう一人のガードナーはジャーナリストである。原書はSuperforecasting: the art and science of prediction (Crown, 1995.)。2018年に早川書房から文庫版が発行されてる。

  話のネタは、米国のインテリジェンス機関の支援を受けた"The Good Judgment Project"なるテトリックによる予測コンテストから。コンテストでは、北米全土から参加者を募り、「北朝鮮は半年以内にミサイル発射実験を行うか」といったさまざまな事象に、起こりうる確率で答えてもらうというもの。その結果わかったのは、予測の精度は個人においてランダムとなっている、というわけではなくて、参加者の平均値よりもコンスタントに高い確率で正確に予測する人々を発見する。彼らは「超予測者」と名付けられる。「みんなの意見」よりもよりよい予測ができるのだ。

  では超予測者はどういう存在なのか。知的に謙虚で、問いをより細かい質問に分解して考え、情報を求めて調査をするも新しい情報に大きく左右されない、などの特徴を持つ人々だ。ずば抜けて頭がいいわけでも、数学がものすごいできるわけでも、超ニュースオタクでもないとのこと。ただ、それぞれ普通の人よりはできる方だとは言えそうだ。読んだ印象では、慎重な性格で・偏屈さの少ない・頭のいい人たち、という感じである。本書はさらに、そうした性格タイプへの批判(「重大な決断ができないのではないか」など)も折り込んで議論を展開している。

  個人的には、テレビに出てくるコメンテイターたちは、周囲から「予想を外した」などと言わせない言葉遣いをおこなっているという指摘は興味深かった。すなわち「大したことは何も言っていない」のだが、だからこそテレビにとって安全というわけなのだろう。読みやすく、中身も面白い書籍である。
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